M.O のコメント

『マツコ&有吉 かりそめ天国』というバラエティで、有吉弘行が非常に得心のいく発言をしていました。
日テレの某男性アナがニュース番組の冒頭で、社会を元気づけるようなメッセージを発したことが大きな話題になり、それを踏襲するアナウンサーが増えているのだそうです。
それに対する有吉のコメント。
「別にお前に元気もらいたくはねーよ。アナウンサーはただ伝えてくれればそれでいい」
全くおっしゃる通り!
元気づけるようなメッセージは、アーティストやアスリートのような「見る者を元気づけるパフォーマンス」のプロか、もしくは現状を打開する力を持つ人間が発して初めてこちらは「よし、頑張ろう」と思えるもの。
本来は「ニュースを伝えるプロ」であり、自分で取材をしたわけでもなく、ましてや専門知識を語れる立場にない人間がメッセージを発したところで、シラケるだけです。
番組ディレクターから指図されたのだとしても、それはプロとして「個」として抗わなければならないと思う。
「それは自分の領分とは違う」と。
朝晩の大きな報道番組の看板キャスターであれば、抵抗してよい立場ではないでしょうか。

さらに言えば、ニュース原稿は取材で得られた「客観的事実」なので、そこに誤りがあればその責任は報道部にありますが、メッセージは極めて「主観的」な性格を帯びるため、それを聞いた視聴者の憤りの矛先はアナウンサーにも向かいます。
自分がそのような責任(本来アナウンサーとしては埒外である責任)を担ってしまっているという自覚が、彼らにはあるのでしょうか。
視聴者から「あんなこと言われたら、かえってムカつくんだよ」と言われたとしたら、彼らは返す言葉を持ち合わせているのでしょうか。
「伝えるプロ」として越境してしまったという感覚があるのでしょうか。

個人的には、マスコミや専門家は「本来の仕事」を全うして下さい、と言いたいです。
アナウンサーも報道記者も専門家も――当初は浮き足立つことはあるでしょうけど、「公」のことを考えれば「こうすべき」「これはやるべきではない」というのは判断が付くはず。
でも、視聴率やら知名度やら功名心といった「私」の要素が、うまいこと粉飾されるかたちで「公」とみなしてOKのような状況が出来上がっています。
まさに「公」が狂っている状況。
自己も含めて「疑い」の観点で客観視すれば正気を取り戻せるはずですが、それが「わやくちゃ」になってしまっていますよね。
そういった状況を端的に表現した有吉は、素晴らしいグッジョブだと想います。

No.86 54ヶ月前

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