また、世の中を見回せば分かりますが、能力のある人物ほど、人格には多少以上の問題がある方が多いのではないでしょうか。個性や才能は、容易に人を歪ませます。物事に対する拘りは偏執と紙一重です。平々凡々が一番良いというのは、皮肉でなくその通りだと思います。しかし、それら平凡人が大きな物事を引っ張ったり変えたりというのは、まず無理です。「平凡な英雄」なぞ、形容矛盾というものでしょう。ですから、ある人物の不始末が生じた時は、総合的に見てその処遇を決めなければならない。その基準は人によって違うでしょうが、碌な議論もなく空気だけで人を抹殺するのは違うでしょう。私には、森喜朗の失言は、汚職やセクハラのような致命的な問題であるとは思えません。もうオリンピックまで猶予がないということも鑑み、今回は「しかめ面で許すべき」だったのではないでしょうか。

話は変わりますが、天然痘ワクチンの祖と言われるジェンナーは、使用人の子供に牛痘を打つという人体実験をしました。しかし、彼のその歪んだ情熱が多くの人を救ったわけでして、人物の評価というものはとても難しいのだということを知らしめてくれます。