お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。
今回は、誰しも経験したことがあるだろう「寝溜め」について。休日になるとつい普段より長く寝すぎてしまう高佐さんが、理想の睡眠環境を語ります。
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高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ
第19回 睡眠銀行
次の日が休みの時は、自然とお昼まで寝てしまうことがよくある。
9時間とか10時間とか平気で寝てしまう。僕の平均睡眠時間は7時間だ。
なので2時間から3時間、余分に寝てしまっている。寝ること自体はとても好きなのだが、9時間も10時間も寝てから起きた後は、いつも「しまった! こんなに寝てしまった!」と思ってしまう。寝ていた時間がもったいないという感覚だ。
「この3時間があれば、あんなことやこんなこと、あれもできたしこれもできたではないか!」と自己嫌悪に陥り、気分が落ちてしまう。まあでも失った時間ほど輝いて見えるだけで、結局は起きていたとしても大したことはしない。どうせボーッとテレビでも見て無為に時間が過ぎていくだけだ。
逆に、全然寝られない時もある。
次の日大事な仕事がある時などは、そのことについてあーでもないこーでもないと、色々と考えを巡らせたり、うまくいかなかったらどうしようと緊張して眠れない。いつの間にか小鳥のチュンチュンという声が聞こえてきて、窓の外が明るんでくる。そして寝不足のまま仕事に行く時間になる。
そんな時にいつも思う。ただ無駄に寝てしまった時の睡眠時間をここに持ってこれればなぁと。皆さんもこう思うことは一度や二度じゃないはずだ。
「寝溜め」という言葉がある。予想される睡眠不足にそなえ、ひまを見計って寝ておくことだ。
ただ、これは超短期的な範囲の中での有効な手だ。明日は徹夜で仕事をするハメになるから、今のうちにできるだけ寝ておこう、とか。
いつも思う。睡眠銀行というものがあればなぁと。そしてそれは24時間いつでも預眠できたり、引き出したりできるのだ。預眠額に応じて利子もつく。残高を見て、まだこんなにあるぞとニヤつくこともありそうだ。
逆に消費者眠融というのも出てくるだろう。後で返眠する代わりに、先に借眠することができる眠融機関だ。ただし借眠が重なって、他の消費者眠融にも手を出してしまい、あれよあれよという間に多重債務者になり、借眠の取り立てに追われ、首も回らなければ、目も瞑れない日々を過ごすことになるのは避けなければならない。
このシステムがあれば、たとえば、10時間寝てしまった時に、睡眠銀行に行き、窓口でもATMでもいいが、3時間だけ預眠する。すると3時間分の睡眠を削られることになるので、少しだけ眠くなったり、ちょびっとだけ疲労がのしかかってきたりするが、平均睡眠時間7時間の僕にしてみれば、別に大したことはない。むしろこれが普通だ。
これで4時間しか寝られなかった時に、預眠した分の3時間を引き落とすことが可能となる。
想像する。
今日は大事な仕事だ。でも眠い。ボーッとしてパフォーマンスが低下しそうだ。非常に眠すぎる。あれこれ考えすぎたせいだ。いや、それはウソで、本当は昨日徹夜でゲームしてしまったせいだ。でも大丈夫。わざと徹夜したのだ。
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