今週も『ライジング』配信、ありがとうございます。 大阪府民ですが大阪万博反対だったので、溜飲が下がりました。 僭越ながら岡本太郎の「反万博」というスタンスは知っておりましたので、その事実がこうして広まるのは嬉しい気持ちです。 ところが、今回の大阪万博開催決定で、大阪府知事の松井一郎は完全に調子に乗ってしまい、酷い発言を連発しているので少しご紹介します。 ■「2025年を目処に、太陽の塔の世界遺産登録を目指す」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38286390Y8A121C1AC8Z00/ 松井一郎が「太陽の塔」の何たるかを全く知らない、ということが露呈されましたね。 「反万博」のシンボルとして制作された「太陽の塔」を、今回の大阪万博と関連付けるということがいかに愚行であることか。 ちなみに、当時の「太陽の塔」の内部には、岡本太郎の発案で世界各地からの民俗資料(仮面や彫像、生活用品など)が ガラスケースに入れられることなく生のままで展示されていました。 ガラスケースに入れると「力が死んでしまう」という岡本太郎の意向でした。 「太陽の塔」を世界遺産に登録するというのは、まさにガラスケースに入れるような行為ではないでしょうか? そもそも、制作されてまだ50年程度しか経過していない現代アートが、世界遺産登録の対象になりうるのでしょうか? 松井一郎は世界遺産というものの「価値」も理解していないのではないかと思います。 「太陽の塔」は、世界遺産でなくとも、存在そのものが素晴らしい作品です。 あと、上述した民俗資料は、その後万博記念公園内の「国立民族学博物館」で展示されていますが(これも生陳列です)、この施設を「経費の無駄」として廃止しようとしたのが、府知事時代の橋下徹でした。 2人揃って「文化への無理解」「拝金主義」を晒しています。 「太陽の塔」の由来を知り、橋下徹の方針を継承するならば、松井一郎は「太陽の塔」を破壊せねば一貫性がないのではないでしょうか。 ■会場建設費に「万博記念基金活用を」 https://www.sankei.com/west/news/181203/wst1812030032-n1.html 会場建設費が1250億円と試算されている中、1970年大阪万博で積み立てられた「万博記念基金」を活用する意向を示した、とのことです。 これは本来、1970年大阪万博の跡地である「万博記念公園」の管理維持費に用いられるもので、決して今回の大阪万博を想定していたものではありません。 開催決定前の誘致活動段階において、建設費をこの基金から捻出する可能性について松井一郎が言及したという事実は、私の知る限りではありません。 基金の総額が現在どれぐらいなのかは分かりませんが、恐らく「太陽の塔」や「国立民族学博物館」の管理維持にも用いられるものだと考えれば、安易に手を付けて欲しくない、という気持ちになります。 そもそも、費用を自分たちでまかなえると試算できていなかったのでしょうか? とにかく「開催決定」にこぎつけ、費用のことは後で考える、という態度でしょうか? ■地下鉄延伸工事費「IR事業者に負担を」 https://www.asahi.com/articles/ASKDQ5G9FKDQPTIL01W.html こちらは大阪市長の吉村洋文の発言です。 万博開催予定地となる夢洲に向けて、地下鉄が延伸されることになりますが、その工事費のうち200億円程度を、同じ夢洲に開業されるIRの事業者に負担を求めています。 つまり、カジノマネーをつぎ込まなければ、余裕がないということでしょうか? そもそも、会場までのインフラ整備において、事業者にこれだけ巨額の負担を求める、という話はあまり聞いたことがありません。 200億円ポンと出せる事業者となると、やはり外資ではないでしょうか。 金儲け目的で日本にカジノを進出させる外資のマネーが入っている、と想像すると、夢も希望も感じることが出来ません。 ■誘致費用36億円「2兆円の経済効果のための必要経費」 https://mainichi.jp/articles/20181120/k00/00m/040/182000c 開催決定前に、毎日新聞が報じた記事です。 大阪万博の誘致活動の費用が、実に36億円にも上っていたことが判明しました。 それに対して松井一郎は「2兆円の経済波及効果を実現するための必要経費だ」と言ってのけました。 36億円が「必要経費」! 庶民とはかけ離れた金銭感覚。非常識な言語感覚。 橋下徹も「大した金額ではない。東京五輪ではもっと使ってる」と言ったそうです。 この時点では、開催はまだ決定していなかったので、もし誘致に失敗したら36億円は全くの無駄金になるところでした。 それを「2兆円の経済波及効果」を盾にして、「必要経費」として理解を求めるという態度はどうなのでしょう? 2兆円という金額自体、来場者数が想定より下回れば実現しないものですし、それは当然ながら万博開催期間中、そして関西を中心にした地域限定の経済効果であるはずです。 東京五輪ほどではないかもしれませんが、万博が終了すればやはり経済は落ち込むことでしょう。 しかも、この36億円の内訳は、大阪府・市が4億円、国が26億円となっています。 大阪府以外の都道府県民は、この事実に納得できるでしょうか? 橋下徹は「大阪の負け癖をなおす」と言い、松井一郎は「「負の遺産」である夢洲を有効活用しなければならない」と言っていますが、それは大阪が自力で解決すべき問題であり、国の税金に頼るというのは全くのお門違いであると思います。 何故、自分たちの血税が、大阪の自己責任で生じた「負の遺産」を解消し、大阪の経済効果のために流用されなければならないのか? 怒り心頭の方も多いでしょう。 <最後に> 2018年の大阪は、北大阪地震、そして台風21号・24号と、相次ぐ自然災害に苛まれた一年でした。 万博やカジノに使う金があるのならば、それらは被災者の支援や防災対策に回すべきです(仮に万博関連の防災を重視するのならば、建設費はさらに増大するのでは?)。 特に台風21号によって、府内の銭湯300軒が壊滅的な被害を受け(建物だけではなく、煙突が軒並み倒壊したため)、休業や廃業が相次いでいます。 https://mainichi.jp/articles/20181031/k00/00e/040/193000c 詳述は避けますが、大阪における銭湯は戦前から続く立派な伝統文化です。 銭湯文化の危機に目を向けないのは、大阪府民としては許せません。 「大阪都構想」に執着し(本当に二重行政のムダがあるのか?)、百舌鳥古市古墳群の世界遺産登録にはそっぽを向く松井一郎をはじめとする「維新の会」は、伝統を破壊する拝金主義集団だと断じます。
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今週も『ライジング』配信、ありがとうございます。
大阪府民ですが大阪万博反対だったので、溜飲が下がりました。
僭越ながら岡本太郎の「反万博」というスタンスは知っておりましたので、その事実がこうして広まるのは嬉しい気持ちです。
ところが、今回の大阪万博開催決定で、大阪府知事の松井一郎は完全に調子に乗ってしまい、酷い発言を連発しているので少しご紹介します。
■「2025年を目処に、太陽の塔の世界遺産登録を目指す」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38286390Y8A121C1AC8Z00/
松井一郎が「太陽の塔」の何たるかを全く知らない、ということが露呈されましたね。
「反万博」のシンボルとして制作された「太陽の塔」を、今回の大阪万博と関連付けるということがいかに愚行であることか。
ちなみに、当時の「太陽の塔」の内部には、岡本太郎の発案で世界各地からの民俗資料(仮面や彫像、生活用品など)が
ガラスケースに入れられることなく生のままで展示されていました。
ガラスケースに入れると「力が死んでしまう」という岡本太郎の意向でした。
「太陽の塔」を世界遺産に登録するというのは、まさにガラスケースに入れるような行為ではないでしょうか?
そもそも、制作されてまだ50年程度しか経過していない現代アートが、世界遺産登録の対象になりうるのでしょうか?
松井一郎は世界遺産というものの「価値」も理解していないのではないかと思います。
「太陽の塔」は、世界遺産でなくとも、存在そのものが素晴らしい作品です。
あと、上述した民俗資料は、その後万博記念公園内の「国立民族学博物館」で展示されていますが(これも生陳列です)、この施設を「経費の無駄」として廃止しようとしたのが、府知事時代の橋下徹でした。
2人揃って「文化への無理解」「拝金主義」を晒しています。
「太陽の塔」の由来を知り、橋下徹の方針を継承するならば、松井一郎は「太陽の塔」を破壊せねば一貫性がないのではないでしょうか。
■会場建設費に「万博記念基金活用を」
https://www.sankei.com/west/news/181203/wst1812030032-n1.html
会場建設費が1250億円と試算されている中、1970年大阪万博で積み立てられた「万博記念基金」を活用する意向を示した、とのことです。
これは本来、1970年大阪万博の跡地である「万博記念公園」の管理維持費に用いられるもので、決して今回の大阪万博を想定していたものではありません。
開催決定前の誘致活動段階において、建設費をこの基金から捻出する可能性について松井一郎が言及したという事実は、私の知る限りではありません。
基金の総額が現在どれぐらいなのかは分かりませんが、恐らく「太陽の塔」や「国立民族学博物館」の管理維持にも用いられるものだと考えれば、安易に手を付けて欲しくない、という気持ちになります。
そもそも、費用を自分たちでまかなえると試算できていなかったのでしょうか?
とにかく「開催決定」にこぎつけ、費用のことは後で考える、という態度でしょうか?
■地下鉄延伸工事費「IR事業者に負担を」
https://www.asahi.com/articles/ASKDQ5G9FKDQPTIL01W.html
こちらは大阪市長の吉村洋文の発言です。
万博開催予定地となる夢洲に向けて、地下鉄が延伸されることになりますが、その工事費のうち200億円程度を、同じ夢洲に開業されるIRの事業者に負担を求めています。
つまり、カジノマネーをつぎ込まなければ、余裕がないということでしょうか?
そもそも、会場までのインフラ整備において、事業者にこれだけ巨額の負担を求める、という話はあまり聞いたことがありません。
200億円ポンと出せる事業者となると、やはり外資ではないでしょうか。
金儲け目的で日本にカジノを進出させる外資のマネーが入っている、と想像すると、夢も希望も感じることが出来ません。
■誘致費用36億円「2兆円の経済効果のための必要経費」
https://mainichi.jp/articles/20181120/k00/00m/040/182000c
開催決定前に、毎日新聞が報じた記事です。
大阪万博の誘致活動の費用が、実に36億円にも上っていたことが判明しました。
それに対して松井一郎は「2兆円の経済波及効果を実現するための必要経費だ」と言ってのけました。
36億円が「必要経費」!
庶民とはかけ離れた金銭感覚。非常識な言語感覚。
橋下徹も「大した金額ではない。東京五輪ではもっと使ってる」と言ったそうです。
この時点では、開催はまだ決定していなかったので、もし誘致に失敗したら36億円は全くの無駄金になるところでした。
それを「2兆円の経済波及効果」を盾にして、「必要経費」として理解を求めるという態度はどうなのでしょう?
2兆円という金額自体、来場者数が想定より下回れば実現しないものですし、それは当然ながら万博開催期間中、そして関西を中心にした地域限定の経済効果であるはずです。
東京五輪ほどではないかもしれませんが、万博が終了すればやはり経済は落ち込むことでしょう。
しかも、この36億円の内訳は、大阪府・市が4億円、国が26億円となっています。
大阪府以外の都道府県民は、この事実に納得できるでしょうか?
橋下徹は「大阪の負け癖をなおす」と言い、松井一郎は「「負の遺産」である夢洲を有効活用しなければならない」と言っていますが、それは大阪が自力で解決すべき問題であり、国の税金に頼るというのは全くのお門違いであると思います。
何故、自分たちの血税が、大阪の自己責任で生じた「負の遺産」を解消し、大阪の経済効果のために流用されなければならないのか? 怒り心頭の方も多いでしょう。
<最後に>
2018年の大阪は、北大阪地震、そして台風21号・24号と、相次ぐ自然災害に苛まれた一年でした。
万博やカジノに使う金があるのならば、それらは被災者の支援や防災対策に回すべきです(仮に万博関連の防災を重視するのならば、建設費はさらに増大するのでは?)。
特に台風21号によって、府内の銭湯300軒が壊滅的な被害を受け(建物だけではなく、煙突が軒並み倒壊したため)、休業や廃業が相次いでいます。
https://mainichi.jp/articles/20181031/k00/00e/040/193000c
詳述は避けますが、大阪における銭湯は戦前から続く立派な伝統文化です。
銭湯文化の危機に目を向けないのは、大阪府民としては許せません。
「大阪都構想」に執着し(本当に二重行政のムダがあるのか?)、百舌鳥古市古墳群の世界遺産登録にはそっぽを向く松井一郎をはじめとする「維新の会」は、伝統を破壊する拝金主義集団だと断じます。