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山田玲司のヤングサンデー 第71号 2016/2/15
西野の絶望とは?
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会ってみると、西野さんはとても腰が低くて、実に感じのいい人でした。
彼を見ていて思い出したのが、スティーブン・キング原作の映画「ミスト」のワンシーンだ。
キングコング西野亮廣氏と会ってきました。
西野氏は自称「いじめっこのガキ大将」だった人です。
まあ、この時点でかつての僕には許せないタイプの人です。
おまけに「人の価値は、スター(有名でお金持ち)であるかどうかで決まる」みたいにとれる発言の多い人です。
お馴染み「売れているかどうか?で、その人の価値が決まる」という価値観です。
これはまさに「テレビの世界の価値観」で、ある種の「宗教」です。
そんな彼は、聞いたこともない無名の漫画家の僕を見て、その「宗教観」のもと、見下してくるんだろうな、なんて、勝手に思っていたわけです。
僕は、売れるかどうかは「ゲーム」として考えているので、ここはもう「見下してくれていいですよ」と、面白がるのが正解なんだろうけど、何しろ彼は僕と僕の仲間が大事にしている「絵本(創作)の世界」に入ってきている芸人さんです。
誰が創作の世界に入ってきてもいいんですけど、その世界で命を削ってきた人間には、ナイーブな問題です。
僕の中には「売れることより大事なことがある」と、何度も打ち切り覚悟で創作をしてきた「自分」がいるのです。
なので、俺はディズニーになる、と言っている野望の男で、「売れないやつには価値がない」と思っている(であろう)人との対話はしんどいわけです。
ああもう自分がめんどくさい。
そんなわけで、先週の金曜にその番組で西野さんと、2時間にわたってお話したわけです。
ほぼ初対面での2時間。かなりハードですけど、これがニコ生です。
僕の苦しさは理解されない
会ってみると、西野さんはとても腰が低くて、実に感じのいい人でした。
とは言え、このまま上っ面の会話で終わらせてしまっては意味がない。ここはもう手加減しないのが礼儀です。
僕はやや強めに彼が語る「野望の真意」を聞いてみました。
「あなたの創作が、あなたの成功のためであるのなら、その作品は何を伝えようとしているのですか?」みたいな、やばい質問です。
なかなかのハードパンチですが、それくらいは大丈夫だと信頼しての質問です。
すると、彼は言いました。
「他の人にはわからないんですよ、僕らやオリラジが味わった苦しみは、気がついたらピークにいたけど、もうこの先はないんや、っていう絶望です」
早くに時代の波に乗り、メインステージで活躍したけれど、その先はなく、番組は打ち切られ、スターになれるはずだった自分は「ひな壇」で、その他大勢の芸人にされてしまう屈辱の話だ。
「それでもいいじゃないか」と言われて「それでいい」と思ってしまうと、さらにその先に未来はなくなってしまう気がする。
しかも、なかなか売れなくて苦労していた時期の長い芸人ならまだしも、頂点を知ってしまった身には、普通の仕事が「転落」に感じるという事だ。
これに関しては、共感してしまう。
僕もデビューが早くて、西野さんが頂点にいた25歳の時には、彼と同じように売れっ子の仲間に入れてもらっていて、同時にそこから「転落する不安」に怯えていたからだ。
「それがわからないんですよ、みんなバカだから」
と、西野氏は言っていたけど、この「みんなバカだ」発言をしてしまう気分もまたよく分かるのだ。
しかもあの見た目で「自分はかっこいい」とか言ったり、「僕はスターになりたいんです」なんて言い方をするから誤解されるんだけど、彼はずっと信じていた「自分」に失望したくないのだと思う。
昔は「自分はすごい人間になる」と思っていたのに、実際年をとってみたら「こんなのが俺なのか?」と、がっかりしたくはない、というわけだ。
そこで、危機を感じた彼は、闇雲に「自分にできること」を始めた、というわけだ。
ここで、何もしない人達を「バカあつかい」するから彼は嫌われるんだけど、この先は崖だとわかっているのに何もしないのは確かに「バカ」なのだ。
映画「ミスト」の若い店員
彼を見ていて思い出したのが、スティーブン・キング原作の映画「ミスト」のワンシーンだ。
主人公の中年男(イラストレーター)は、謎の霧に覆われた街で、スーパーの中に閉じ込められてしまう。
霧の中には何かがいて殺された人もいるらしい。そこに強烈な振動が襲い、スーパーの中はパニックになる。
調子の悪い発電機を見にスーパーの奥まで入った主人公は、そこで外からシャッターを猛烈な勢いで叩く何かの音を聞く。
「外は危険だ」と言う主人公に、「そんな音はしてない」と、他の人たちは外に出ていこうとする。
「よせ!外に出るなんてバカだ!」と言う主人公に、作業着風の服を着た中年男がこう言う。
「自分が少し有名なイラストレーターだからって、俺たちをバカにするな」
ここで「嫉妬」によって話の論点がそれてしまう。
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