希蝶 のコメント

 つづきです。
 話をもう少し発展させますが、山本有三の小説に『真実一路』があります。山本有三にしては珍しい群像劇なのですが、その中で、主人公の一人である少年の姉がある理由で、婚約が破談になってしまう場面があります。私はこの話を読んだ時、その男は何と卑劣で、男らしくない奴だ、相手に感じた思いは真実ではなかったのか、と思いました。その後で、姉弟の父親がなくなる場面があり、そのことを姉娘への遺言状で謝る場面があるだけに、一層そう感じました。
 今思えば、その婚約者はただ姉娘に騙された、としか感じなかっただけなのでしょう(しかし、姉娘の手紙をよんで、この人は何も知らなかっただけなのではないか、という想像力を働かせる心の餘裕はなかったのか、とも思います)。

 高木彬光先生の『破戒裁判』の中にも、主人公の被告人の元奥さんが、彼の出自を知ってしまった瞬間、子供を中絶してしまったという場面があり、どうして出自が異なると人間は非情で残酷なことができるのかと思い、そして、主人公が、「同じ人間ではないか」と言った人妻に心からの愛情を抱いてしまった気持ちが痛いほどよく分かりました。

 上記の話から、人間は「常識」とか「世間智」に囚われてしまうのかもしれない、とも今は思います。いざとなった時、どういう思想に縛られてしまうのかは、誰にも予測はつかないのではないのでしょうか。誰もそのような事態が起こりうる、なんてシミレーションなんて受けていないし、考えてもいないだろうから。
 コロナウィルスの話題になりますが、この前自分が図書館で借りていた本を居間で読んでいたら、父から「図書館の本なんてほかの人が触っているだろう」と言われました。その本はウィルスがはやる以前(年末)に借りたものなので、関係ない、とは言いましたが、ウィルスにかかってもいいんならしょうがない、みたいな返し方をしてきました。親も高齢になって気も弱くなっているのだろうと思いましたので、自分の部屋に本をもどしましたが、こういう考え方が被差別部落の思想の根本にあるのかも知れないです。
 俗に言う「けがれ」というのがそうなのかな。

 良い世間智や常識もあるけれども、悪しきものは「因習」と呼ばれ、そのことが皇室問題にも関わり、男系男子でないと駄目、女系も女性も認めるのは良くないと言ってているのではないか、と話を飛躍させますが、私は思いました。部落問題も皇室問題も、以前からよしりん先生が指摘されているように「血」の問題であって、それが時代にそぐわず、人間を縛る非情なものであるからこそ、弊害を生じているのだと言えるわけです。
 いつの常識か、時代が何を求めているのか、極論にとらわれないようにすること。そして番組内で言っていたように「長い目」で見ることも必要なのではないか、と。
 よくこの場でも記すことですが、「舟に刻して剣を求む」の愚は犯さないように、臨機応変に、思想をアップデートさせられるようにも努めたい、と今回のよしりん先生の記事を読んで、思いました。
 人間の思想には優劣はあるのかもしれないけれども、存在自体は平等である、と自分も信じたいです。血統がどうの、出自がどうのではなく、どう考え、何をおこない、その結果どうなったのか、まで含めて考えてゆきたいです。

 長々とすみません円。木蘭さんの方も、とても記したいことがあり、長くなりそうなので、また改めて記します。
(№19・20、さらに№23が言葉たらずだったので、補足し、改稿しました。もう少し落ち着いて、一息おいて文章を記すように気をつけます)

No.25 50ヶ月前

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