『新・堕落論』を拝読しました。 1章で、「トカトントン」が聞こえたときの表情に強烈な印象を受けました。 おそらく原文を読んでも、この話のテーマは理解できなかったと思うので、こうして漫画にしていただけたのはとてもありがたかったです。 他の紹介された本も、タイトルを聞いたことはあっても読んだことの無いものばかりでしたが、とても興味をそそられました。分厚い本のようですが、いつか全文を(ただし日本語で)読んでみたいと思います。 「堕落」についても、古今東西のさまざまな形の堕落を取り上げられており、とても読み応えがありました。 「堕落」とは、単に気の緩んだ生活態度を指すのでなく、「真理の追究を放棄すること」「善き生への追及を放棄すること」であると感じました。 また、「堕ちきる」とは、自身の堕落に気づくことというように感じました。 残念ながら、現代の人達はまだまだ堕ちきってはおらず、今後も堕落し続けることになるのではないかと思います。 「楽しむことが何より大事」「価値観は人それぞれ」といった、堕落を野放しにする言葉が現代には溢れかえっています。これらの言葉自体は必ずしも間違いではないのでしょうが、堕落した態度を正当化する言い訳に使われてしまっているように思います。 安吾の『堕落論』で1つ疑問に思ったことは、戦時中の人々は考えることが無かった=思考停止していたのであれば、それもまた堕落なのではないか、ということです。 私の「堕落」に対する捉え方が間違っているのでしょうか。 あるいは、戦時中にあってはもはや一億枕を並べて斃れるしか道は無く、それにむけて忠実に実践していたから堕落ではない、という見方なのか。 戦時中の状況は、思索と実践のバランス感覚を養う上での良いモデルケースであると言えるかもしれません。 いずれにしろ、戦時中は考えていられないとするならば、決戦前夜こそ重要ということになります。現在もまた決戦前夜であると思います。そうした時代に遭遇した自分はどうすればよいのか。日頃から意識していきたいと思います。 本編とは別に、章間の挿入写真もまた印象的でした。 構図は表紙と同じですが、よしりん先生はおらず、代わりに机の上にタブレットが置かれている。 全体が暗いトーンの中で、タブレットのバックライトだけ不気味に白く光っている。 何とも言えない胸騒ぎに襲われます。 「わしもいずれはいなくなるぞ。 その後はこの堕落加速装置が残るんだ。 そんな時代の中で生きる覚悟を持っておけよ。 そのためにこの本を描いたんだからな。」 そう言われているような気がしました。
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小林よしのりチャンネル
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『新・堕落論』を拝読しました。
1章で、「トカトントン」が聞こえたときの表情に強烈な印象を受けました。
おそらく原文を読んでも、この話のテーマは理解できなかったと思うので、こうして漫画にしていただけたのはとてもありがたかったです。
他の紹介された本も、タイトルを聞いたことはあっても読んだことの無いものばかりでしたが、とても興味をそそられました。分厚い本のようですが、いつか全文を(ただし日本語で)読んでみたいと思います。
「堕落」についても、古今東西のさまざまな形の堕落を取り上げられており、とても読み応えがありました。
「堕落」とは、単に気の緩んだ生活態度を指すのでなく、「真理の追究を放棄すること」「善き生への追及を放棄すること」であると感じました。
また、「堕ちきる」とは、自身の堕落に気づくことというように感じました。
残念ながら、現代の人達はまだまだ堕ちきってはおらず、今後も堕落し続けることになるのではないかと思います。
「楽しむことが何より大事」「価値観は人それぞれ」といった、堕落を野放しにする言葉が現代には溢れかえっています。これらの言葉自体は必ずしも間違いではないのでしょうが、堕落した態度を正当化する言い訳に使われてしまっているように思います。
安吾の『堕落論』で1つ疑問に思ったことは、戦時中の人々は考えることが無かった=思考停止していたのであれば、それもまた堕落なのではないか、ということです。
私の「堕落」に対する捉え方が間違っているのでしょうか。
あるいは、戦時中にあってはもはや一億枕を並べて斃れるしか道は無く、それにむけて忠実に実践していたから堕落ではない、という見方なのか。
戦時中の状況は、思索と実践のバランス感覚を養う上での良いモデルケースであると言えるかもしれません。
いずれにしろ、戦時中は考えていられないとするならば、決戦前夜こそ重要ということになります。現在もまた決戦前夜であると思います。そうした時代に遭遇した自分はどうすればよいのか。日頃から意識していきたいと思います。
本編とは別に、章間の挿入写真もまた印象的でした。
構図は表紙と同じですが、よしりん先生はおらず、代わりに机の上にタブレットが置かれている。
全体が暗いトーンの中で、タブレットのバックライトだけ不気味に白く光っている。
何とも言えない胸騒ぎに襲われます。
「わしもいずれはいなくなるぞ。
その後はこの堕落加速装置が残るんだ。
そんな時代の中で生きる覚悟を持っておけよ。
そのためにこの本を描いたんだからな。」
そう言われているような気がしました。