主張
原爆被爆68年
国家補償に踏み切るべきだ
日本が引き起こしたアジア太平洋戦争の終戦間際、アメリカが1945年8月6日に広島、9日に長崎に原爆を投下してから68年になります。
原爆の爆風と熱線、放射能は両市を一瞬のうちに地獄の街にかえ、同年末までに広島市で14万人以上、長崎市で7万3千人以上の命を奪いました。助かった人たちも原爆症で苦しみ、毎年少なくない方たちがなくなっています。被爆者は高齢化しています。被爆者の苦しみをこれ以上放置することは許されません。政府が原爆被害への国家補償に踏み切り、被爆者援護を拡大することが急務です。
司法は再び国を断罪
大阪地裁は2日、2008年に原爆症認定の新基準が導入されたあとも、国が認定申請を却下してきたのは違法だとして、被爆者8人の却下処分を取り消し、認定を国に命じる判決をだしました。判決は、初期放射線の被害のみを判断材料にする国の態度を批判し、心筋梗塞や舌がん、慢性甲状腺機能症などを放射線被爆と関連性があると認めて、原爆症と認定したものです。
判決は、原爆認定集団訴訟で連敗したのを受けて国が導入した新基準で、「積極認定」を約束したにもかかわらず認定申請を却下し、被爆者を救済措置からふるいおとしてきたやり方を断罪したものです。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の提言を真(しん)摯(し)に受け止めて、国は認定審査のあり方を根本から改善すべきです。
見過ごせないのは、09年に麻生太郎首相が被団協や集団訴訟全国原告団などと厚労相との定期協議を開いて問題を解決すると約束したのに、それが守られていないことです。安倍政権は政権発足以降一度も定期協議を行っていません。「訴訟の場で争う必要のないよう」(確認書)に認定審査のあり方を検討する定期協議を形だけにするのは許されません。安倍政権は定期協議をすみやかに開き、原爆症認定制度の抜本的改善と国家補償の実現をめざすべきです。
被爆者の間からは、安倍政権が15年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた今年4月の第2回準備委員会で、核兵器の使用をいかなる場合も禁止せよという共同声明がだされたのに、賛同署名を拒否したことに批判が噴き出ています。場合によって核兵器の使用を認める態度表明だからです。唯一の被爆国の政府としてあるまじき態度です。核兵器廃絶に力をつくし、「ふたたび被爆者をつくらない」と願う被爆者の怒りを買うのは当たり前です。
安倍首相の憲法改悪の企ても被爆者の怒りを呼んでいます。憲法改悪は日本を海外で「戦争する国」にする企てそのものです。戦争も核兵器もない平和な世界を求める被爆者の願いにも反します。
唯一の被爆国として
原水爆禁止運動は、核兵器廃絶、被爆者援護・連帯を一致点にした運動です。東京電力福島原発事故後、「原発ゼロ」を一致点とする国民的共同も広がっています。どんな形であれ「核」による被害者をださないという一点で両者が共鳴しあうことがいよいよ重要です。
被爆68年を迎え、唯一の被爆国である日本が核兵器全面禁止の流れの先頭にたつことが、「核兵器のない世界」への展望を広げることにつながるのは明らかです。