解雇 待った 政府が介入―ベルギー、フランス
欧州で企業が進める雇用削減計画に対し、各国政府が計画の見直しを求めて積極的に介入する動きが続いています。ベルギーとフランスでは首相や担当相が雇用維持を求め企業側と折衝、労使間の対話を仲介するなどしています。(島崎桂)
ベルギー 首相が企業直談判
ベルギーでは、鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタルが東部リエージュの工場閉鎖と、約1300人のリストラ策を進めています。
政府主導で対話続ける
同国のディルポ首相(社会党)は先月末、同社のラクシュミ・ミタル会長と会談し、リストラ策への「非常に強い不満」を表明。計画の見直しと労使間の対話継続のため、企業と労働組合、中央・地方両政府、商業銀行の代表らで構成する作業部会を政府主導で編成し、事態打開に向けた話し合いを続けています。
労働者側は国有化も含めた救済策を求め、政府、経営陣への圧力を強めています。現地からの報道によると、1月29日には約1500人のミタルの労働者が南部ワロン地域の政府所在地ナミュールで抗議行動を実施。参加者の一人はリストラ策への不満を語り、「(自分と)同じ状況下の人は大勢いる。われわれが動かなければ、状況はますます悪くなる」と述べました。
フランス 労使交渉を後押し
労働側不満 スト突入も
フランスでは、米タイヤ大手グッドイヤーが1月31日に発表した北部アミアンの工場閉鎖計画に批判が集まっています。
約1200人の雇用削減を伴う同計画に対し、モントブール生産回復相は「全ての当事者を交渉の席に着かせる」として、労使代表らによる対話を指示。同国最大労組、労働総同盟(CGT)のフランク・ジュレク氏は「労働者による闘争を組織し、最後までたたかい続ける」と述べました。
仏自動車大手プジョー・シトロエングループは、8000人を削減する計画を進めています。仏政府はこれも修正するよう要求。仏裁判所が1月下旬に差し止めを命令しました。
同じ仏自動車大手ルノーでは、政府の仲裁が加わった案に労働者が不満を表明し、ストに入りました。
ルノーは国内複数の工場閉鎖計画に伴い、約8000人の解雇計画を進めていますが、工場閉鎖回避と解雇撤回の条件として、今年の賃上げを凍結するなどの新労働契約案を提示。労組側と合意が得られれば、国内の年間生産台数を8万台増やす意向を表明しました。モントブール生産回復相は「適切な努力だ」として同案を支持しました。
これに対し、パリ近郊イブリーヌ県のフラン工場でストを呼び掛けたCGTのアリ・カヤ氏は、仏紙パリジャンに対し「新労働契約が合意されれば、工場の閉鎖が予告されたのと同じだ」と指摘。5日には、ルノーの労働者が、国内各地で新労働契約案への抗議デモやストを実施しました。