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石川 温の「スマホ業界新聞」
2012/09/10(vol.000)
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《目次》
0.創刊にあたって
1.アップルvs.サムスン訴訟合戦
ーー泥沼化必至で、販売差し止めの意味なし?
2.欧州最大の家電展示会「IFA」取材レポート
ーープレゼンテーションに見る日韓メーカーの実力差
3.業界キーマンインタビュー
――ソニーモバイルコミュニケーションズ
Vice President、Creative Director 黒住吉郎氏
4.今週のリリース&ニュース
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0.創刊にあたって
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どうも。ケータイジャーナリストの石川 温です。
ようやくというか、ついに有料メルマガの世界に足を突っ込むことにしました。
有料メルマガについては、本当にやろうかどうしようか迷い続けておりました。ひとつには、有料メルマガ業界の諸先輩方がおっしゃっているように「自分のメディアをつくる」という目標が、自分にもあったりします。やはり、自分の言いたいことを、何の制限もなく、自由にみなさんに語るというのは、こういった仕事をしている者からすると、理想的な環境だったりします。
幸いにも、自分の場合は「日経新聞電子版」で、長年、毎週コラムを書いており「自分の好きなことを語る」という面では、何の不満もありません。編集担当者やデスクの方々の協力体制もあり、特に締め切りというのが設けられておらず、比較的、自由なタイミングで記事をアップすることができます。そのため、キャリアの新製品発表会があれば、すぐに原稿を書いて、その翌日に記事をアップするということもありますし、新製品発表会が立て込めば、週に2本あげることもあります。「書きたいことをすぐに書く」という面で、日経新聞電子版のコラムは自分としても大好きな仕事場だったりもします。日経新聞電子版でコラムを書いていなければ、いまの自分はなかったと思うほどですし。
ただ、スマートフォン業界は、本当にニュースが多く、毎日のように記者説明会やイベントが開催されています。個人的に製品担当者に話を聞くという機会も多いです。残念ながら、そういったネタは日経新聞電子版コラムに書くことなく、お蔵入りしてしまうことがほとんどです。かなり、面白い話が聞けても、世間に知らせるチャンスがないことを、本当に申し訳ないと思い続けてきてました。
「だったら、他の媒体でも連載を持てばいいじゃん?」と思われる方もいるかも知れません。しかし、意外と「好きなことをタイムリーに書ける媒体」ってないものなのです。ウェブ媒体であっても、掲載日が決められており、その2日前ぐらいに締め切り日が設定されていることが多いです。スマートフォン業界のような、日々新しいニュースが湯水のごとくわき出てくる世界にいると、「書いた原稿が数日後にアップされる」というのが、本当にじれったいのです。「他の人間に先に書かれるのではないか」「先に他から出たら、パクリだと思われはしないか」と不安になってくるのです。
「タイムリーなネタをタイムリーなタイミングで世間に送る」という面で、メルマガがひとつの答えなのではないか、と考えたのです。
もうひとつ、有料メルマガを始めた理由は「想定した読者に、きっちりとした情報を届けたい」というのがあります。
紙の雑誌の場合、創刊時には想定読者層というものがあらかじめ設定されます。「30〜40代の男性、独身で都心部に住んでいて、デジタルガジェットに興味がある。飲みに行くのは週2回程度」といった具合。自分もライターとして文章を書くときや、またケータイジャーナリストして各媒体にインタビューされるときは、その媒体の想定読者にあった話の内容にしています。特に女性誌であれば、「クロワッサン」なのか「ViVi」なのかで、話す内容も単語の選び方も異なってきます。当然、「週刊プレイボーイ」と「プレジデント」でも同じスマートフォンをテーマにしても、話の落としどころなどを変えています。
しかし、ここ最近は、紙媒体で書いたり、インタビューを受けても、ほとんどの場合がインターネットに転載されることが増えてきました。こうなると、本来であれば「週刊プレイボーイ」の読者を想定した内容が、すべてのインターネット利用者に開示されることになります。ヤフートピックスなんてのに転載されたら、本当に想定外の人に届いてしまいます。確かにいろんな人に読んでもらえるのは、書き手として、また取材された側としてもうれしい。しかし、個人的には「紙の媒体は苦しい時代を迎えている。ならば、紙でしか読めない面白いネタを提供しよう」と、ウェブ媒体に比べて際どいことを書いているのですが、それがウェブに出てしまうと、面倒くさい人から突っ込まれたり、どこぞの信者からTwitterでやっかいなメンションが飛んできたりと、辟易されることがあるのです。
紙媒体の編集部も、コストをかけずにウェブ媒体を継続させる必要があるため、紙の雑誌で使ったネタを流用するというのは仕方のないことでしょう。しかし、紙とウェブで読める内容が同じであっては、紙媒体はさらに衰退し、無料で広告収入もままならないウェブ媒体しか残っていかなくなる気がしてなりません。
これまでは「紙媒体は、想定読者に向けて際どい話」を提供してきましたが、もはや、それも限界になってきています。なので、今回、想定読者を描きやすい有料メルマガを立ち上げ、限られた読者に向けて、お金を払ってくれているのだから、お値段以上に満足してもらえるネタを提供できれば、と決意しております。
それと、最後に語っておきたいメルマガ創刊の理由。それは「中立な立場を貫きたい」という意思です。
自分の場合、ライターやジャーナリストとして、メディアに出る機会も多いですが、キャリアやメーカーのタイアップ記事の執筆や出演はすべてお断りしている状態です。ここ最近、とても多くお問い合わせや出演依頼を受けるのですが、頑なにお断りさせていただいております。やはり、「ジャーナリスト」を名乗っている手前、特定企業の製品やサービスを宣伝することは難しいなぁ、と思っている次第です。諸先輩方のなかには、実に器用にタイアップ記事と自身のコラム原稿のテイストを書き分けている方もいて、尊敬しているのですが、自分は不器用なこともあって、無理だと思っています。
また、過去にはある一部の紙媒体で連載していたコラムで「これは●●に怒られそうだから、書き直して」と言われて唖然としたことがありました。●●には当然、キャリア名が入るのですが、タイアップではない、署名原稿の編集記事でさえ、編集者が遠慮をしてしまうケースも見られます(ただ、このキャリアは決してそんなことで怒る会社ではないし、自分は一度も怒られたことはない。単なる編集者と編集長がビビりなだけ)。
有料メルマガという読者の方に購読料を負担していただくかたちにはなりますが、その分、今まで以上に徹底的に本音で書くメルマガを目指していきます。
メルマガのタイトルですが、昔、業界ネタを書き続けていたブログ「ケータイ業界 噂の真相」を復活させて「スマホ業界 噂の真相」というのにしようと思ったのですが、ちょっとマニアック過ぎるので、「スマホ業界人の必読紙」を目標にしようかと「スマホ業界新聞」にしました。
某経済新聞のように、飛ばしまくりの記事も織り交ぜつつ、1週間のニュースをコンパクトにまとめ、これさえ読んでいれば、業界動向がきちんと把握できるメルマガにしていくつもりです。
2012年09月10日 石川 温
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1.アップルvs.サムスン訴訟合戦
ーー泥沼化で、販売差し止めの意味なし?
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8月24日にアメリカで陪審員による評決によって「サムスンは損害賠償として10億500億ドル(830億円)を支払うべし」と命じられて、今まで以上にアップルvsサムスンの訴訟合戦がメディアを賑わせました。
自分も韓国でサムスン電子関係者と一緒にいたにも関わらず、テレビ朝日「報道ステーション」の駐在スタッフからカメラによるインタビュー取材を受けました(コメントを収録するも、その直後に駐中国大使の公用車が北京市内で襲われた事件が発生したため、放映はお蔵入りになってしまった模様)。さらに韓国・ドイツ出張中もテレビ、ラジオや雑誌などからのコメント取材が殺到。ドイツ・IFA会場では、サムスンブース内でTBS「ニュース23X」のカメラインタビューを受けました。とにかく、この1週間はアップルvs.サムスンの話題で持ちきりだったようです。
今回の騒動、確かにGALAXYの初期モデルなどは、実にiPhoneをパクってきたというのは、事実かと思います。ホームボタン、画面下部に配置された4つのアイコン、メニューのテイストなど、初めてGALAXY Sを触ったときなどは「ここまで似せて大丈夫か?」と正直、サムスン電子のことを心配したものです。「こりゃ、アップルも黙ってないだろうな」と。結果、スティーブ・ジョブズもお怒りとなり、今回の訴訟合戦に発展していきました。
日本で8月31日に東京地裁がアップルの訴えを退けました。これは、音楽のデータを携帯端末とパソコンを接続して共有する特許に関してのものだったので(特許は日立が持っているとされている)、当然のことながら、アップルの訴えは退けられます。ただ、まだほかにもデザインがらみの訴訟は残っているようで、こちらがあることで日本でも長引くと見られています。
アメリカにおいても、これから販売の差し止め請求が始まるでしょうが、すでにメイン機種ではないものが対象となるため、サムスンの影響はわずかにとどまりそうです。アップルとしてはGALAXY SⅢも対象にしたいようですが、それも2013年以降に審議が始まるようで、そのころにサムスンはGALAXY SⅦあたりを出してしまっているのではないでしょうか。
アメリカで評決が出た後、サムスン電子幹部に今の感想をぶつけたところ、一気に表情が暗くなり「今は何も言えない。ただ、長期化するのは間違いないのでは」と話しておりました。長期化すればするほど、このままであれば、サムスン電子にとってはマイナスイメージにもなりかねません。しかし、アップルのホームグラウンドであるアメリカでは大勝利を収めましたが、他の国ではどうなるかはわかりません。アップルの訴えが退けられたら、逆にサムスンのイメージが上がることでしょう。
今回、サムスンばかりがマイナスイメージにとらえられがちですが、あながちサムスンもニンマリしているのではないのかなぁ、と思います。だって、今後、サムスン電子は新製品を投入するたびに「iPhoneとどこが似ていて、どこが似ていない」という視点でメディアが取り上げてくれるではないですか。
世界的に「iPhoneに対抗できるのはGALAXYだけ」というイメージを植え付けることに成功しているだけに、今後、ますます世界のスマホ市場は「アップルvsサムスン」という構図で動いていくことになります。
この視点で見ると、実は負け組は日本メーカーなのではないかと。アップルにまったく相手にされていないというのは、恥ずかしいことなのではないでしょうか。
その点、是非ソニーにはアップルに一泡吹かせてもらいたい。サムスンとの訴訟合戦でアップルがソニーのデザインを参考にしていることが明らかになっています。
「てめー、うちのデザイン、パクりやがって」とソニーがアップルを訴えたら、結構、面白いことになるんじゃないですかねぇ。まぁ、パクられた側のソニー・XperiaがiPhoneと比べると売れていないというのが、何とも残念ではありますが。
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2.欧州最大の家電展示会「IFA」取材レポート
ーープレゼンテーションに見る日韓メーカーの実力差
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8月末からドイツ・ベルリンで開催された欧州最大の家電展示会「IFA」に行ってきました。その直前に韓国・サムスン電子に取材に行っていたのですが、ソウルでは台風が直撃して飛行機が飛ぶのが遅れ、羽田に着いてフランクフルト行きに乗り換えたものの、今度は機材不良でなかなか飛ばず(787なのが不安にさせられる)、さらにドイツではルフトハンザ航空のストに巻き込まれそうになるなど、順調とは行かなかったものの、なんとか韓国・ドイツの強行取材旅行を終えることができました。
実は、IFA取材は初めてということもあり、会場の規模感もわからないまま、突入した感じです。
そんななか最も印象的だったのは、各メーカーの記者会見のプレゼンテーションのやり方がこうも違うか、という点。やはり、記者会見の規模や内容は、メーカーとしての実力を如実に現している感があります。
その点、圧倒的に存在感を示したのが韓国・サムスン電子。「SAMSUNG Mobile UNPACKED 2012」というモバイルに特化した記者会見を、IFAの会場とは違う場所を貸し切り、大々的にメディアを集めて実施しておりました。3部構成になっており、予想された「GALAXY NOTEⅡ」、誰もが驚いた「GALAXY Camera」、さらにWindows8シリーズとして「ATIV」を発表。プレゼンテーション中の音楽はオーケストラが担当し、マジックあり、特別ゲストありと盛りだくさんの内容でした。翌日は、IFA会場内で、OLEDテレビと白物家電の記者会見を開催。こちらもちょっとしたパフォーマンスで盛り上げておりました。サムスン電子がすごいのが、きっちりと記者会見がエンターテイメントとして完成されており、プレゼンテーションに流れと一体感があるのです。
一方、最悪だったのがパナソニック。会場内で記者会見が行われたのですが、日本人幹部の発表は、プレゼンテーション原稿を棒読みするだけのもの。プレゼン資料も、いかにもパワポで素人が作りましたというお粗末なものでした。プレゼン資料もテレビ、カメラ、スマート家電など、それぞれテイストが異なるデザインになっており、一体感はゼロ。「ぞれぞれ別々に準備してくっつけただけなんだろうなぁ」と思わせる内容でした。そもそも、スマート家電って、いろいろな家電デバイスが連携して、便利で快適な世界を作っていくのが目的なはず。にもかかわらず、パナソニックはやはりそれぞれの事業部がバラバラでどこも「スマート」だとは感じなかったなぁ。きっと、各事業部とさらには日本と欧州という隔たりもあって、一体感のない記者会見になってしまったのだと思われます。
次の時間帯にソニーが記者会見を開くこともあり、またパナソニックの内容につまらなさを感じたせいか中座する人が続出。最後までいた知り合いによると、ほとんど空席になってしまったようでした。
ソニーは時間の関係で中座してしまったのですが、平井一夫CEOになって、ソニーグループとして連携の取れた記者会見になっていたと思います。会場はIFAの展示ブースでしたが、Xperiaを中心に様々な機器をつなげていくというスタンスは、ソニーならではであり、今後に期待が持てそうな気がしてきました。
シャープは、説明会を展示ブース内で実施したのですが、プレゼン資料もなければ、マイク一本で担当者が声を張り上げるといったスタイル。まぁ、連日、ニュースにもなっており、派手なことはできないため、仕方のないことだとは思いますが、もうちょっと工夫して、きっちりとアピールしても良かったのではないでしょうか。
こうしてみると、やはりサムスン電子が抜きんでてプロモーションのうまさを感じます。単に技術力だけでなく、こうしたマーケティング活動の面でも、韓国メーカーのほうが一枚上手のようです。
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3.業界キーマンインタビュー
――ソニーモバイルコミュニケーションズ
Vice President、Creative Director 黒住吉郎氏
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「ソニーとしての総力戦。Xperiaで驚きを与えたい」
欧州最大の家電展示会「IFA」で、ソニーモバイルコミュニケーションズはXperiaの新製品を発表した。ソニーの完全子会社化で、Xperiaのラインナップはどうなっていくのか。Xperiaのラインナップ戦略を統括する、同社Vice President、Head of UX Product Planningの黒住吉郎氏に話を聞いた。
ーー新製品となる、Xperia T、Xperia TX、Xperia V、Xperia Jが発表になりました。いま、Xperiaはどのようなコンセプトで開発されているのでしょうか。
黒住氏
「Xperiaはスマホは単体で存在しえるものではなく、いろんなものとつながって存在する世界観となっています。簡単に、何も気をつかうことなく、ほかのものとどうやってつながれるか。つながることで、強いバリューを出すかが我々のミッションです。これは会社が中心となった話ですが、一方で、ユーザーの立場から見れば、どれだけ使って楽しいか、新鮮で面白い世界を提供できるか、という一言に尽きます。それがまずは入り口です。まだ、つなげられる機器は少ないですが、その中心にXperiaが存在しています。
つなげる時のわかりやすさという点でNFC(非接触IC)が重要となってきます。新製品のなかでも、 Xperia T、Xperia TX、Xperia VにはNFCが搭載されています。今後は搭載モデルを中価格帯や低価格帯までに広げるつもりです。今回、残念ながら、Xperia Jは非搭載となっています」
ーーエントリーモデルであるXperia Jに載っていないということは、コスト的にまだNFCは安くはないということですか。
黒住氏
「まだ、エントリーモデルとしてはコスト的に高いです。ただ、2013年以降、NFCは急速に広まっていきます。そのため、エントリーモデルでも搭載できるよう準備を進めています。
ただ、搭載する上で技術的に難しい面があるとすると、感度の部分。モデルにはよっては(本体背面のNFC設置部分に)スリットが入れて感度を保っています。初期のNFCモデルはまだ手探りの部分もあるのです」
ーーこれまで日本向けにはFeliCaを搭載してきましたが、そういった技術の経験は生かされていないのですか。また、NFCを強化していくとなると、日本向けはNFCとFeliCaの両方を載せるというかたちになりそうですか。
黒住氏
「FeliCaの経験も当然、NFCという部分では生きています。FeliCaとNFCとのコンボなどは模索中です。ただ、一般的に言えば日本向けは間違いなくコンボの可能性が高いと思います。普通のニーズとしてあるはずです。FeliCaはいい技術でありサービスと広まっています。一方、デバイス連携となるとNFCになってくる。これらは似て非なるものなので、コンボを積んでいくことになる。市場をみながら検討している段階。近々、早いタイミングで対応していきたいと思います」
ーーNFCというと、セキュリティエレメントをキャリアはSIMカードに搭載したがるし、一方でGoogleなどは端末においてほしいと思っているようで。セキュリティエレメントをどこに置くか、という点は答えが出ているのですか。
黒住氏
「ポリシー的なものもあり、オペレーター側によって考え方が違う。(相手によって)変えていなくてはいけないところもああるが、セキュリティを守るにはできるだけ一個の方がいい。どれにするかは減給できないが、ひとつにしてやっていきたい。オペレーターとのビジネスがあるので、そこは(相手に)合わせないといけない。
ヨーロッパのオペレーターによっても考え方が違う。そもそもセキュリティエレメントを載せてくれるなというところもある。NFCは発展途上というのもあるので、答えが出ていない。ヨーロッパのお客様に対しても、(NFCを生かした)なんらかのソリューションを提案していきたい」
ーー日本のおサイフケータイには「ここタッチしよう」というわかりやすいマークがありました。NFCもマークを刻印したりするのでしょうか。
黒住氏
「NFCもマークのロゴのようなものを貼るつもりです。ただし、剥がせるようにしています。FeliCaは業界として、刻印していたが、NFCはそこまでやっていない。
可能性としての話だが、NFCを内蔵しているかどうかがわからないので、そこまでいかないといけないと思っている。
ただし、デザインの面ではうるさくなってしまうのが気がかり。ただし、NFCは感度が厳しく、7ミリや10ミリの範囲に入れないと認識してくれない。場所がわからなく、何度もトライしなくてはいけないのはユーザーからすると不便なことでもある。ユーザーの満足度とデザインで比較すると、やはりユーザーの満足度を優先せざるを得ない」
ーーソニー・エリクソンからソニーの完全子会社に生まれ変わりました。環境に変化ができたのでしょうか。
黒住氏
「この半年、一年でソニーのなかでXperiaが中心になってきている。うれしいことでもあるが、難しくビックリしているところもある。
ソニーのなかでも Xperiaは期待されているようだ。ソニーでUXや商品戦略をしている鈴木国正がCEOになって、打ち合わせをしている。自分はソニーにあるUX商品戦略本部を兼務している状態。仕事の半分以上をソニーと一緒にやっている」
ーー商品開発に変化は現れましたか。
黒住氏
「今回、メディアプレイヤーのUIを揃えました。スマートとフォンとタブレット、Androidのウォークマンで、OSが共通なので、同じUI、UXを実現していこうということになりました。
実はVAIOも似たUI、UXにしています。メディア系でいうとアルバムもさくさくと動くようになった。同じことがほかのデバイスでもできる。このあたりは、実はソニーグループはタブレット、電話、ウォークマン、VAIOは別部門だったが、そんなのバカらしい、できるところからやろうということになり、まずはメディアプレイヤーの共通化から始めました。これは我々が中心となり、ソニーと協力しながらつくっています。
スマートフォンもタブレットも両方持っているユーザーは少なく、どこまでユーザーにとって価値があるかは未知数だが、お作法として、最低限やらなきゃいけない礼儀だと思っています。これがいままで、できていなかったのがなさけなかった」
ーー完全子会社化から、ずいぶんと短い期間で共通化ができましたね。
黒住氏
「これをこれをやり始めたのは(2012年1月の)CESのころから。やりますよ、絶対にやりますよ、という気持ちがここまで来た。私はソニーのなかでドン・キホーテなんですよ。やると言ったら絶対にやる。メンバーも協力して身を粉にしてきました。
もともとハードウェアのブランドだったWalkmanをXperiaで使うというのも、XperiaにWalkmanがあって当たり前という単純な発想。しかし、なんで、ソニーではできていなかったのか、という思いはある。メディアプレイヤーとして、音楽の楽しい経験を提供するなら、Walkmanで行きしょうということにようやく落ち着いた。
アプリの名前を揃えるだけではなく、エクスペリエンスもよくなった。サクサク感やFacebookとの連携においては、我々に一日の長があるのではないか。楽曲に対し、すぐにいいねを押せるようになっている。このあたりもやり始めると結構、大事な部分だったりする。
サウンドに関しても、製品投入のタイミングが早いXperia TとTXには非搭載となるが、Xperia Vには『クリアオーディオプラス』という機能が備わっている。オフにするとイコライザがかかるが、クリアオーディオプラスをオンにすると、ソニーが究極的にいい音だと思う音にしてくれる機能だ。
ここまで音にこだわっては他社はやらないだろう。音にずっとこだわってきたソニーとして、いい音というのは永遠の課題。
いかにオーディオとビジュアルでいい経験をしてもらうか。Walkmanのメンバーと一緒に議論を重ねてきた。
ヘッドホンでも新製品を投入している。MDR-1RとXperiaを組み合わせて使えば、ソニー史上最強の音が出る。これから、ソニーとしては魂を揺さぶる音というのを全社的に打ち出し、他社には絶対負けないように頑張っていく」
ーーこのヘッドホン、NFCが内蔵されているのですか。
黒住氏
「このヘッドホンとソフトウェアを組み合わせるとか、NFCでタッチして機器認証して、Bluetoothで連携するなど、これまでは考えられなかったです。(ソニーの完全子会社になって)この1年でやれるようになった。僕らにとってみると(自己採点で)0点だったのがようやく10点、20点になっている。ユーザーの期待に近づきつつあるような気がします。ようやく、(ソニーとの一体感という意味で)動きが出始めたと自信を持って言える気がします。
画質においても、次世代のブラビアエンジンや超解像という技術がある。次の世代では、どうやってスマートフォンにいれていくかをチャレンジしていきたい。音の次は映像へのこだわりも見せていきたい。
カメラもサイバーショットと一緒にやってきたし、これからも強化していきたい」
ーーカメラと言えば、前日にはサムスン電子がGALAXY Cameraを発表しました。また、ニコンもAndroid内蔵デジカメを発表しています。ソニーにも同様の製品を期待しちゃっていいんでしょうか。
黒住氏
「サイバーショットにAndroidを内蔵するのか、Xperiaがサイバーショット化するのかは、今後、考えていかなくてはいけないかも。ただ、ソニーからもExmorセンサーの新しいのも出ており、それらを積極的に検討していく。画質に関しても究極的なものを目指していくつもりです。そのあたりは、ソニーの宿命だと思っています。ただし、単に機能やスペックを積み上げても仕方がなく、最終的にはユーザーに喜んでもらえるものを目指します」
ーー今回、グローバル向けとして様々なXperiaを投入してきましたが、フラグシップモデルがどれかわかりにくくなったような気がします。サムスン電子であれば「GALAXY SⅢ」といったようにわかりやすいのですが、ソニーの場合はどうなのでしょうか。
黒住氏
「いままでのフラグシップはXperia Sでしたが、クリスマス商戦はXperia Tになります。フラグシップという定義は難しいですが、王道を行くデザインや質感、4.6インチの大画面、13メガカメラ、NFC内蔵などグローバルレベルの全部入りを、アークのデザインでまとめたものです。
一方で、日本でXperia GXとして売られるモデルのグローバル版であるXperia TXもマーケットにニーズに合わせて展開していきます」
ーー日本でXperia SXを買おうと思って予約をしてたんですが、なかなか買えず、1カ月経過してようやく家電量販店から連絡が来ました。チップセット不足は深刻なんでしょうか。
黒住氏
「待ってくれているユーザーさんには本当に申し訳ないと思っています。僕自身が思うには業界的に危機的レベルにある深刻さだと思います。
クアルコムとソニーは運命共同体ですが、やはり次世代に移行するのが大変だった。日本だけでなくグローバルで影響が起きている。
ただ、ソニーモバイルとクアルコムとはいい関係を築いており、なんとか解決策をさぐっている状態。我々に対して、最大限のことをしてくれていると思います。我々の場合はグローバルで展開していることもあり、(日本メーカーと比べると)いいポジションを確保できているのではないでしょうか」
ーー市場では、アップルとサムスンとの訴訟合戦が過熱しています。Android陣営であるソニーにも影響が及んだりしないのでしょうか。
黒住氏
「法的なことなので、公にはコメントできません。ただ、ソニーとしては、ノウハウや先進性、オリジナリティが十分に訴求できているので問題ないと思います。
スマートフォンの世界は複雑な技術が組み合わされていますが、自ら新しいものを作っていき、常に攻めの姿勢で商品開発をしていかないことにはふるい落とされてしまいます。攻め続けることが大事なのではないでしょうか」
ーーWindows Phone 8の準備は進めていたりするのですか。
黒住氏
「Windows Phone 8は、現時点ではないです。ただ、Xperiaの初号機であるX1は、WindowsMobileでしたし、マイクロソフトとはVAIOを通じて、いい関係にはあります。
いまの時点では、まずはAndroidで地盤を固めるつもりです。Xperiaという世界観で行くと、OSにこだわる必要はないですが、まずは地盤を固めることを優先させます。
ユーザーがいかによろこんでくれるか、いろんな機器につながるか、と言う点でWindows Phone8が候補にあがってくるなら、可能性はゼロではないかも知れません」
ーー1月のCESから半年以上が経過して、ソニーに一体感が出てきました。次の半年はどうなっているでしょうか。
黒住氏
「CESでは準備が整ったと申し上げたのですが、ここにきて、ようやくその成果が確認できるようになりました。メディアプレイヤーが異なるデバイスでも共通のUIで使え、技術としてはクリアオーディオプラスというものができてきました。
プレイメモリーズモバイルという機能では、サイバーショットで撮ろうとしているものをXperiaでリモコン的に遠隔操作できます。まさに、ハードとソフトが融合しつつあるのです。
次のステップとしては、さらにユーザーに驚きを与えたい。ユーザーに対して「あ、ここまで来たか」という提案していきたい。手にとって持ちたい、聞きたい、触りたい、見たい、遊びたい、写真を撮りたいといったような、ソニーでしかできないというものを提供しないといけないと思っています。
ソニーグループとしてのまさに総力戦。デバイスから小型化技術、サービス、動画や音楽、ゲームなどのコンテンツなど。ソニーならではのマーケティングを提案してなくはいけないし、ソニーだからこそ、やらなくてはいけない。できると信じているし、 一生懸命、仕込んでいるところです」
■取材後記
黒住氏には何度か取材をしており、今回はCESから7カ月後に話を聞いたことになる。取材には広報が立ち会っていただけでなく、彼をサポートする有能な部下が二人つきっきりで帯同していた。
わずか半年ちょっとの間ではあったが、ソニーモバイルは急速にソニーとの一体感を深めてきたように思う。ソニーモバイルだけでなく、VAIOチームなどからも話を聞くのだが、これまで社内で「やりたい」と思っていながら実現できていなかったことが、ソニーモバイルの完全子会社化によって、着実に進歩しているように思う。スマートフォン、タブレット、パソコンや音楽プレイヤーの横串連携は、本来ならばとっくに着手できていなければいけないのだが、ここにきて、ようやくスタートラインにたった感じだ。アップルは遠く先の方にいるだけに、グループ力をあげて、ソニーらしさを見いだせていけば、今後、面白い存在になってくれるような気がした。
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4. 今週のニュース&リリース
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毎週、膨大に出されるキャリアやメーカーからのプレスリリースや、話題のニュース記事をピックアップ。ニュースとしての重要度とともに、キュレーションしていきます。
NTTドコモ、2012年 法人向け携帯電話・PHSサービス顧客満足度調査で4年連続第1位を受賞<重要度★★★★>
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2012/08/30_00.html?ref=nr_index
やはり、ドコモは法人では強いというのを実感。先日、法人担当の幹部に話を聞きましたが、法人市場ではMNPで戻ってくる企業も多いんだとか。法人のスマートフォン導入ではセキュリティ面でiPhoneがいいように見えますが、企業からヒヤリングしてみると、iPhoneじゃなくてもAndroidで十分なケースがほとんどなんだとか。また、生保や地方銀行など金融系もドコモががっちりと押さえているそうな。
「docomo NEXT series BlackBerry Bold 9900」の新色を発売
<重要度★★★>
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2012/08/31_00.html?ref=nr_index
スマートフォンブームのなか、BlackBerryもすっかり陰が薄い存在になってしまいました。セキュリティを大事にする法人でもiPhoneやAndroidで十分のようだし。街中でもBlackberryユーザーを見る機会が減ってしまった。ただ、キャリアからすると、blackberryは流れるパケット量が少ないので、ネットワークの負担が少なくて安心なんだけどねぇ。「うちはトラフィックが少ないから安心」と3年ぐらい前にRIM社が力説していたのが印象的でした。ドコモももっとblackberryを売っていたら、あんな通信障害、起きなかったかも。
クラウドサービス「au Cloud」と写真ブラウザ「guPix™」の連携について
<重要度★★>
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0830b/index.html
撮った写真はキャリアのクラウドよりも汎用性の高いところに保存しておきたいかなぁ。ソフトバンクモバイルとかFlickrをもっときっちり日本で提供してくれないのかしら。
NHN JapanとKDDI 「auスマートパス」で「LINE」アプリの提供を開始
<重要度★★★★>
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0830a/index.html
auスマートパスでLINEアプリって、どこまでメリットがあるのか見えないのだけど、やはり未成年保護という面でキャリアと組めたNHNジャパンはかなり良かったかも。またKDDIも勢いのある会社につばつけるのが本当に早いのがすてき。LINEは、昔のiモードを思い起こさせるだけに、スマホに特化したプラットフォームとして、まだまだ伸びしろは大きそう。
「auスマートパス」会員数200万突破記念「auスマートパス ありがとう! 200万人キャンペーン」について
<重要度★★★★★>
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0830/index.html
損益分岐点は400万契約らしいけど、この数字は順調に達成できそうな感じ。あとはiPhone向けサービスも何かしらはじめてくれるといいけど。ソフトバンクが対抗サービスを用意しているようだけど、どっちが便利で楽しいサービスになっているかは見ものだね。スマパスは特にコンテンツプロバイダにとても好評ですなぁ。スマホ時代の有料コンテンツのあり方を示してくれた。KDDI高橋誠さんはまだまだいろんな「サブスクリプションモデル」を考えていそうよ。
「au災害復旧支援システム」の全国導入について
<重要度★★★>
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0830c/index.html
この手のシステムは各社とも積極的に準備してほしいなぁ。あと、携帯電話とネットワークを組み合わせることで、ひとりでも多くの命が助かるようなシステムも開発してほしい。生き埋めになったら、自動的に自分の居場所を知らせてくれるとか、まだまだやれることはあるような気がする。
「au ID」、「auかんたん決済」のサービス拡充について
<重要度★★★>
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0903a/index.html
au IDは、課金手段として、いろいろ便利になっていきそうな感じがする。KDDIの3M戦略は、CATVのセットトップボックスといい、将来が楽しみ
「PT003」の発売
<重要度★★>
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0903/index.html
フィーチャーフォンで地味だけど、結構、この市場はなめてかかっちゃいけないかも。年間4000万台売れる市場で6割がスマホだと、残りは1600万台。この市場をいくつのメーカーでわけあうのか。すでに新機能も少なく、開発コストもかからないから、案外、おいしい市場なんじゃないかな。
ソフトバンクモバイル、iPhone向けアプリ「かざしてGO!」を提供開始
<重要度★★★>
http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2012/20120904_01/
かざしてカメラで撮影アプリは便利そうな半面、「かざすと便利」ということに気がつかせるのが大変だし、いちいちアプリを立ち上げるのが面倒というのがある。「セカイカメラ」もすごい盛り上がったけど、一瞬だったし。そういった面ではNFCのほうがまだ可能性はあるのかも
ヤフードームに「HKT48ルーム」がオープン!
<重要度★★>
http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2012/20120830_04/
結構前から準備していたらしいんだけど、指原が移籍していくるってことで、指原人気に便乗しようと、発表のタイミングがずれたらしい。でも、移籍やメンバーの突然の脱退など、それにあわせて設備を変えるのって、結構大変じゃないのかな。来年もあるのかな。
「燃えろ!VV終盤戦キャンペーン」、9月1日より開始!
<重要度★>
http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2012/20120830_03/
福岡のホークスファンは、ソフトバンクをいっぱい契約しないといけないから大変だよねー。
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石川 温
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