Dr.U のコメント

<情報共有/新型コロナの死者数について>

 こんにちは、ウサギです。以下、やや込み入った文章で申し訳ございません。

 2月15日現在、一般に公表されている新型コロナの死者数は7千人弱ですが、こうした数値のほとんどは「直接死」である、と主張するコロナ脳の方々がいるようです。その根拠は、厚労省が公表している『人口動態統計』に示されたコロナ死者数のようです。
(参考資料:厚労省「人口動態統計/令和2年9月分/p.33」:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/m2020/dl/all0209.pdf)
 この資料の33頁の一番下に、新型コロナで亡くなった人の数(1~9月)は1481名とあります。この数は、厚労省の担当者が、一般に公表されている同時期の死者数(1570名/東洋経済Onlineより)を《精査》した結果の数字です。そうしますと1570名と1481名の差は89名。割合にして5%ほどの人が《精査》によって除外されたわけです。そしてコロナ脳の方々は、残った95%は直接死の人である、と主張します。

 さて、御存知の通り、一般に公表されている新型コロナの死者数には、大きく言って次の三つのタイプの死者が含まれています。

①新型コロナの症状のみによって亡くなった人(いわゆるインフルエンザでいうところの直接死)。
②もともと基礎疾患を持っていて、新型コロナとの組み合わせによって亡くなった人。
③新型コロナの症状は出たことがなく、死亡の原因は新型コロナと関係ないガンとか自殺とかであるのが明らかなのに、死亡時などにPCR検査で陽性と出たせいで無理やりコロナ死にカウントされてしまった人。

 さてそれでは、なぜコロナ脳の方々が、一般公表数の95%が直接死であると主張するかと言うと、上の「人口動態統計」に記されたインフルエンザなどの他の病気の死者の数字が、直接死の数字であるから、という理由のようです。確かに、上の資料の同頁・中段に記されたインフルエンザの死者数(令和元年の3259名という数)は、インフルエンザの直接死の数です。コロナ脳の方々は、これをもって、一番下のコロナ死1481名も、直接死だと主張するわけです。
 一見、そうなのかと思ってしまうかもしれませんが、そんなわけはありません。まず、常識から考えていきましょう。周知のとおり、新型コロナで亡くなった方のほとんどは60歳以上の基礎疾患を持った高齢者の方々です(資料:https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20201208.html)。であるとすれば、当然、上の死者数の内訳の①②③のうち、一般に公表された死者数の大多数は②であるに決まっています。公表された死者数の95%が①であるわけがないのです。コロナ脳の方は、常識をもって総合的に判断することが苦手なのでしょうね。
 そうすると、《精査》されたコロナ死1481名(2020年1月〜9月)のうち、どれくらいが①の直接死に当たるのか、という問題ですが、インフルエンザの①と②の割合が3対7くらいですから、仮にこれをもとに推測するなら、1481の30%ということで、500名弱くらいが①の直接死ということになりそうです。(ちなみにアメリカでは、公表されているコロナ死者20万人のうち、①の直接死はたったの6%に過ぎない、というニュースが出て大騒ぎになりましたね。)
 それでは新コロとインフルの年間の死者数を、直接死で見てみるとどうなるでしょうか。インフルエンザの令和元年の直接死が約3000名です。そして2020年のコロナ死の直接死は、一般に報告された約5000名の30%ほどだと推測されますから、1500名くらい、ということになります。そうすると、コロナ君とインフル君を年間の直接死の数で対決(?)させるなら、1500名対3000名で、コロナ君はダブルスコアで大負け、ということになります。(関連死で対決させるなら5千名対1万名で、やはりダブルスコアでコロナ君の負け)。

 最後に、それではなぜ上の厚労省の『人口動態統計』で、インフル他の病気の死者数は直接死なのに、コロナの死者数だけが直接死だけでない数字、つまり上の①直接死と②を足した数字が記されているのだろうか、という点ですが、次のようなストーリーが考えられます。

「厚労省は、各地方から報告された新型コロナ死者の数を《精査》しようとしたが、おそらく、そのときに上の③の、明らかに誰が見てもコロナ死ではないと納得できるようなケース(自殺とか交通事故とか)だけを差し引いて、残りの数について、そのうちのどれが①に相当し、どれが②に相当するかは、判断を避けた。なぜなら、膨大な数の死亡データから①と②を分けるのは大変な作業であるし、それ以上に、もし実際に精査をしてみて、その中の①直接死に当たる数がとても少なかった場合(上の1~9月の報告書で直接死が500名弱となった場合/あるいはアメリカみたいに6%くらいに過ぎなかった場合!?)、一般に公表されている1570名というコロナ死の数とのギャップが大きすぎて、世の中のコロナ脳の人々から「コロナ死を過小評価するのか!」と、見当はずれの非難・バッシングを受けるのではないかと、担当者たちが危惧したからである。彼らは、世間の非難をおそれて、ひとまず速報値から③の数を差し引いただけの数を書いて、後は精査は困難である、という《逃げ》を打ったのである。役人というのは、そういう姑息な生き物である。」

 ここで、この「精査」についての、2020年6月付の読売新聞のインタビューにおける、厚労省の担当者のコメントを紹介します。

「厚労省は(2020年6月の)12日現在、『新型コロナウイルス感染症の死亡者』を922人と発表している。都道府県のホームページ上の公表数を積み上げたといい、この死者数をWHOに報告している。」
「一方で同省は、新型コロナによる死者だけでなく国内のすべての死亡例を取りまとめる『人口動態統計』を毎年公表している。同統計は医師による死亡診断書を精査して死因が分類されるため、新型コロナの死者は現在の公表数よりも少なくなるとみられる。」
「国として二つの『死者数』を示すことになるが、同省結核感染症課の担当者は『現在の公表数についての判断は自治体に任せており、定義が異なっていることは承知している。現在の数字は速報値、目安として捉えてもらいたい。統一された基準でのウイルスによる死者数は、人口動態統計で示される』と話している。」

(https://www.yomiuri.co.jp/national/20200614-OYT1T50084/?fbclid=IwAR2FPcLuW4QVQmeq7a0Qrc1y7on17fOZyJlF7PvHVc9mvnm8CqeDE3fFWVk)

 …このインタビュー記事のポイントは、最後のところの『統一された基準でのウイルスによる死者数は、人口動態統計で示される』という厚労省の担当者のコメントです。お分かりいただけるでしょうか。このお役人は、新型コロナの死者については、「統一された基準で」示すと言っているだけで、「インフルエンザなど他の病気と同様に直接死で」とは明言していません。このあたりの言い回しが、頭のいい役人だなぁと思います。あとで「コロナだけが直接死の数字ではないのはおかしい!」と、非コロナ脳の人たちに文句を言われても、「人口動態統計の死者数をすべて直接死で示すという規定はございませんので…」などと言い逃れするのでしょう。ああ、官僚(笑)。
 
 そういうわけで、新型コロナ<季節性インフルエンザ、という事実は、まったく変わりありません。このところコロナ脳の人たちは、国内外の資料・論文などを、ろくに中身を検討することなく都合よいところだけ引っ張ってきて「それ見たことか」とやりますので、ご用心、ご用心。
 以上、ウサギでした。

No.215 39ヶ月前

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