切通さんの寄稿に疑問が湧いてきました。 >CD業界がネットの音楽配信でどうなったか、ゲーム業界がネット配信ゲームの参入でどうなったかを考えてみれば、おのずと答えは明らかなはずです。 とありますが、少なくともCD業界の没落がネットの音楽配信のせいというのは「明らかな」ことではないと思います。 ジャスラックなどはネットの違法コピーをやり玉にあげますが、僕がその説明に筋が通らないと感じているのが初音ミクの存在です。 初音ミクを始めとしたボーカロイドの音楽というものは基本的には聴くことは無料でコピーも自由であるがゆえに二次創作、三次創作が盛り上がり、現状の独自の文化を形成しています。 その作品のうちの99%は遊びの域を出ないかもしれませんが、1%の超人気作はビジネスにも発展しています。 例えば人気ボーカロイド曲を集めたコンピレーションCDがオリコン上位に入ることは珍しくありません。収録曲はネットで無料で聴ける音楽であるにも関わらずです。 僕も何枚か買ったことがありますが、それは木蘭さんが生放送で仰っていたように労働の対価として払っているのではありません「良いもの」だからお金を出して買っています。 これは内容がわからないまま買ってハズレだったときに「そのものを生みだす労働の対価は支払われるべき」と居直る姿勢より健全に見えるのですがどうでしょうか。 マンガの単行本もそういうスキームのはずです。 他にもネット発で成功しているビジネス(後述)をいくつか知っているだけに「ネットは情報がタダという感覚が蔓延」云々は言い訳に聞こえます。 「一部の成功例を拡大解釈しているだけ」と思われるかもしれません。しかし芸能や娯楽という分野は本来そういうものです。 さらに音楽の場合、伝統を守ると称して既得権益者たちが私的な利益のために「ダウンロード違法化」を推進するなどで、新しく生まれたネット文化を阻害している点も見逃せません。 これを踏まえると出版界が今までの仕組みを維持したいがために電子書籍のビジネスを妨害していたという面もあるのではありませんか? また作品単体に限らず、ニコニコ動画・ボーカロイド・初音ミクいう新しいシステムがあったからこそ見出された才能というものも多くあります。 まゆゆの「ヒカルものたち」編曲の八王子Pやアニメの主題歌を多く手掛けるsupercell等々。 その多様さを見ていると、おそらく中には旧来のシステムである"レコード会社にデモテープを送る"などの手段では日の目を見なかった方もいたと思います。 またシステム変更によって食えなくなった人がいるなら、それこそ小林さんの発言のように「もともと必要のなかった仕事」とも言えるのではないでしょうか。 自分で書いていても市場原理主義との線引きが難しいのですが、ともかくシステムが変わったとしてもそれを利用して名を上げる表現者が現実にいる以上、切通さんの論文はご自身の業界の崩壊を受け手側(読者、ユーザー、観客、日本人全般)に責任転嫁しているだけではないかという疑念が拭えません。 ちなみにゲーム業界のほうも、ゲーム機に依存した旧来のパッケージ販売ソフトは落ち目でも、全体としてはネット配信で没落したとはとても言えません。 モバゲーやグリーはもちろんネットのサービスですし、今驚異的な売上を叩き出している「パズドラ」もプレイは無料でゲーム内アイテムに課金するというタイプのものです。 ゲーム業界も生き残りをかけたビジネススキームの変革は起きています。 出版界だけがそこから逃れられる根拠が僕には見当たりませんでした。 最後に「60年間守られている伝統」という言葉ですが、ゴー宣読者としては60年と聞くと「戦後民主主義なんじゃ?」と思わざるを得ません。それは本当に伝統だろうかと考えてしまいます。
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切通さんの寄稿に疑問が湧いてきました。
>CD業界がネットの音楽配信でどうなったか、ゲーム業界がネット配信ゲームの参入でどうなったかを考えてみれば、おのずと答えは明らかなはずです。
とありますが、少なくともCD業界の没落がネットの音楽配信のせいというのは「明らかな」ことではないと思います。
ジャスラックなどはネットの違法コピーをやり玉にあげますが、僕がその説明に筋が通らないと感じているのが初音ミクの存在です。
初音ミクを始めとしたボーカロイドの音楽というものは基本的には聴くことは無料でコピーも自由であるがゆえに二次創作、三次創作が盛り上がり、現状の独自の文化を形成しています。
その作品のうちの99%は遊びの域を出ないかもしれませんが、1%の超人気作はビジネスにも発展しています。
例えば人気ボーカロイド曲を集めたコンピレーションCDがオリコン上位に入ることは珍しくありません。収録曲はネットで無料で聴ける音楽であるにも関わらずです。
僕も何枚か買ったことがありますが、それは木蘭さんが生放送で仰っていたように労働の対価として払っているのではありません「良いもの」だからお金を出して買っています。
これは内容がわからないまま買ってハズレだったときに「そのものを生みだす労働の対価は支払われるべき」と居直る姿勢より健全に見えるのですがどうでしょうか。
マンガの単行本もそういうスキームのはずです。
他にもネット発で成功しているビジネス(後述)をいくつか知っているだけに「ネットは情報がタダという感覚が蔓延」云々は言い訳に聞こえます。
「一部の成功例を拡大解釈しているだけ」と思われるかもしれません。しかし芸能や娯楽という分野は本来そういうものです。
さらに音楽の場合、伝統を守ると称して既得権益者たちが私的な利益のために「ダウンロード違法化」を推進するなどで、新しく生まれたネット文化を阻害している点も見逃せません。
これを踏まえると出版界が今までの仕組みを維持したいがために電子書籍のビジネスを妨害していたという面もあるのではありませんか?
また作品単体に限らず、ニコニコ動画・ボーカロイド・初音ミクいう新しいシステムがあったからこそ見出された才能というものも多くあります。
まゆゆの「ヒカルものたち」編曲の八王子Pやアニメの主題歌を多く手掛けるsupercell等々。
その多様さを見ていると、おそらく中には旧来のシステムである"レコード会社にデモテープを送る"などの手段では日の目を見なかった方もいたと思います。
またシステム変更によって食えなくなった人がいるなら、それこそ小林さんの発言のように「もともと必要のなかった仕事」とも言えるのではないでしょうか。
自分で書いていても市場原理主義との線引きが難しいのですが、ともかくシステムが変わったとしてもそれを利用して名を上げる表現者が現実にいる以上、切通さんの論文はご自身の業界の崩壊を受け手側(読者、ユーザー、観客、日本人全般)に責任転嫁しているだけではないかという疑念が拭えません。
ちなみにゲーム業界のほうも、ゲーム機に依存した旧来のパッケージ販売ソフトは落ち目でも、全体としてはネット配信で没落したとはとても言えません。
モバゲーやグリーはもちろんネットのサービスですし、今驚異的な売上を叩き出している「パズドラ」もプレイは無料でゲーム内アイテムに課金するというタイプのものです。
ゲーム業界も生き残りをかけたビジネススキームの変革は起きています。
出版界だけがそこから逃れられる根拠が僕には見当たりませんでした。
最後に「60年間守られている伝統」という言葉ですが、ゴー宣読者としては60年と聞くと「戦後民主主義なんじゃ?」と思わざるを得ません。それは本当に伝統だろうかと考えてしまいます。