本日(8月22日。本当に月日のたつのははやい)の木蘭さんのブログ、「針でエアコン病と戦ってます」を読んで。 自分も、頸の筋をよく寝違えることがあり、針治療を利用していたことがあります。あれは保険がきかないので、料金はかなり高いのです。でも、非常に効能があります。 冷房病にも効くのだとすると、東洋医学も決してレベルが低いわけではないわけですね。免疫という言葉を、古代の東洋人は知らなかったとしても、経験として感知していたのかな、と思いました。 東洋医学ということで、またまたあんまりライジングの内容や感想とは関係ないけれども、奈良時代に天然痘がはやったことがあり、その時に時の政府(太政官)が、どのようなお達しを諸国に発していたのか、参考までにあげてみます。 以下は天平9年(737年)6月26日の太政官符の内容で、これは同年6月に出された典薬寮の勘文に基づくもので、カレーさんのホームページの掲示板にも投稿したものですが、この発狂している世の中を見ていると、まだまだ足りないのでは、と思うので、ここにもあげます。上から目線のところがありますが、そこは大目に見て下さい。 かなりレベルが高いです。 太政官符東海東山北陸山陰山陽南海等道諸国司 疫病治療法および禁ずべき食物等のこと、七カ条 1. 今回の疫病は赤斑瘡という。発熱時の症状は瘧(おこり)に似ていて、発熱後三四日、あるいは五六日で発疹し、瘡(吹き出物)の出る期間も三四日続く。患者の全身は焼けるように熱く、冷水を求めるが、決して飲ませてはならない。 瘡が出終わると熱も引くが、下痢が併発する。治療しないと出血する。出血は発病当初の場合もある。併発する症状は4種類ある。咳・嘔吐・吐血・鼻血である。これら合併症よりもむしろ下痢に注意すべきであり、以下のような治療を加えねばならぬ。 2. 布・綿で腹・腰を巻き、必ず温かくしておく。冷やしてはいけない。 3. 百姓たちはどうせろくな寝具もないだろうが、患者を地面に寝かしてはならない・床に敷物を敷いて寝かせるように。 4. 重湯や粥や粟汁は温かければ勿論、冷えても良いから与える。鮮魚・冷肉・果物・生野菜はいけない。特に生水・氷はかたく慎むように。下痢を起こしたら、韮や葱を煮て、大量に食わせると良い。血便や乳状便が出たら、もちごめの粉と米粉を混ぜて煮、一日に二三度飲ませる。 下痢が止まらなければ、五六度に増やす。もちごめやうるちの乾燥米で、粥を作ってもいいが、その場合も必ず細かく砕いてから粥にするように。 5. およそこの病気は食事を嫌がるものだが、無理しても食事させなくてはならない。また海松(みる)を炙ったものや、岩塩ではなく粉にした塩をたびたび口に含ませると、口や舌が荒れても、結果が良いようである。 6. 恢復後も二十日間は鮮魚・冷肉・果物・生野菜をとってはいけないし、生水・水浴・房事のたぐいや、風雨の中を歩いたりすることも慎むように。もしこの注意を守らないと必ず撹乱になって下痢を再発する。 これを勢発・労発というのだが、そうなったら、愈跗(ゆふ)・扁鵲(へんじゃく)のような中国古代の名医を連れてきても手遅れである。二十日過ぎれば魚も肉もいい。ただよく炙ってから食べる。乾し鮑・堅魚(なまりぶし)・乾肉のたぐいもいいだろう。しかし、鯖や鯵はたとえ干物でも止めておくように。年魚(あゆ)もいけない。蘇(乳製品)・蜜・豆腐などはいい。 7. およそ疫病を治そうと思ったら、丸薬・散薬など(インチキなもの)を求めて飲んだりしてはならない。もし熱が引かなければ、人参湯だけは飲んでもよい。 この四月以来、平城京・畿内はことごとく疫病に臥せっており、「死亡者」が続出している。諸国の百姓も定めて被害甚大だろう。よって以上の如く、注意を箇条書きにして諸国に伝達する。 この官符本文は到着次第国衙で写し取り、本文は郡司の主帳以上1人を使人としてただちに隣国へ送付し、留滞させてはならぬ。また国司は所管の国内を巡行して百姓にこの内容を告示せよ。 もし百姓のうちに重湯や粥にする米のない者がいたならば、国司は正税の倉を開いて賑給(しんごう)し、その使用量は記録して太政官に報告せよ。 なお、この官符は太政官の発行した正文であるから、官印を押しておく。官符到着次第、実行せよ。 …以上なんですけれども、こういうのを科学的態度というのではないのでしょうか?東洋の古代の医学をばかにしてはならないと思います。知事が勝手に緊急事態宣言を出そうとしたり、ガイドラインを示したり、変てこなステッカーを作ったりするのとは雲泥の差でしょう。 ただし、一般農民がこうした治療法に積極的に取り組み、効果をあげたかというと、話が怪しくなって来て、当時の天候不順・凶作といった情況もあり、うるち米・蘇密などは、貧しい農民にとって入手しがたかったのではないか、と言われています。いちおうつけ加えておきます。
チャンネルに入会
フォロー
小林よしのりチャンネル
(ID:22136524)
本日(8月22日。本当に月日のたつのははやい)の木蘭さんのブログ、「針でエアコン病と戦ってます」を読んで。
自分も、頸の筋をよく寝違えることがあり、針治療を利用していたことがあります。あれは保険がきかないので、料金はかなり高いのです。でも、非常に効能があります。
冷房病にも効くのだとすると、東洋医学も決してレベルが低いわけではないわけですね。免疫という言葉を、古代の東洋人は知らなかったとしても、経験として感知していたのかな、と思いました。
東洋医学ということで、またまたあんまりライジングの内容や感想とは関係ないけれども、奈良時代に天然痘がはやったことがあり、その時に時の政府(太政官)が、どのようなお達しを諸国に発していたのか、参考までにあげてみます。
以下は天平9年(737年)6月26日の太政官符の内容で、これは同年6月に出された典薬寮の勘文に基づくもので、カレーさんのホームページの掲示板にも投稿したものですが、この発狂している世の中を見ていると、まだまだ足りないのでは、と思うので、ここにもあげます。上から目線のところがありますが、そこは大目に見て下さい。
かなりレベルが高いです。
太政官符東海東山北陸山陰山陽南海等道諸国司
疫病治療法および禁ずべき食物等のこと、七カ条
1.
今回の疫病は赤斑瘡という。発熱時の症状は瘧(おこり)に似ていて、発熱後三四日、あるいは五六日で発疹し、瘡(吹き出物)の出る期間も三四日続く。患者の全身は焼けるように熱く、冷水を求めるが、決して飲ませてはならない。
瘡が出終わると熱も引くが、下痢が併発する。治療しないと出血する。出血は発病当初の場合もある。併発する症状は4種類ある。咳・嘔吐・吐血・鼻血である。これら合併症よりもむしろ下痢に注意すべきであり、以下のような治療を加えねばならぬ。
2.
布・綿で腹・腰を巻き、必ず温かくしておく。冷やしてはいけない。
3.
百姓たちはどうせろくな寝具もないだろうが、患者を地面に寝かしてはならない・床に敷物を敷いて寝かせるように。
4.
重湯や粥や粟汁は温かければ勿論、冷えても良いから与える。鮮魚・冷肉・果物・生野菜はいけない。特に生水・氷はかたく慎むように。下痢を起こしたら、韮や葱を煮て、大量に食わせると良い。血便や乳状便が出たら、もちごめの粉と米粉を混ぜて煮、一日に二三度飲ませる。
下痢が止まらなければ、五六度に増やす。もちごめやうるちの乾燥米で、粥を作ってもいいが、その場合も必ず細かく砕いてから粥にするように。
5.
およそこの病気は食事を嫌がるものだが、無理しても食事させなくてはならない。また海松(みる)を炙ったものや、岩塩ではなく粉にした塩をたびたび口に含ませると、口や舌が荒れても、結果が良いようである。
6.
恢復後も二十日間は鮮魚・冷肉・果物・生野菜をとってはいけないし、生水・水浴・房事のたぐいや、風雨の中を歩いたりすることも慎むように。もしこの注意を守らないと必ず撹乱になって下痢を再発する。
これを勢発・労発というのだが、そうなったら、愈跗(ゆふ)・扁鵲(へんじゃく)のような中国古代の名医を連れてきても手遅れである。二十日過ぎれば魚も肉もいい。ただよく炙ってから食べる。乾し鮑・堅魚(なまりぶし)・乾肉のたぐいもいいだろう。しかし、鯖や鯵はたとえ干物でも止めておくように。年魚(あゆ)もいけない。蘇(乳製品)・蜜・豆腐などはいい。
7.
およそ疫病を治そうと思ったら、丸薬・散薬など(インチキなもの)を求めて飲んだりしてはならない。もし熱が引かなければ、人参湯だけは飲んでもよい。
この四月以来、平城京・畿内はことごとく疫病に臥せっており、「死亡者」が続出している。諸国の百姓も定めて被害甚大だろう。よって以上の如く、注意を箇条書きにして諸国に伝達する。
この官符本文は到着次第国衙で写し取り、本文は郡司の主帳以上1人を使人としてただちに隣国へ送付し、留滞させてはならぬ。また国司は所管の国内を巡行して百姓にこの内容を告示せよ。
もし百姓のうちに重湯や粥にする米のない者がいたならば、国司は正税の倉を開いて賑給(しんごう)し、その使用量は記録して太政官に報告せよ。
なお、この官符は太政官の発行した正文であるから、官印を押しておく。官符到着次第、実行せよ。
…以上なんですけれども、こういうのを科学的態度というのではないのでしょうか?東洋の古代の医学をばかにしてはならないと思います。知事が勝手に緊急事態宣言を出そうとしたり、ガイドラインを示したり、変てこなステッカーを作ったりするのとは雲泥の差でしょう。
ただし、一般農民がこうした治療法に積極的に取り組み、効果をあげたかというと、話が怪しくなって来て、当時の天候不順・凶作といった情況もあり、うるち米・蘇密などは、貧しい農民にとって入手しがたかったのではないか、と言われています。いちおうつけ加えておきます。