よしりん師範、切通師範、時浦師範代、みなぼん編集長、スタッフの皆様、今回も渾身の作品群をありがとうございました。三寒四温の気候ですから、どうか皆様ご自愛くださいませ。

　切通師範のAmazon論文とゴー宣・アベノリスクは一つながりであるように感じます。規制を設けて既得権益に胡坐をかいている奴らを叩けと散々マスコミ・言論人が煽った結果、労働に敬意を表してその対価を支払うという文化にもとづく慣行・ルール感覚を失っていき、あらゆるモノやサービスで価格破壊が起こり、それにともなって供給主体が徐々に外資に取って代わられてきたのが日本におけるグローバリズム・市場原理主義の浸透の歴史だと考えられます。出版においてはソフト面では勝てないからルールや構造の方を変えてやろうとした外資の戦略のひとつがAmazonなのでしょう。出版再販制度などはTPPを推進する人々に言わせれば撤廃すべき規制であり、「非関税障壁」以外の何物でもないはずです。
　さて「応援消費」とは本当に良いと感じたものにしかお金を使いたくないということでしょう。そして、少子高齢化で需要が増えないから景気が上向くことはない、所得が増えないままインフレ懸念だけが高まる、さらにTPP参加により多くの職種で死屍累々の失業者が出る、そんな未来をうすうす予感しているから、必需品を除いては「応援消費」以外の無駄な消費は絶対したくないわけです。このような絶望の未来に向けて事態が進行する中で、言論界では小林よしのり、芸能界ではAKB48だけが「応援消費」され、あとは全て市場から消え去るような状況にならないと人々は目覚めないのではないのではないか、と最近私は若干ニヒリズムに陥っています。さらにTPPに参加すれば中間層から転落した多くの下層がさらに貧困化して「応援消費」さえできなくなり、ほんの一握りの富裕層の消費というごく僅かなパイを外資と競合して奪い合うことになるわけですが。
　「成長戦略より成熟戦略」は大賛成です。国内外の限られた市場に攻勢をかけ続けなければ生き残れない現在のグローバリズム適応経済のままでは、人々は常に10割以上の力を出し切ることを要求され、精神的・肉体的に無理が祟ってドロップアウトする人を徒に増やしていますが、国家の壁を高くして外資に市場アクセスさせずその中で仕事を分け合うという脱グローバリズム経済ならば皆が7割の力で働いていても心も懐も豊かに暮らせるようになると思われます。そんな社会の実現を目指すのが成熟戦略なのだと理解しました。勿論その中でも10割以上の力と情熱を注いで仕事する人もいてそういう人の仕事も正当に評価される社会です。
　農業では本当に良いものをつくって適正価格で売れば生計が成り立ち、林業では木材需要に合わせた適切な森林管理ができ、漁業でも適正価格取引になれば乱獲せず資源管理できるようになり、商人・職人・エンターテイナーも仕事が適正に評価され、良いものは応援消費されてそれが時々爆発的にヒットすることもあるような豊かで余裕のある社会、それは「鎖国」政策によってグローバル経済から距離を置いていた江戸期の伝統・国民性を受け継ぐ一つの理想社会だと思います。老若男女を問わず村落共同体の皆が一枚ずつお互いの田んぼで順番に作業していた江戸期のように、多くの職種において共同体の中でワークシェアリングしても貧しくならない社会を築くためには、グローバル経済からもう一度遠ざかるしかないと思います。「坂の下の土地を耕す」ことに代表される「成熟社会」が実現し、世界に先駆けて理想社会の姿を見せつければ、グローバル経済戦争に疲れた世界中の拝金教信者・グローバリストたちの目を覚ますこともできるかもしれず、その時こそ地球が真に「楽の教え」に染まる時だと夢想気味に考えてしまいます。問題はグローバル経済からの離脱を宣言できる胆力のある政治家が出てくるかどうかなのですが…。また勿論これは空想平和主義では成り立たず、食糧・エネルギーを含む安全保障を考え、さらに敵性国家の基地や原発をピンポイントで狙える兵器ぐらいは備えた上での話です。

　安倍は敵基地を叩く兵器は持たないと宣言…嗚呼　na85