PLANETS Mail Magazine

男と歌|井上敏樹

2021/03/31 07:00 投稿

  • タグ:
  • 井上敏樹
  • 男と×××
02edd60c55eaada51c49f405cb6f4725455f8368
平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回は、「歌」にまつわる思い出について。
同窓会の席で、小学校時代の友人の死を聞かされた敏樹先生。彼の歌声は、どうして少年時代の敏樹先生の心に刺さったのでしょうか。
「平成仮面ライダー」シリーズなどで知られる脚本家・井上敏樹先生による、初のエッセイ集『男と遊び』、好評発売中です! PLANETS公式オンラインストアでご購入いただくと、著者・井上敏樹が特撮ドラマ脚本家としての半生を振り返る特別インタビュー冊子『男と男たち』が付属します。 (※特典冊子は数量限定のため、なくなり次第終了となります) 詳細・ご購入はこちらから。

脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第63回
男 と 歌     井上敏樹 

先日、小学校時代の友人から連絡があった。久しぶりに同窓会をやるので、是非出席してくれ、というのである。話は自然とかつての級友たちの噂になり、そこで私はAの死を知らされた。おそらく級友たちの中でAの死に最もショックを受けたのは私だったろう。特別親しかったわけではない。Aには私の知る限り友人と呼べるような相手はいなかった。一度先生のひとりが『でくのぼう』と呼んだが、今では問題になるであろうその言葉に納得しない者はいなかった。馬鹿だったのである。いつも鼻を垂らしてボ~ッとしていた。授業中に発言した事は一度もない。髪は多分母親が刈っていたのだろう、下手糞なざんぎり頭だった。服は時々色が変わったが、一年中同じような薄汚れたセーターで通していた。なにが面白いのか分からないが、時々ぶひぶひと鼻を鳴らして笑っていた。そんなAがいじめの対象にならなかったのは、ひとえに体が大きかったせいだ。小学4年生で百七十センチを越えていて、クラスで、いや、学年で一番大きかった。体格もがっしりとした筋肉質。だが、運動はまるでダメ。跳び箱も跳べなければ逆上がりも出来ない。Aはもっさりと、ただ大きいだけだった。
そんなAにもひとつだけ取り柄があった。歌が上手かったのである。もっとも、それを知っていたのは私だけだったが。


2b6c6b957cd0b6e822e7a8d59a6abe01468caadf
【4/8(木)まで】特別電子書籍+オンライン講義全3回つき先行販売中!
ドラマ評論家・成馬零一 最新刊『テレビドラマクロニクル 1990→2020』
バブルの夢に浮かれた1990年からコロナ禍に揺れる2020年まで、480ページの大ボリュームで贈る、現代テレビドラマ批評の決定版。[カバーモデル:のん]
詳細はこちらから。

 

ここから先は有料になります

チャンネルに入会して購読する

月額:¥880 (税込)

  • チャンネルに入会すると、チャンネル内の全ての記事が購読できます。
  • 入会者特典:月額会員のみが当月に発行された記事を先行して読めます

ニコニコポイントで購入する

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事

継続入会すると1ヶ月分が無料です。 条件を読む

PLANETSチャンネル

PLANETSチャンネル

月額
¥880  (税込)
このチャンネルの詳細