武藤 のコメント

最近、『環境先進国江戸』という本を購入しました。これを読むと実は江戸時代にも公害があり、その対処法も現代に通じていることがわかりました。江戸時代は再生可能エネルギーを使い、現代よりもはるかにクリーンな循環型な文明でした。
しかし、森林資源に依存する社会である以上はどうしても資源には限りがあります。例えば、貨幣製造に炭と坑道を支える坑木の為の木材を消費し遠方の森林を伐採することに繋がりました。鉄の製造の為に河川の汚濁、天井川発生の原因にもなり、タタラ製鉄が盛んな中国山地では禿山だらけになってしまいました。
江戸中期には農村にもプロト工業化が進み、経済発展しましたが、それによる環境汚染は深刻でした。そのことを元禄期に思想家の熊沢蕃山、山鹿素行は指摘しています。曰く、新田開発に労力がとられ、治山治水の面で古田の管理がおろそかになり用水不足などが起こる。そのため過度の開発はするべきではないと。
この状態に対し幕府は「諸国山川掟」と呼ばれる触れを諸国の代官に発し、草木を根こそぎ掘り取ることの禁止、川上で木のない山には苗を植えることなど近畿地方を中心に発令しました。熊沢蕃山も伐採を辞め、稗をまいて鳥を呼ぶこと、杉、檜の植林を提唱しています。他の藩主も留木を指定したり、留山を設け山林への立ち入り制限をしたりしました。
結局は規制と林産物の需要拡大による価格の暴騰などにより、江戸中期に見られた略奪的伐採はなくなり、朝鮮半島のごとく禿山を防ぐことに成功したのです。
公害に対する問題は時代を問わずあった。しかし、江戸時代は森林破壊による悪影響を察知し、適切な処方をし問題を最小限に食い止めることができた。その江戸の知恵を明治に入って生かすことができず、足尾銅山事件を招き、戦後には水俣病などの公害を生んでしまいました。さらに現在進行形で「原発事故」を招いている。経済成長と自然保護のバランスをうまく調和していた江戸の知識を現代にも生かしていきたいと思いました。

No.272 128ヶ月前

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