しんや のコメント

配信ありがとうございます。
今回のゴー宣、『よしりん辻説法』で書かれていたことにも通じる点が多かったように思います。

作り手が覚悟や信念を込めて生み出した作品が高く評価されているのを見ていると、日本とは観る側のリテラシーが全く違うことを感じざるを得ません。

「批判されようとも作りたいものを作る」者が評価されるのがアメリカ映画、何を作りたいかよりも「批判されないものを作る」者が評価されるのが日本映画の現状なのでしょう。

最近の日本でヒットしたのが『永遠の0』とか『シン・ゴジラ』のような代物だと思うとゲンナリしてしまいます。
反骨精神や独立精神を感じるどころか、批判されない、誰にもイヤな思いをさせないものを作ることに精力を注いでいるようです。ゴジラや戦争のような政治的な、あるいは道徳的なメッセージを思い切り込められる題材を使っているくせに、権力者が安心して見ることができるような映画しか作れないのか、と思うと悲しくなります。

今回のライジングを読み、『辻説法』の「Gペンは剣よりも強し」で先生が書かれていた「美しい」と「キレイ」の違いは映画にも通じるとあらためて思いました。
マンガだけでなく、日本では映画も「キレイなだけもの」が幅をきかせているのでしょう。

絵面がキレイかどうかと、描き出された人間性が美しいかどうかは全く別ですね。

昨年見た『ハクソー・リッジ』は、血しぶきやモゲた手足や腐乱死体が次々に画面に登場する、ある意味グロい映像の連続でしたが、そこで示された主人公の勇気と、最初は彼を疎んじていた仲間が彼を真の勇者として認めていく姿は、見ていて「美しい」と感じさせられるものでした。
手塚治虫の『ブラック・ジャック』に「絵が死んでいる!」という回があり、水爆実験に巻き込まれて死を目前にした画家が、苦しみながら最後の作品を完成させる姿が描かれています。これまた、残酷な描写ながら「美しい」シーンでした。

残念ながら、今の日本映画・マンガでは売れないだろうと思わざるを得ません。

『辻説法』の「言わぬことは聞こえぬ」で書かれていましたが、他愛もないメッセージの「ロック」(こんなものロックといえないと思うが)ばかりだという点、音楽においても同様にキレイなだけのものが「抵抗なく受け入れられる」ことで増えているのでしょう。

強いメッセージを発する作品というのは、受け手に何らかの「痛み」を感じさせるものだと思います。

『天皇論』シリーズでは陛下に甘え過ぎていた国民として恥ずかしく思いますし、『卑怯者の島』では「こんな状況で自分は卑怯に堕さずにいられるか」と何度も問いを突き付けられます。『脱原発論』では自分がいかに無関心でいたかを思い知らされました。

今の日本人の多くは、この痛みに耐えられないのでしょう。
「キレイ」な作品が好まれる状況というのは、日本人の卑怯さ、当事者意識の欠如、保身主義を示しているのだと思います。


長くなりましたが、『よしりん辻説法』人気投票では、今回のライジングに通じる内容としてあらためて印象に残った以下の3編に投票いたします。

「かわいい子には映画を見せよ」
「Gペンは剣よりも強し」
「言わぬことは聞こえぬ」

No.108 81ヶ月前

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