三味線弾き のコメント

仕事帰りに『卑怯者の島』をゲットし、落ち着いたら真っ先に読もうと思ってたのに、フロに入った隙を突かれて、小3と小6のクソガキ共に先を越されて読まれてしまいました(x_x)

以下、一部ネタバレが含まれるので、未読の方はスルーでおねがいします。

遠いようでべったり密着した、人の生死とその意味、善と悪、卑怯と勇敢、理想と現実、故郷と戦場、理性と野性、建前と本音、実力と運、非情と有情、男らしさと女らしさ、...人の心のあらゆる矛盾と葛藤が、ここまで正面から直接的に表現された物語は、見たことがありません。
物語ゆえに、テーマが収束方向ではなく(意図的に)良い具合に発散しているので、本来理性的でない人間の本性と相まって強烈な心理描写となり、その共感がかえって逃れられない現実感を誘い出します。決して「戦争」や「時代」などの枠内に閉じ込めて語れるものではないと思うほど、普遍的で濃密な人間物語でした。
間違いなく、数多の真実を鋭く突いたフィクションの最高傑作だと思います。こんな圧倒的な物語を見せつけられたら、現代社会で小林よしのりに逆らえる者はいません(笑)

印象に残ったシーンが沢山ありすぎて困ります(笑)
緻密に描かれた生々しい戦闘シーンでは、白黒毛唐が惨く殺される描写に興奮し、血が沸き立ちました。もし日常生活でも戦場でも襲われることがあれば、斯く戦って一人でも多くの敵を殺し、ひょんと死にたいものです。ただ、現代の戦争では、自民党の幼稚な説明とは真逆に、非熟練でも子供でも人殺しが可能なハイテク兵器が使われるので、物語は何も残らないかも知れませんね。
最も怖かったのは、P375の「ありがとう 神平くん。」という繊細で絶妙な美奈の表情。まるで第一級のホラーやサスペンス映画のPVで採用される象徴的なワンカットのようで、心底震え上がりました。
衝撃の最終章では、一人ではケツすら拭けない赤ん坊のような、一人では生死すら意識できない幼稚な現代人の卑怯さが、自分のことに思えて身震いしました。神平は終戦後も、生を遂げるために死を求め、最後の最後に仲間の英霊のもとに行ったのでしょう。人の生命とは死を背に初めて定義される物語なのでしょうね。

No.80 115ヶ月前

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