M.O のコメント

福島第一原発の事故における東電旧経営陣3人の刑事責任を追及する裁判。
民事ではないので、当時の法律や条令、指針などに反する部分があったかどうかが争点になるのだろうから、「あれだけ甚大な被害を出しておいて無罪!?」と感情的になってはいけないのだと思います。ただ、判決文を読んでみて驚いたところがありました。
「当時の法令上の規制や国の指針、審査基準は絶対的安全性の確保までを前提としていなかった」という部分。
えーーーーーっ! あれだけ世間に対しては「原発は安全」と強調していたのに、「絶対的安全性」は確保しなくてもよかったのか!
この一文、ひょっとしたら民事で国の責任を追及する根拠になりうるのでしょうか。

あと、津波の危険性について取りまとめた「長期評価」の内容が「合理性に欠ける」と判断され、よって安全対策を取らなかったのは「不合理とは言えない」との結論に到ったのも気になったポイントでした。
「長期評価」は専門家の間でも賛否が分かれる内容であるそうですが、行政の諮問会議で作成されたものです。
よって、司法がその内容を「合理性に欠ける」と評価すること自体はアリとしても、その指針に沿った安全対策をとる義務が「なかった」とまで言ってしまえるのかどうか。
市民感覚としては、行政側が作成した指針相当の文書が存在しているのだから、「絶対的安全性の確保」レベルにまでは到らなくても、何らかの安全対策を講じる義務はあったのではないか、と感じます。
もちろん法律ではないので、刑事責任の根拠としては弱いでしょうけど。

今回の一連の裁判、刑事責任を問うのは非常に困難なのだと判明した一方で、今まで明らかになっていなかった「当時の事情」が白日の下にさらされたという事自体に、大きな意義を見出すことができたと言ってよいと思います。
公的機関において、国は「絶対的安全性の確保」を前提としていなかった、指針として作成した文書も合理性に疑問の残るものだった、という事実が認定された、というのは重く受け止めるべきでしょうね。

No.42 64ヶ月前

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