仕事が終わるとまっすぐに家に帰り、パーソナルコンピューターの前に座して動かず、インターネットを開いては情報を収集して社会問題に向き合い、休日はどこへも出掛けず、誰とも会わずに、パーソナルコンピューターの前に座して動かず、インターネット上で見知らぬ誰かと匿名を条件に議論を交わして社会を批評している人と、仕事がハネたら同僚と飲み屋へ行って馬鹿話をしながら酒を飲んで大笑いをし、休日は恋人とデートへ出かけ、映画を観たり、キスをしたり、屁をこいたりしながら遊び歩いている人は、どちらが人として真っ当なのでしょう。 おそらく前者の人から見たら、後者の人は嘆かわしい愚民であるのでしょう。 そんな愚民と比べて、意識の高い自分は何て立派なのだろうかと心底から思うことでしょう。 しかし、普段は恋人や愛人やセフレと乳繰り合って、ヘラヘラと薄ら笑いを浮かべているチャラついた猿野郎も、実は深く思想をしていたりするという事実を知ってしまったら、前者のネット中毒者はアイデンティティークライシスに陥ることでしょう。 人は誰しも評価されたいし、認められたいし、褒めてもらいたいものです。 それなのに、実生活で満足のいく評価もされず、誰からも承認されず、褒め言葉をかけてくれる人もいないと、心がざわつきます。 俺はネットを通して政治を監視しているのに。 俺は仕事でこんなに稼いでいるのに。 俺の素晴らしい現場報告は誰もが感涙に咽びながら傾聴すべきなのに。 俺じゃない奴の意見が褒められ、持て囃されるなんておかしいのに。 俺の意見の方が優れているのに。 あえて小林よしのりを挑発してみせる俺は凡百なよしりん信者とは一線を画している筈なのに。 そうだ。 俺はもっと評価されるべきだ。 認められるべきだ。 褒められるべきだ。 そうあるべきなのだ。 そうして欲しがれば欲しがるほど、求めれば求めるほど、遠のいてゆく妙。 すぐそばに自分のことを認めてくれる人がいないのをネットで埋め合わせようとしても心は渇くばかりです。 心が渇くと、評価されている人、承認されている人、褒められている人へ敵愾心を燃やしてしまうのでしょう。 成功した人や失敗した人を見境なく批判して優越感に浸りたいのでしょう。 目立つ人や弱っている人を叩いて、鬱憤を晴らしているのでしょう。 虚無感を誤魔化す為に差別という娯楽に興じているのでしょう。 しかし、それらを繰り返せば繰り返すほど、求めているものからは遠ざかってゆきます。 やっぱり女に惚れられるような男の言葉じゃねぇと誰も聞く耳を持ってはくれないと、つくづく思うのであります。 心が渇いている男はきっとモテないでしょう。 モテない男が本来とるべき行動は、渇いた心を潤わせる努力、つまり人に信頼される努力をすべきなのに、そういう奴に限って、自分の心の渇きに無自覚で、自分を信頼しない周囲の人間こそが腐りきっていると思い込み、世間を呪い、手前勝手な選民意識をより強固なものにするから厄介です。 なんてなことを漫然と考えて、サッポロ黒ラベルを飲んでいる夜更け。
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仕事が終わるとまっすぐに家に帰り、パーソナルコンピューターの前に座して動かず、インターネットを開いては情報を収集して社会問題に向き合い、休日はどこへも出掛けず、誰とも会わずに、パーソナルコンピューターの前に座して動かず、インターネット上で見知らぬ誰かと匿名を条件に議論を交わして社会を批評している人と、仕事がハネたら同僚と飲み屋へ行って馬鹿話をしながら酒を飲んで大笑いをし、休日は恋人とデートへ出かけ、映画を観たり、キスをしたり、屁をこいたりしながら遊び歩いている人は、どちらが人として真っ当なのでしょう。
おそらく前者の人から見たら、後者の人は嘆かわしい愚民であるのでしょう。
そんな愚民と比べて、意識の高い自分は何て立派なのだろうかと心底から思うことでしょう。
しかし、普段は恋人や愛人やセフレと乳繰り合って、ヘラヘラと薄ら笑いを浮かべているチャラついた猿野郎も、実は深く思想をしていたりするという事実を知ってしまったら、前者のネット中毒者はアイデンティティークライシスに陥ることでしょう。
人は誰しも評価されたいし、認められたいし、褒めてもらいたいものです。
それなのに、実生活で満足のいく評価もされず、誰からも承認されず、褒め言葉をかけてくれる人もいないと、心がざわつきます。
俺はネットを通して政治を監視しているのに。
俺は仕事でこんなに稼いでいるのに。
俺の素晴らしい現場報告は誰もが感涙に咽びながら傾聴すべきなのに。
俺じゃない奴の意見が褒められ、持て囃されるなんておかしいのに。
俺の意見の方が優れているのに。
あえて小林よしのりを挑発してみせる俺は凡百なよしりん信者とは一線を画している筈なのに。
そうだ。
俺はもっと評価されるべきだ。
認められるべきだ。
褒められるべきだ。
そうあるべきなのだ。
そうして欲しがれば欲しがるほど、求めれば求めるほど、遠のいてゆく妙。
すぐそばに自分のことを認めてくれる人がいないのをネットで埋め合わせようとしても心は渇くばかりです。
心が渇くと、評価されている人、承認されている人、褒められている人へ敵愾心を燃やしてしまうのでしょう。
成功した人や失敗した人を見境なく批判して優越感に浸りたいのでしょう。
目立つ人や弱っている人を叩いて、鬱憤を晴らしているのでしょう。
虚無感を誤魔化す為に差別という娯楽に興じているのでしょう。
しかし、それらを繰り返せば繰り返すほど、求めているものからは遠ざかってゆきます。
やっぱり女に惚れられるような男の言葉じゃねぇと誰も聞く耳を持ってはくれないと、つくづく思うのであります。
心が渇いている男はきっとモテないでしょう。
モテない男が本来とるべき行動は、渇いた心を潤わせる努力、つまり人に信頼される努力をすべきなのに、そういう奴に限って、自分の心の渇きに無自覚で、自分を信頼しない周囲の人間こそが腐りきっていると思い込み、世間を呪い、手前勝手な選民意識をより強固なものにするから厄介です。
なんてなことを漫然と考えて、サッポロ黒ラベルを飲んでいる夜更け。