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 石川 温の「スマホ業界新聞」

                                                  2012/10/13(vol.005)

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《目次》

1.ソフトバンク、スプリント買収報道
━━アメリカ進出の狙いに迫る5つの仮説
2.孫社長「ドコモを抜いて1位になる」
━━ ソフトバンク、2012ー13年冬春商戦発表会
3.加藤社長「LTE、クラウドで一日の長がある」
━━NTTドコモ、2012冬商戦発表会
4. 今週のリリース&ニュース
5.編集後記

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1.ソフトバンク、スプリント買収報道
━━アメリカ進出の狙いに迫る5つの仮説
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 2012年10月9日、ソフトバンク2012-13冬春商戦新製品発表会。
 その日の孫社長は、いつものと違っていた。プレゼン冒頭、ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥京都大学教授の功績に触れ、
「他の科学者が『できます』という中、山中教授は『やります』と答えるという。私もTwitterやFacebookで『やりましょう』とつぶやくが、物事はできますというのと、実際にやってみせるのとでは全然違う。不可能と思えることでも、何としてでもやるんだという精神力があれば、物事は著しく進化するのだ」と語った。
 ソフトバンクにとって、Androidラインナップは必ずしも「主力」とは言えない商品群だ。そのラインナップ発表会の冒頭の割には、あまりに重々しい決意表明とも言えた。
 もうひとつ、筆者は、孫社長の異変に気がついた。発表会終了後の囲みを含め、2時間程度の新製品発表会の間中、孫社長はやたらと水を飲んだのだ。発表会のインターネット中継でも、質疑応答のなかで、舞台袖に向かって水を要求するシーンがきっちりと映っているが、あれ以外にも、プレゼンの最中、映像に切り替わるタイミングに舞台の端まで行き、水を2回ほどがぶ飲みしている。発表会終了後の囲みが終わったあとも、記者団がいるすぐ横に水が用意されたのだった。2時間で4、5回は水を飲んでいる。いままではそんな光景を見たこと無かったので、思わずTwitterで「孫さん、今日はやたらと水を飲んでいるな」とつぶやいてしまったほどだ。「もしかして、病気なのか」とも思い、水を多く飲む症状の病気をその場で調べてしまった。いまから、振り返れば、孫さんは相当なストレス状態にあって水を欲したのかも知れない。
 スプリント買収報道を真っ先に行った日経とNHKは、発表会のタイミングで、すでに何らかの情報を知っていた可能性が高い。場合によっては質疑応答や囲みで、孫社長に「買収するのか」という質問していてもおかしくない。その攻撃を孫社長はどのように交わすべきかと考え、極度の緊張状態にあったのではないか。

 10日、孫社長はTwitterで「目標が低すぎないか? 平凡な人生に満足していないか?」とつぶやいた。孫社長のTwitterへのつぶやきは、Facebookにも反映される。Facebookで見ていた自分は、思わず、孫社長の個人的なFacebookページに「ドコモを抜くという目標、低すぎませんか?」と突っ込んでしまった。過去一度も孫さんのFacebookに書き込みをしたことはないのだが、なぜかその時だけは、何かの前触れのような気がして、思わず書いてしまったのだった。
 その後、勢い余って書き込みをしたことを後悔し、削除しようかと思ったのが、11日の夜に「ソフトバンクがスプリントを買収検討へ」という報道が出ることになる。まさに、孫社長お得意のSNSパフォーマンスにまんまと引っかかってしまったというわけだ。

 ソフトバンクはスプリントを買収するにあたり、2兆円規模の巨額投資が必要となる。円高や長期金利の低下もあり、ボーダフォンの日本法人を買収したときに比べれば、大型買収には追い風が吹いているという見方もできる。日経報道では、アメリカ3位のスプリントに加え、5位のメトロPCSも買収するのではないかと伝えている。
 果たして、孫社長はどのような狙いがあって、アメリカのキャリアを買収しようとしているのか。11日夜の報道以降、業界関係者は様々な角度で分析を行っている。立場が違えば、それぞれ見方も異なってくる。11日から今にかけて、複数の業界関係者に取材できたので、彼らの「憶測」をまとめて紹介したい。あくまで「事実」ではなく「仮説」の話だ。とはいえ、この5つの仮説に孫社長の狙いに近いものがあるかも知れない。