主張
旧社保庁解雇
不当な免職処分直ちに撤回を
社会保険庁の解体・民営化で525人の職員が解雇(分限免職)された問題で、人事院による処分取り消し判定が相次いでいます。免職処分を不服として審査請求していた71人のうちこれまで70人に判定があり、3割を超える24人の処分が取り消されました。人事院がこれほど高い割合で処分取り消しの判定を出したことは、免職処分がいかにでたらめで不当なものだったかを示しています。政府・厚生労働省は、この事実を重く受け止め、分限免職処分を直ちに撤回し、身分を回復する措置をとるべきです。
国家による不当解雇
公務員の分限免職というのは、民間企業でいう解雇のことです。当然ながら、公務であれ民間であれ、解雇は客観的で合理的な理由がないかぎり許されません。公務員の分限免職は、1964年に二つの組織が廃止されて6人が免職された事例が最後で、その後の省庁再編や民営化のときでも雇用は引き継がれてきました。
社保庁の大量の分限免職処分は、まさに政府による前代未聞の暴挙にほかならないものでした。問題の発端は、2004年の政治家の年金未納問題をきっかけに国民の年金不信が政治を揺るがす大問題に発展したことです。政府は国民の批判のほこ先を組織問題にすりかえ、社保庁を解体・民営化し、2010年に日本年金機構を発足させました。このとき組織は変わっても雇用は引き継ぐという当然のルールを無視して、選別採用を強行しました。
年金の管理・運営に対する国の責任を労働者に押し付けることで、国民の批判から逃れようというのがねらいでした。「改革に後ろ向きなものは採用しない」という公平・公正さを欠いた評価、「懲戒処分を受けたものは採用しない」という二重処分など違法、無法なやり方で選別し、500人を超える労働者の人生を狂わせました。国家的不当解雇としかいいようがない暴挙です。
人事院の判定は、国家公務員法(78条4)にもとづく分限免職について、回避の努力が不十分なまま行われた処分は「裁量権を乱用したものとなる」と明確に解釈した点が重要です。そのうえで厚労省の取り組みについて、新規採用を相当数行っていること、他省庁への受け入れ要請が弱かったことなどをあげて不十分だったと認定しました。
しかし一方で、政府が全省庁をあげて分限免職を回避する責任を果たさなかった最大の問題点について「回避の取り組みの方法には裁量があり」と逃げています。これはまったく通用しない論理です。取り組み方法に裁量はあるとしても、解雇を回避する責任を逃れる裁量などありません。
引き続くたたかいを
人事院は、このような詭弁(きべん)で政府の責任を免罪しても、免職処分回避努力が不十分だった評価は曲げられず、処分取り消し判定を出しました。これは国公労連や闘争団、支援者などの粘り強いたたかいで勝ち取った大きな成果です。
政府は、取り消し判定が出たことについて「重く受け止める」(田村憲久厚労相)といいつつも、免職処分を撤回する姿勢を見せていません。これまで切り開いてきた成果を力に、引き続くたたかいが重要になっています。
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