日本の異常 高学費・有利子奨学金
4年間で借金700万円
新入生が希望に胸をふくらませる春です。しかし高すぎる日本の学費は、充実した大学生活を望む若者の前に立ちふさがり、子育て世帯に過重な負担を強いています。学費問題を通して「日本の異常」に迫ります。
「何のための大学か」
「公認会計士の資格をとろう」
東京都内の私立大学に入学したとき、田原真人さん(23歳=仮名)は意欲に燃えていました。「商学部の勉強はおもしろい」。順調に簿記2級に合格しました。しかし1年目の冬に、挫折しました。
両親は自営業。1990年代のバブル崩壊後、経営が悪化しました。「大学には行くといい」。進学を後押ししてくれましたが、費用は奨学金に頼らざるをえませんでした。
大学の学費急騰
入学金と4年間の授業料で約400万円。生活費が4年分で約300万円。合わせて700万円を超す借金を背負いました。
それでも生活費は足りませんでした。居酒屋で週3~4回、午前3時か5時まで働きました。授業に出られずアパートで眠る日が増えました。自由な時間が限られ、簿記1級の分厚いテキストをこなせませんでした。
わずかな貯金ができても、実地調査の授業の交通費と宿泊費に消えました。友人から映画館に誘われても断り、趣味の映画は100円のレンタルビデオを借りて見ました。
「高い学費で学生生活が台なしにされる。何のための大学なのか。おかしな国です」
日本の大学の学費は70年代以降、急騰しました。初年度納付金は60年と比べ、国立大学で約82倍、私立大学で約19倍になっています。(グラフ)
給付奨学金なし
世界に目を向けると、日本の教育政策の異常さは際立ちます。
OECD(経済協力開発機構)加盟34カ国のうち、半数の17カ国は大学の授業料が無償です。
フランスは登録料171ユーロ(約2万4千円)のみ。スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークは登録料もない徹底した無償制です。
そのうえ32カ国で、返済義務のない給付制奨学金が支給されています。授業料が比較的高いアメリカでは65%の学生が受給。授業料が無償の国でも、低所得の家庭の学生に生活費を保障するなどの目的で支給されています。
授業料が有料で給付制奨学金さえないのは、日本だけ。文字通りの「例外国家」です。
コメント
コメントを書く