希蝶 のコメント

 非常にぎりぎりになってしまいましたが、今号の感想です。「コロナ論」を一読した感想も兼ねます。

 最後のシジフォスの労働の話にぐっときました。シジフォスの労働というと無駄な努力というたとえとして用いられることがしばしばで、あるいは、「モーニングショー」あたりの論理だと、「だからこそ無駄でもPCR検査をしないよりはましだ」という話になるのでしょうが、自分にしてみれば、そういう一見無意味と思える同じ行為の繰り返しが文明を進歩させ、人間をすこしだけでも一歩前へ進ませているのではないか、というふうに思います。人は空気がないと生きられないけれども、頭を鍛える栄養がないとより深く生存することはないのだろう、シジフォスのしていることはそういうことなのだろうと思うのです。思想とは波のように幾たびも押し寄せるものでなければならない、と。
 忌憚なく述べると、この本の内容は、今までライジングやSPA!・FLASHなどで読んできたことの繰り返しでもあります。しかし、こうして繰り返し何度も唱えてゆかないと、空気のような「電波」には勝てず、一般に「流布」され、「伝播」されることはないのだろう、人の頭の中に浸透することはないのだろうと思います。

 本にはタイムラグがあり、同人誌やゲラ刷りでもない限り、即時性はなく、放送に比べてハンディキャップがあるのは仕方がないことです。でも、(録画でもしない限り)一度きりの空気のような放送に比べると、内容が残り、発言の責任も増すのだろうと比較します。空気のように見えないけれども、人を縛る不定型なものではなく、書籍という形として後世に残るものであることを期待し、望みます。新たな「コモンセンス」とならんことを。私は家畜にはなりたくはないです。

 木蘭さんの方の感想は、ルクセンブルクの例がとても分かりやすかった、というところです。それこそ、コロナウイルスを封じることの方がシジフォスの労働の「無価値な部分」にあたるのではないのでしょうか。また「コロナ論」の内容にも触れてしまいますが、ウイルスという一見人間にとって脅威で、害悪としか見えぬものが、人間を進化させ、文明を発達させてきたわけで、ただ恐怖するだけでは人は退行し、猿にもどるだけのような気がします。岡田・玉川らはその類型なのではないのでしょうか。
 それとも、彼らは「猿の惑星」でも求めているわけでしょうか。人間は退化し、猿が文明を発展させる世の中がスタンダードで、この世の運命だと思いこんでいるわけなのでしょうか。

 いい加減、これも何度も記しますが、こんな騒ぎが一刻もはやくおさまり、みんなが正気にもどって、皇室とか憲法とか、もっと人間の実存にまつわる別の話題が世間一般で取り沙汰されるようになって欲しいです。

 今回はすこし疲れているので、ここまでにしておきます。それでは次号を期待します。本日発売のSPA!も。
 

No.233 51ヶ月前

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