主張
「離島奪還」訓練
戦争準備の企ては許されない
陸・海・空の3自衛隊が、米海兵隊・海軍との共同統合訓練「ドーン・ブリッツ(夜明けの電撃戦)」を10日から26日までの予定で、米カリフォルニア州で始めました。
訓練の目的は「島しょ侵攻対処」とされていますが、その内容は攻撃から「島」を守るのではなく、奪われた「島」をとりもどす「離島奪還」訓練です。「島」そのものを奪う、攻撃のための訓練にもつながっています。「離島奪還」は武力行使を伴う本格的な軍事作戦です。武力行使を前提にした訓練は、周辺地域の緊張を激化させることにもなりかねません。
侵攻作戦能力の強化
訓練はもともと昨年11月、陸上自衛隊と沖縄駐留の米海兵隊が沖縄県の無人島で計画したものの、地元の反発などで中止においこまれたため、米国にでかけていっておこなうものです。
共同訓練には陸自から九州地域を担当する西部方面隊、海自からヘリ空母といわれる護衛艦「ひゅうが」、イージス艦「あたご」、大型輸送艦「しもきた」、それに空自部隊が参加します。参加人員は1000人にもなります。自衛隊が陸・海・空の統合部隊を編成し、海外にこれだけの大部隊を出動させるのは、戦争を放棄し軍隊は持たないと決めた憲法をないがしろにする軍事的暴走です。
「ドーン・ブリッツ」は米海兵隊が主催して強襲上陸作戦能力を強化するまさに戦争のための訓練です。「地球規模の危機対応」と位置づけた実戦的な訓練です。文字通り、海兵隊が海外で戦争するための訓練です。海外での「殴り込み」能力を強めるための米軍の訓練に、自衛隊が参加すること自体、許されるものではありません。
政府が狙う自衛隊の海兵隊化への動きを加速しようとしているのは明らかです。訓練では「ひゅうが」から米海兵隊の新型輸送機オスプレイが発進もします。他国の攻撃で奪われた離島を「奪還」するなどというありそうもない前提で、米軍といっしょになって「敵」を攻撃する訓練をするのは、まさに憲法を踏みにじるものです。
3自衛隊が参加する今回の「離島奪還」訓練が、米国の軍事戦略を支える役割を果たすことは重大です。米国はアジア太平洋地域などでの軍事的影響力を強めるために、同盟諸国をまきこんで軍事態勢を強化・拡大しています。日本がそれに組み込まれていることは、昨年の米国領グアムやテニアンでの上陸訓練や今回の「離島奪還」訓練をみても明らかです。
日本政府は平素から切れ目のない米軍支援を約束しています。共同訓練や警戒監視・偵察活動による対米軍支援を続ければ、日本が攻撃されなくても、戦争をはじめた米軍を自衛隊が支援する「集団的自衛権」の行使に発展しかねません。
外交的努力に徹せよ
小野寺五典防衛相は「離島奪還」訓練が特定の国や場所を想定していないといいますが、尖閣諸島を念頭においていることは否定しません。このことも重大です。
尖閣諸島問題の解決には、日本が領土紛争の存在を認め話し合いでの解決に向けて努力するとともに、緊張を激化させる対応をきびしく自制することが不可欠です。「離島奪還」のような訓練が問題の解決を困難にすることは明らかで、訓練は直ちに中止すべきです。