>>59 大阪ダブル選については、自民党大阪府連の戦略の拙さがこのような結果を招いた、と私は考えています。 出口調査の数字がそれを物語っています。 維新支持層はほぼ100%の有権者が、当然のように維新サイド(松井一郎・吉村洋文)に投票しています。 一方、自民党支持層は、そのうち30%が松井一郎に、50%が吉村洋文に投票しています。 本来ならば自民党が推薦した柳本顕、小西祥一に入るべき票が、維新サイドに流れてしまったのです。 また、支持政党別の投票率は、自民党支持層は前回同様20%程度であったのに対し、維新支持層は前回の20%から40%程度に倍増しています。 全体の投票率は50%程度で、前回よりやや増加しており、その増加分がほぼ維新支持層だったと考えられます。 こうした数字を見ると、維新が自身の支持層の票を伸ばしつつ、相手の支持層の票をも奪ったということが分かります。 (以上、ABC朝日放送で報じられていたデータに基づきます) 何故、このような結果になったのか。 ここから先は私の推測です。 ダブル選が決まった時、自民党は府知事選に俳優・タレントの辰巳琢郎氏に出馬を打診しました。 この判断が、致命的な失敗だったと思います。 大阪府民は、横山ノック府知事時代の放蕩行政を経験しているので、タレント候補には抵抗感があります。 都構想の是非以前に、維新以前の悪夢のような旧体制に戻ってしまうイメージもあります。 しかも辰巳氏は以前にも府知事選に出馬を打診され、その際に辞退したという経緯がありました。 何故そこまでタレント候補にこだわるのか? という不信感が、有権者の間に簡単に芽生えてしまいました。 結局、辰巳氏は今回も出馬を辞退。 その回答を出すのに3~4日程要したと思いますが、これが出遅れになったのは否めません。 自民党は即座に小西禎一氏を擁立しましたが、「二番手候補」というネガティブなイメージを最初から背負うことになってしまいました。 しかも突然の決定であったので、圧倒的な準備不足のまま選挙戦に臨まざるを得ませんでした。 そもそも小西氏は橋下府知事時代の副知事だったので、決して「二番手」という扱いに甘んじる候補ではありません。 党内では以前から小西府知事待望論というものもささやかれていた、という話もあります。 最初から小西氏で一本化し、選挙のための準備を行っていれば(ダブル選の可能性は2月頃から取り沙汰されていたので、準備期間は充分にあった)、自民党支持層の票をそのまま取り込み、無党派層にもアピールできた可能性があります。 では、具体的に準備不足とはどういう状態だったのか。 小西氏の演説は、「都構想反対」「維新政治を終わらせる」という主張に終始しており、では対案としてどのようなビジョンを持っているのか、全く伝わってきませんでした。 まるで国会で、与党に反対することだけを仕事としている野党議員のように見えてしまいました。 一応、都構想に対して自民党は総合区構想というものを提案していますが、そちらを強くアピールするわけでもなかったので、これでは小西府知事の大阪がどのようなものになるのか、見通すことができませんでした。 ちなみに、私は大阪府民ですが大阪市民ではないので、市長選については詳しくありません。 しかし、大差はなかったような気はします。 一方、維新の集票力の高さはどうだったのか。 松井一郎は「このままでは我々は負けてしまう。皆さんの力が必要です」「我々が負けると、昔の赤字だらけの大阪に戻ってしまう」と訴え、危機感や悲壮感を露わにしました。 この訴えに、維新支持層が結束力を高めたのか、投票に足を運んだ有権者が増えたと私は考えています。 また、選挙前に公明党を非難していた傲慢さは鳴りを潜め、「我々もダブル選という手段は理解を得られていないということは重々承知している。しかし、これは苦渋の決断だった」というメッセージを醸し出すような、謙虚な姿勢に終始しました。 当初より、ダブル選という「奇手」は関西のマスコミでも批判的に扱われていたのですが、その批判をかわすとともに、無党派層へのアピールにもつなげたのではないかと思います。 また、あまり報じられていませんが、児童虐待ゼロを目指す、という党の公約も、30代~40代の子育て世代にアピールしたのではないか、とも言われています。 では、これで大阪は都構想へ突っ走ってしまうのでしょうか。 出口調査で都構想の是非について聞いてみたところ、「賛成6割 反対4割」という結果になりました。 しかし、朝日放送解説委員の木原善隆氏は、これがそのまま住民投票の結果を反映しているわけではない、と言います。 理由は上述したとおり、維新支持層の投票率が高かったため、出口調査に応じた有権者の多くが維新支持層であったと考えられるからです。 そして、松井一郎と吉村洋文は、そこもきちんと踏まえた上で、当初は今秋にも住民投票を実現させる、と息巻いていたものを白紙に戻し、「スケジュールありきではない」「半数近くの有権者が投票をしていない」「都構想以外にも我々の政策に拒否感を示す有権者がおられる」と発言を後退させました。 こうした発言を引き出し、傲慢な態度を改めさせることが出来た、というのは今回の選挙の唯一の収穫です。 住民投票自体は「任期中に実現させる」としているので、有権者としては今後の府議や市議の議論を注視していくしかありません。 ともあれ、大阪府民が単純に都構想賛成に転じた、ということではなく、とにかく自民党が展開した選挙戦が拙すぎた、今となってもはっきりとした敗因を理解できていない様子、という大失態が全てであるというのが私の見解です。
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>>59
大阪ダブル選については、自民党大阪府連の戦略の拙さがこのような結果を招いた、と私は考えています。
出口調査の数字がそれを物語っています。
維新支持層はほぼ100%の有権者が、当然のように維新サイド(松井一郎・吉村洋文)に投票しています。
一方、自民党支持層は、そのうち30%が松井一郎に、50%が吉村洋文に投票しています。
本来ならば自民党が推薦した柳本顕、小西祥一に入るべき票が、維新サイドに流れてしまったのです。
また、支持政党別の投票率は、自民党支持層は前回同様20%程度であったのに対し、維新支持層は前回の20%から40%程度に倍増しています。
全体の投票率は50%程度で、前回よりやや増加しており、その増加分がほぼ維新支持層だったと考えられます。
こうした数字を見ると、維新が自身の支持層の票を伸ばしつつ、相手の支持層の票をも奪ったということが分かります。
(以上、ABC朝日放送で報じられていたデータに基づきます)
何故、このような結果になったのか。
ここから先は私の推測です。
ダブル選が決まった時、自民党は府知事選に俳優・タレントの辰巳琢郎氏に出馬を打診しました。
この判断が、致命的な失敗だったと思います。
大阪府民は、横山ノック府知事時代の放蕩行政を経験しているので、タレント候補には抵抗感があります。
都構想の是非以前に、維新以前の悪夢のような旧体制に戻ってしまうイメージもあります。
しかも辰巳氏は以前にも府知事選に出馬を打診され、その際に辞退したという経緯がありました。
何故そこまでタレント候補にこだわるのか? という不信感が、有権者の間に簡単に芽生えてしまいました。
結局、辰巳氏は今回も出馬を辞退。
その回答を出すのに3~4日程要したと思いますが、これが出遅れになったのは否めません。
自民党は即座に小西禎一氏を擁立しましたが、「二番手候補」というネガティブなイメージを最初から背負うことになってしまいました。
しかも突然の決定であったので、圧倒的な準備不足のまま選挙戦に臨まざるを得ませんでした。
そもそも小西氏は橋下府知事時代の副知事だったので、決して「二番手」という扱いに甘んじる候補ではありません。
党内では以前から小西府知事待望論というものもささやかれていた、という話もあります。
最初から小西氏で一本化し、選挙のための準備を行っていれば(ダブル選の可能性は2月頃から取り沙汰されていたので、準備期間は充分にあった)、自民党支持層の票をそのまま取り込み、無党派層にもアピールできた可能性があります。
では、具体的に準備不足とはどういう状態だったのか。
小西氏の演説は、「都構想反対」「維新政治を終わらせる」という主張に終始しており、では対案としてどのようなビジョンを持っているのか、全く伝わってきませんでした。
まるで国会で、与党に反対することだけを仕事としている野党議員のように見えてしまいました。
一応、都構想に対して自民党は総合区構想というものを提案していますが、そちらを強くアピールするわけでもなかったので、これでは小西府知事の大阪がどのようなものになるのか、見通すことができませんでした。
ちなみに、私は大阪府民ですが大阪市民ではないので、市長選については詳しくありません。
しかし、大差はなかったような気はします。
一方、維新の集票力の高さはどうだったのか。
松井一郎は「このままでは我々は負けてしまう。皆さんの力が必要です」「我々が負けると、昔の赤字だらけの大阪に戻ってしまう」と訴え、危機感や悲壮感を露わにしました。
この訴えに、維新支持層が結束力を高めたのか、投票に足を運んだ有権者が増えたと私は考えています。
また、選挙前に公明党を非難していた傲慢さは鳴りを潜め、「我々もダブル選という手段は理解を得られていないということは重々承知している。しかし、これは苦渋の決断だった」というメッセージを醸し出すような、謙虚な姿勢に終始しました。
当初より、ダブル選という「奇手」は関西のマスコミでも批判的に扱われていたのですが、その批判をかわすとともに、無党派層へのアピールにもつなげたのではないかと思います。
また、あまり報じられていませんが、児童虐待ゼロを目指す、という党の公約も、30代~40代の子育て世代にアピールしたのではないか、とも言われています。
では、これで大阪は都構想へ突っ走ってしまうのでしょうか。
出口調査で都構想の是非について聞いてみたところ、「賛成6割 反対4割」という結果になりました。
しかし、朝日放送解説委員の木原善隆氏は、これがそのまま住民投票の結果を反映しているわけではない、と言います。
理由は上述したとおり、維新支持層の投票率が高かったため、出口調査に応じた有権者の多くが維新支持層であったと考えられるからです。
そして、松井一郎と吉村洋文は、そこもきちんと踏まえた上で、当初は今秋にも住民投票を実現させる、と息巻いていたものを白紙に戻し、「スケジュールありきではない」「半数近くの有権者が投票をしていない」「都構想以外にも我々の政策に拒否感を示す有権者がおられる」と発言を後退させました。
こうした発言を引き出し、傲慢な態度を改めさせることが出来た、というのは今回の選挙の唯一の収穫です。
住民投票自体は「任期中に実現させる」としているので、有権者としては今後の府議や市議の議論を注視していくしかありません。
ともあれ、大阪府民が単純に都構想賛成に転じた、ということではなく、とにかく自民党が展開した選挙戦が拙すぎた、今となってもはっきりとした敗因を理解できていない様子、という大失態が全てであるというのが私の見解です。