「除外」増やし見せかけ減
保育所の待機児童数は依然として2万人を大きく超える深刻な実態が続いています。しかし、この数字でさえ、自治体によって「待機児童」の数え方が異なっており、小さくみせているとの指摘があがっています。いったいどうなっているのか―。
厚労省は4月1日現在の待機児童数の発表(12日)のなかで、待機児童数が前年同月比で100人以上増減のあった自治体名を公表しました。
今回初めて「100人以上減」となった札幌、大阪両市。札幌市は今年度から「自宅求職中」の215人を除外、大阪市も「育休中」と「自宅で求職中」の計774人を除外して待機児童数として報告しました。
「100人以上減」の自治体には、5月に「待機児童ゼロ」を宣言した横浜市や、川崎市も含まれます。両市は一昨年来、「100人以上減」に名を連ねていますが、すでに「育休中」「自宅で求職中」などは除外しています。
運動に押され
一方、今年度100人以上増えた自治体のトップとなった東京都杉並区。認可保育所への入所を求める保護者の運動に押されて、これまで除外してきた「育休延長」「求職活動中のひとり親」など191人を新たに待機児童に含めました。
4月時点で待機児童数が884人でワースト1の東京都世田谷区は、「育休延長」「自宅での求職」も待機児童にカウント。厚労省の発表にあたって同区長は、国に対して「保育ニーズを正確に把握できる調査手法への転換を」と要望しています。
自治体によって対応の違いが出てくる背景は、国の姿勢があります。
国の待機児童の定義では、求職中については「一般的に待機児童に該当する」としつつも「求職活動も様々(さまざま)な形態が考えられるので、求職活動の状況把握につとめ適切に対応すること」と自治体の解釈の幅を認めています。調査日時点で産休・育休中である場合や、第1希望の保育所のみを希望する場合も除外することを容認しています。
公表さえせず
もともと国は、2001年度から、国が補助を行う保育ママや東京都の認証保育所など認可外保育所に入所する児童は除外する「新定義」を作成。07年度からは「旧定義」にもとづく待機児童数の公表さえしなくなっています。
田村憲久厚労相は、一部の自治体での数のごまかしについて記者団から問われ、「最低限の基準はつくらないといけない」(13日)と定義の明確化が必要だとの認識を示しました。しかし、明確な定義は「新しい制度のなかでつくっていただきたい」とも述べ、公的責任を投げ捨てる「新システム」を議論する子ども・子育て会議に丸投げする姿勢です。
国が正確なニーズ把握を避けてきたのは、認可保育所建設より「詰め込み」や安上がりな認可外施設ですませようとしてきたからです。国が率先して正確な数を把握し、認可保育所を増設することこそ急がれます。