主張
物価上昇と生活保護削減
暮らしを壊す“あべこべ政治”
物価引き上げ目標を掲げる安倍晋三内閣のもとで、所得の増えない国民の暮らしが置き去りにされる危険が現実のものになっています。とくに収入の手段を失った生活保護受給者をはじめとする低所得者への影響は計り知れません。
そんななか安倍内閣は過去最大の生活保護費削減を実行しようとしています。物価が上がれば、たとえ同じものを買ってもお金が余計にかかるのに、肝心の保護費が削られては、暮らしはいよいよ立ち行きません。こんな逆行した政治は許されません。
崩れる「削減」の理由
安倍内閣の生活保護費削減の中心は、毎日の暮らしに欠かせない食費や光熱費など生活扶助費の削減です。審議中の今年度予算案に8月から3年かけて670億円も削る方針を盛り込みました。
削減対象は生活保護世帯の9割以上にのぼり、その多くは子どものいる世帯です。月2万円もカットされる子育て世帯もあります。いまでも経済的理由によって勉学中断や進学断念に追い込まれる子どもが少なくありません。扶助費の大削減は、貧困が子どもたちの未来を奪う、本来あってはならない事態に拍車をかける暴挙です。
扶助費の削減には、なんの道理もありません。厚労省は、削減する総額670億円のうち580億円分は、消費者物価指数の動向を機械的に当てはめ、“物価が下がった分が反映されていないからその分を削る”と説明しています。
これは生活保護世帯の実態を無視したものです。価格が大きく下がったのはもっぱらパソコンやテレビなど経済的に余裕がある世帯が購入できる品目です。生活保護世帯にもっとも深く関係している食料品や衣料品などの下落幅は非常に小さく、光熱水費などは、むしろ上昇しています。現実からかけ離れた数字を根拠に削減を強行することはあまりに乱暴です。
「アベノミクス」と称する経済対策によって生活保護世帯をはじめとする低所得世帯はすでに苦境に立たされつつあります。円安による輸入品価格押し上げは、この冬の灯油代高騰を引き起こし、各地で悲鳴があがりました。今後次々と実施される小麦や食用油など生活必需品の値上げラッシュ、電気代の引き上げが生活苦にますます追い打ちをかけるのは必至です。
いまもギリギリの生活を強いられているのに、物価上昇によってさらに節約が迫られることになれば、食事や冷暖房を我慢するなどして、健康を害する生活保護世帯が続出しかねません。08年度の予算編成のとき厚労省は「原油価格の高騰」を配慮して生活扶助費削減を行いませんでした。現在は、当時よりも物価の上げ幅が大きくなろうとしています。それにもかかわらず「削減ありき」で強行するのは理不尽です。深刻な犠牲を生まないためにも生活扶助費削減の中止を決断すべきです。
改悪許さぬたたかいを
生活扶助費削減は受給者だけの問題ではありません。扶助費基準が最低賃金や就学援助、住民税非課税など暮らしにかかわる制度の「目安」だからです。政府も保護費削減が各制度に波及することを認めています。急激な物価高騰もいわれるなか暮らしを支える制度を改悪することは、まさに“あべこべ”です。生活保護改悪を許さないたたかいが急がれます。
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