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山田玲司のヤングサンデー 第217号 2018/12/17

「アイトーニャ」は2017年の「ボヘミアン・ラプソディ」だ

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今さらだけど、映画「アイトーニャ」を観た。

仕事しながらの流し見の一本だったんだけど、これが実にいい出来で、思わずちゃんと見てしまった。

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ジャンルで言えば「毒親からの解放モノ」だと思う。


実話ベースなので、そう簡単にいかない現実が描かれていて、そこから目を逸らさず、美談に寄せず、何が彼女に起こったのかを観客に見せようとしている。


「悪い女が大暴れする映画」という売り方をしているけど、観てみるとそんなに単純ではない。

誰の人生も複雑なのだ。



それにしても「毒親抑圧モノ」のコンテンツは多い。


「シャイン」しかり「ゲンスブールと女たち」しかり、古くは「巨人の星」なんかもそうだし、ディズニーの「塔の上のラプンツェル」なんかもその系譜だ。



自分の人生を満足に生きられなかった親が子供に呪いをかけるっていうのが、もはや「みんなの定番」みたいになってる。


同じような体験をしてきた人には「すっげえわかる、みんな私と同じか」みたいに思えるので、多少の救いにはなるかもしれない。多少ではあるけどね。


そういえば今回取り上げたムンクもその仲間だ。


この映画のいいところはいくつもあるんだけど、なんと言っても「困った人にはそうなった理由がある」ってのがわかるところだ。


コミニケーション論で語った「自分を困らせる人の自伝を想像してみる」という技を観せてくれてる映画なのだ。


トーニャの家族は最悪だ。

終始不機嫌で、くわえ煙草で自分の娘を罵倒し続ける母親。

家族を捨てて家を出る父。


「お前はどうせダメになる」みたいな、否定の言葉を浴びせられ続ける娘「トーニャ」は、家を出て行こうとする父親に「(あんなイカれた母親のいる家に)私を置いていかないで」と懇願する。


そんな10歳そこそこのトーニャを置いて去っていく父の車。


唯一の味方を失った彼女は、自分を否定し罵倒し暴力を振るう母と2人で暮らすしかないのだ。

ここまで観てるだけで、この先彼女がどんな人間になっても「それは仕方ないよ」という気持ちになる。


そんなトーニャは、好きになったフィギュアスケートだけに情熱を注ぎ、母に罵倒されつつトップを目指し、アメリカの女子で初めてトリプルアクセル(3回転半のジャンプ)を成功させる。



ところが彼女は成功はしても「幸せになる方法」は知らない。

そんな彼女が選ぶ男は問題を抱えている人間ばかり。

共依存の中で未熟な精神が暴走し、それが「とんでもない悲劇」に向かっていく。