主張
安倍首相前線視察
海外派兵拡大の狙いが見える
中東ペルシャ湾沿岸のバーレーン、クウェート、カタールの3国とアフリカ北東部のジブチを歴訪した安倍晋三首相が、「海賊対処」を理由にジブチに駐留している自衛隊基地を訪問しました。海外に派兵された自衛隊の基地を日本の首相が視察するのは初めてです。
政府は2009年以来、ソマリア沖で多発する海賊に対処するとして、対潜哨戒機P3C2機と護衛艦2隻など陸海空3自衛隊の部隊を派遣しています。安倍首相が自衛隊基地を初めて視察したのは、自衛隊の海外派兵を恒久化・拡大し、日本の軍事的役割を誇示するのが狙いです。
海外唯一の自衛隊基地
ジブチの自衛隊基地は、自衛隊が海外に置いている唯一の基地です。安倍首相は基地を視察し、自衛隊員に「わが国が果たすべき重要な役割を担っていただきたい」と強調したと伝えられます。
ソマリア沖での自衛隊の活動は、海賊行為に対処する「海上警備活動」として始まり、その後新しい「海賊対処」法を作って続けられてきました。ジブチの基地は活動の根拠地として11年につくられたものです。爆雷を投下できる対潜哨戒機P3C2機の駐機場や格納庫、280人が使える宿舎などを備えた本格的な基地です。
口実が「海賊対処」であれ何であれ、武力を行使する実力部隊である自衛隊の海外派兵は許されません。武装した「海賊」と撃ち合いになり、殺し殺される事態も予想される危険な活動です。
最近では海賊活動も減少傾向にあるといわれていますが、政府は派遣をやめようとしていません。安倍首相が歴代首相として初めてジブチの自衛隊基地を視察し、隊員に訓示したのは、憲法を踏みにじる海外派兵をあくまで続けようという意思の証明です。
これまでは自衛隊は、日本などの船を「エスコート」して海賊から守っていました。ところが今年12月以降、自衛隊は、ペルシャ湾で「海賊対処」にあたるアメリカなどの多国籍部隊(CTF151)に護衛艦のうち1隻を派遣し、共同で海域を警戒する「ゾーンディフェンス」に変わります。安倍首相はバーレーン訪問のさい米第5艦隊司令官に会い、多国籍部隊にP3Cも回すよう要請され、それにも「前向きに検討したい」と約束しました。活動の拡大です。
自衛隊が単独で「海賊対処」活動を行うのではなく多国籍部隊に参加して活動するようになれば、他国の指揮を受けながら、日本の自衛隊が武力を行使する危険性が生まれます。アメリカなど他国の軍隊といっしょに武力を行使することになれば、それこそ憲法違反がより明白になります。
軍事力でなく外交力を
安倍首相が今回の中東歴訪で、「シーレーン」防衛など各国との安保協力の強化を合意したことも見過ごせません。軍事的役割の拡大に前のめりな安倍政権のもとで、「海賊対処」を口実にした日本の海外派兵が恒久化・拡大されることは危険です。
アフリカ周辺の海賊行為をなくすには、ソマリアなどの政治と経済を安定させるしかありません。軍事的役割の拡大でなく、住民が安心して生活できるように、ソマリアの復興開発を支援し、外交を通じて国際社会を主導していくことこそ日本の役割です。
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