都労委認定 労組「ただちに職場に戻せ」

 日本IBMが労働者に突然解雇を通告して職場から閉め出す「ロックアウト解雇」を強行している問題で、東京都労働委員会(都労委)は28日、会社がJMIU(全日本金属情報機器労働組合)との団体交渉を拒否したことは不当労働行為にあたる、と認定しました。「今後、このような行為を繰り返さない」とする文書を社内に掲示するよう命令しました。

 日本IBMロックアウト解雇に関連する公的機関の判断は、これが初めて。現在、6人のJMIU組合員が原告となった解雇撤回裁判が東京地裁と大阪地裁で行われており、大きな影響をあたえるとみられます。

 日本IBMは昨年9月18~20日にかけて組合員8人に対して解雇を通告。それぞれ2~6日後までに解雇を受け入れるか自主退職に応じるかの選択を迫りました。

 JMIU日本IBM支部は緊急を要する問題だとして、同月21日に別件で設定されていた団体交渉にロックアウト解雇問題も議題に追加するよう求めましたが、会社は拒否しました。

 会社側は団交拒否について多忙だったと主張。都労委は「多忙なことを承知の上でその時期に解雇予告通知書を交付した」と指摘し、「団体交渉議題としなかった正当な理由とは、到底(とうてい)認められない」「団体交渉議題とするよう調整することは十分可能であった」としました。

 会社側は自主退職期限や解雇日が過ぎた後に団体交渉を行ったと言い訳しましたが、都労委は「交渉議題の緊急性に十分に対応したことにはならない」としました。

 会見したJMIU日本IBM支部の大岡義久委員長は、「現在に至るまで会社は具体的な解雇理由の説明を拒否している」と語りました。JMIUは声明を発表し、解雇通知を撤回して組合員を職場に戻すよう会社に求めています。

「解雇自由」許さぬたたかい励ます

日本IBMロックアウト解雇断罪

 日本IBMのロックアウト解雇は、安倍政権が「企業が世界でもっとも活動しやすい国をめざす」として狙う解雇規制緩和を先取りしたものです。

 JMIU(全日本金属情報機器労働組合)との団体交渉を拒否した不当労働行為が28日、東京都労働委員会で断罪されたことは、大企業・財界の「解雇自由化」のたくらみに立ち向かう労働組合の運動を励ますものです。

 夕方の終業間際、労働者を別室に呼び出し、突然解雇通告を読み上げて、有無を言わさずそのまま職場から追い出し立ち入り禁止にする―。これが日本IBMのロックアウト解雇です。

 解雇理由には、その労働者の「業績不良」とありますが、労働者には身に覚えがなく、会社から具体的に何が問題なのかの説明もありません。

 解雇通告からわずか数日で、解雇か自主退職かの選択を迫ります。自主退職を選択した場合の退職加算金などの条件も不明のままです。

 労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用(らんよう)したものとして、無効とする」と定めます。

 日本共産党の志位和夫委員長が昨年11月、日本IBMロックアウト解雇を国会で告発し、当時の野田佳彦首相に「あってはならないやり方」と認めさせています。

 この解雇に合理的理由があるのか、ロックアウトという手法が社会通念上許されるのか、会社を問いただし撤回を求めるのは、労働組合の重要な役割です。しかし、日本IBMは、JMIUとの団体交渉を拒否したのです。

 団交拒否ばかりか、ロックアウト解雇自体がJMIUを狙い撃ちしたものでした。昨年から今年にかけて解雇通告を受けたのは、判明している30人中26人がJMIU組合員です。しかも組合役員が10人も含まれていました。

 解雇された組合員は、未払い残業代請求裁判を提訴したり、派遣法違反を是正するよう進言したり、個人面談による退職強要や理不尽な賃下げをやめるよう要求するなど、職場の人権と雇用を守るため活動している人たちでした。

 JMIUは、こんな解雇がまかり通れば、労働者は労働組合に相談することができず、会社の理不尽な命令や違法な働かせ方、退職強要にも抵抗できなくなり、日本社会が「総ブラック企業化」すると警鐘を鳴らしています。

 現在、組合員6人が解雇撤回裁判に立ち上がり、新たに4人が提訴準備中です。JMIUは、都労委に対して、解雇に組合つぶしの狙いがあることについての不当労働行為救済申し立ても検討しています。

 「解雇自由社会」を許さないために、日本IBMへの社会的批判を大きく広げ、解雇撤回・職場復帰を実現することが重要です。(田代正則)