めるまがアゴラちゃんねる

2013年12月第3週号

2013/12/16 11:10 投稿

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めるまがアゴラちゃんねる、第071号をお届けします。
発行が遅れまして、大変申し訳ございません。

コンテンツ

・ゲーム産業の興亡(82)
mixiの「モンスターストライク」は第二の「パズドラ」になるのか?
新清士(ゲームジャーナリスト)


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特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(82)
mixiの「モンスターストライク」は第二の「パズドラ」になるのか?

結論から、書くと難しいと考えている。ゲームとしての目新しさはあるものの「モンスターストライク」への株式市場の期待は、高すぎると考えている。アップルのiPhoneのソフト流通の仕組み「アップストア」で、トップセールスで首位を得るような状態が起きることは難しいだろう。現在は20〜30 位あたりにいる。

ただ、持続できれば、売上としては月に数億円の期待はできるため、非常に厳しいmixiの業績を改善する可能性はある。

■第二の「パズドラ」は過剰期待
ソーシャルネットワークサービス企業の一社のmixiの株価が、9日、4日連続のストップ高となり、逆に11日から13日にかけて、連日ストップ安となった。11月には1000円台だった株価が、10日には9060円をつけていたが、13日には5060円にまで下げた。

これは、mixiが9月末にiPhone向けのゲームとして、リリースした「モンスターストライク」が、第二の「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)になるのではないか、と個人投資家から過剰な期待を集め、一瞬のバブル状態を生みだしたと思われる。

このゲームは、9日にダウンロードユーザー数が40万人を超えたとの発表が行われた。しかし、サービス開始から2ヶ月経過していることを考えていると決して大ヒットを引き起こしている数字ではない。

「モンスターストライク」は、ドラゴンのキャラクターをはじいて敵を倒すというゲームシステムを売りにしており、過去になかったゲームであるとはいえる。ただし、ゲームは、洗練されているとは言えず、スマホ向けのゲームとしてユーザーを獲得できるかどうかの重要なポイントであるテンポがよいとは言えない。

また、4人で集まった時に一緒に遊ぶことができるということも売りにしている。

これも新しいタイプの機能ではあり、4人によるWi-Fiプレイによって人気を集めてきた「モンスターハンター」シリーズ(カプコン)を意識していると思われるが、一般にソーシャルゲームでは、リアルに顔を会わせて友人と一緒に遊ぶ状況が生まれることは少ない。「非同期型」と呼ばれる顔を知らない他のプレイヤーと時間をずらして、自由な時間で遊ぶことができることが強みであるからだ。顔を会わせて一緒に遊ぶゲームは「同期型」と呼ばれる。

■SNSとソシャゲで優位性を築いていたのに自ら自滅したmixi
mixiは本業のSNS事業は非常に苦しい状態にある。13年7〜9月は売上高が18億3500万円に対して、営業損益が3億1300万円。11年の10〜12月をピークに売上の減少傾向を止めることができていない。2つ理由がある。SNSとして力を失ったことと、ソーシャルゲームプラットフォームになれなかったことだ。しかし、どちらもmixi自身の間違った意思決定によって自滅した面が強い。

ユーザーも、Twitter、Facebook、LINEの登場によって、シフトしてしまっており、閑散とした状態にある。SNSは3年程度でユーザーは目新しいサービスに移行する傾向がある。それぞれのSNSに対して、ユーザーの忠誠心は低い。しかし、mixiの場合は、自らユーザーの信頼を崩した面がある。特に、11年6月に行った機能変更だ。mixiの特徴でもあった、誰が自分のページを見に来ているのかを確認できる「足あと」機能を削除したのだ。

ユーザーは、mixiのこの仕様変更に対して反発。1万人以上を集めたユーザーコミュニティまでできて反対運動が繰り広げられた。mixi側は、当初、これらのコミュニティに適切に対応せず、むしろサービスを阻害する敵のように扱った。しかし、これらの状況は、ネットを通じて、ユーザー間で共有されることとなり、SNSとしての衰退要因になったとみてよい。

また、ソーシャルゲーム分野でも、間違った意思決定を行った。mixiはソーシャルゲームで、早期に成功した企業だった。特に09年8月に「サンシャイン牧場」(中国Rekoo)がリリースされた際には、その目新しさもあり、300万人を超えるユーザーを獲得した。Facebookで人気を集めていた農園を育てるゲームが、日本に持ち込まれヒットした最初のゲームでもあった。

そのため、ソーシャルゲームのゲームプラットフォーム事業としては、DeNA(ディー・エヌ・エー)やグリーよりも先行する立場を築いていた。パソコンのブラウザ向けゲームが盛り上がり始めていた時期でもあり、多くの企業が参入し、注目を集めた。

しかし、mixiで提供するゲームは、実際に友人であるユーザー間のコミュニケーションを促進するものではないと、リリースすることを認めないという決定を行った。これは知らないユーザー間での遊びによって収益を上げるソーシャルゲームの特性を真っ向から否定することで、ゲーム会社から失望感が広がった。そのため、急激にゲーム会社も離れた。ガラケーを中心としたソーシャルゲーム業界の成長が引き起こされることになった。

そうして、mixiは急激な衰退に直面することになった。

mixiはサービスとして優位性を失ったSNSが取らざる得ない戦略の方向性を示している。パブリッシャー、もしくは、デベロッパーとして自社や関連企業のゲームを販売してヒットさせていくしか方法がない。スマホゲームは1タイトルがヒットすると、売上が大きく変わるが変わる状態が続いているが、mixiが、持続的な成長には現時点では疑問を感じている。



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新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin

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