主張
国民会議最終報告
社会保障の安心を投げ捨てた
政府の社会保障制度改革国民会議が、消費税大増税と一体で実施を狙う社会保障「改革」についての最終報告書をまとめ、安倍晋三首相に提出しました。医療・介護を中心に負担増と給付削減を鮮明にした重大な内容です。消費税増税で負担を強いられる国民に、“痛み”の追い打ちをかける改悪は、社会保障制度そのものにたいする国民の不安と不信を高める結果しかもたらしません。負担増・給付削減の「一体改革」路線からの転換こそが急がれます。
全世代に「痛み」おしつけ
社会保障制度改革国民会議は、自民・公明・民主3党が昨年8月に強行した消費税大増税・社会保障「一体改革」関連法の一つ、社会保障制度改革推進法にもとづいて設置されたものです。
推進法は、「自助」を社会保障の基本にする「自己責任」原則を打ち出し、社会保障への国の責任を後退させる方針を盛り込みました。国と地方の社会保障費を大幅に抑え込むことを狙ったものです。
国民会議の役割は、推進法にもとづいて消費税増税と同時に行う社会保障「改革」の“青写真”づくりです。財界などが国民会議に「負担増と給付減という『苦い薬』を飲まなければいけない」(経済同友会)ことを国民に示せ、と“痛みのメニュー”づくりを執拗(しつよう)に迫ったことは重大です。
民主党の野田佳彦政権下の昨年11月に議論を開始した国民会議が、政権復帰した自公連立の安倍政権に提出した最終報告書は、医療・介護・年金・子育ての各分野にわたって全世代の国民に“痛み”をもたらすものとなっています。
これまでの社会保障給付は「高齢世代中心」だったと一方的に決め付け、高齢者の負担強化と給付カットを提起したことは、その影響は高齢世代だけにとどまらない深刻な問題です。例えば、介護保険で「軽度」といわれる要支援者を介護サービスから切り離す方針は、高齢者を介護している現役世代を直撃します。要支援者のお年寄りを、介護サービスを使って在宅などで面倒を見ている人たちの多くはまだまだ働き盛りです。要支援者の「介護保険外し」は、家族を介護するために仕事をやめる“介護離職者”を激増させかねません。
70~74歳の高齢者の医療費窓口負担増も、決して医療費削減につながりません。負担増により受診を控えた高齢者は、早期発見・早期治療の機会が失われ、重症化がすすみ、かえって医療費が膨張する危険すらあります。高齢者の窓口負担が軽減されることによって心身の健康状態が改善される世界的な研究成果もあります。窓口負担の軽減こそ必要のはずです。
負担増と給付削減の「一体改革」路線では、社会保障の再建・充実は不可能です。社会保障を日本経済の「お荷物」扱いする発想を根本的にあらためなければ、社会保障の未来は開けません。
転換なしに再生はない
“消費税増税は社会保障充実のため”という「一体改革」のごまかしは明白です。報告書を受けた安倍政権は8月末までに「社会保障制度改革大綱」を閣議決定し、秋の臨時国会に負担増と給付削減の期限などを決める法案を提出する構えです。国民の暮らしの土台を破壊し、社会保障の充実にも逆行する「一体改革」の具体化を阻むたたかいが重要です。
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