na85 のコメント

>>65
 徳川家斉の支配した文化文政年間は江戸期の中でも江戸文化が最も成熟して花開き、大奥から末端庶民に至るまで好況を享受できたエネルギッシュで幸福な時代でした。貨幣の質を落として流通量を増やし、幕府や各藩が行った公共事業によって経済が活況を呈し、カネが庶民にまで回ったことで江戸っ子は「銭は天下の回りもの」「宵越しの銭はもたない」という刹那的な行き方もできました。またこの時期は気候も安定したため米の収量も増えて農村人口も増え、二男三男は江戸や大坂に流入して都市人口も増えました。しかしそんな人口増も吸収できるくらい江戸や大坂の景気は良かったわけです。
 江戸期の他の好景気時代としては、元禄時代は徳川綱吉の下で勘定奉行を勤めた荻原重秀が好況の立役者となり、田沼時代は徳川家治の側用人田沼意次が実務を執りました。しかし文化文政時代には目立った政治の実務者がいないのです。おそらく家斉は過去の良き時代の政策に倣って実行したのであり、現在一般に通用している悪評ほど無能でなかった可能性があります。家斉には側室が40人いて53人子供をつくったとか、そういう一面的な部分のみを見て案愚と決めつけるのは如何なものでしょうか。
 ただし、現代日本においては、このようなケインズ政策を実行することは不可能となっております。まず現代日本は人口減少社会に突入しており、働いて稼いで得たカネを使う現役世代が減り将来の医療福祉の備えとして貯蓄を死守しようと構えるリタイア世代が激増しているため、政府が景気刺激しても死蔵されたカネが動かないのです。個人主義が浸透した現代と違って、江戸期においてなら都市部では講や長屋などの共同体で、地方では村落共同体で相互扶助が行われるため、自己責任でカネを死守する必要が無く、また平均寿命も短いため高齢者から現役世代への富の移転もスムーズです。
 次にグローバル経済の現代においては、死蔵されたカネを政府が借り上げるべく国債発行して公共投資をしても、流通貨幣量を増やしてもその効果は海外に流出してしまいます。さらに死蔵されて動かない富裕高齢者の貯蓄1400兆円を掠め取るべく米国からの度重なる構造改革要求があります。大企業の内部留保と株主の資産ばかりが積み上あって庶民にはトリクルダウンしてこないのに、輸出による好景気を盛んに喧伝して高齢者の貯蓄を投資に向かわせたり、TPPで国民皆保険を揺るがして外資の保険を買わせたりするわけです。鎖国で富の流出のない江戸期とはまったく事情が異なります。

 当時江戸庶民は世界一幸せだったが現代はどうか? na85

No.67 129ヶ月前

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