今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。【次回『遅いインターネット会議』のお知らせ】
本日は、カラス代表/エードット取締役副社長の牧野圭太さんをゲストにお迎えした「『広告がなくなる日』はいつ訪れるのか?」です。SNS上のターゲティング広告が常態化し、そして、問題化されつつある現在。かつて、時代を牽引したマスメディア型の広告の遺産から、現代の表現者たちはなにを継承すべきかを考えます。(放送日:2020年8月18日)
※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
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“0歳からの伝統ブランド aeru”をはじめ、独自のスタイルでの〈伝統のアップデート〉の取り組みが目指すものについて、じっくりと伺います。
生放送のご視聴はこちらから!
遅いインターネット会議 2020.8.18
「広告がなくなる日」はいつ訪れるのか?|牧野圭太
得能 こんばんは。本日ファシリテーターを務めます、得能絵理子です。
宇野 こんばんは。評論家の宇野常寛です。
得能 「遅いインターネット会議」。この企画では政治からサブカルチャーまで、そしてビジネスからアートまで、様々な分野のプロフェッショナルをお招きしてお届けしております。本日は有楽町にある三菱地所さんのコワーキングスペース、SAAIから放送しています。本来ですとトークイベントとしてこの場を皆さんと共有したかったんですけれども、当面の間は新型コロナ感染防止のため動画配信に形式を変更しております。
宇野 3月から始まったんだけど、1回もお客さんを入れてないんです。いつかお客さんが入ることを想定しているんですけどね。
得能 ちゃんとここに飛沫が飛ばないようにしっかりシールドもできているんですよね。
宇野 シールドも完璧です。
得能 それでは早速、本日のゲストの方をご紹介します。今日のゲストはカラス代表、エードット取締役副社長の牧野圭太さんです。よろしくお願いします!
牧野 牧野です、よろしくお願いします。
得能 牧野さんと宇野さんはどういったご関係になるんですか?
牧野 リアルに会うのは今日が初めてですね。
宇野 オンラインイベントで一緒になったことはありますよね。
牧野 朝7時からのイベントがあって、それでご一緒したんですよね。
得能 朝7時ですか、マッチョな感じで。早いですね。
牧野 僕、そんなに朝強くないんですが、宇野さんと初めてのご一緒するイベントだから、これだけは寝坊できないと思って、気合で早く起きました。
宇野 「5時こーじ」っていう、早起きに魂を捧げている男がいて、彼に誘われて朝のイベントに出たんです。牧野さんは結構僕の仕事をフォローしてくれていて、以前からよく言及してもらっていたんですよね。
牧野 そうですね。
宇野 この人は何やっているのかなと思って調べたら、「文鳥文庫」とかいろいろなお仕事が出てきて、面白いことをやっている人がいるなって、ずっと意識はしていたんですよ。それが最近になってご縁ができて、一度じっくりお話を聞いてみたいなと思って、今日はお呼びしました。
牧野 ありがとうございます。
得能 牧野さんから見た宇野さんはいかがでしょうか?
牧野 僕はずっとウォッチさせていただいて、めちゃくちゃ尊敬している方なので、今日こうやって隣にいることが不思議な感覚ですね。さすがに僕もそれなりの歳なので、普段は講演会で緊張するようなこともないんですけど、昨日の夜から久々に緊張しています。
宇野 まじですか。今日はリミッター解除で行きましょうね。
牧野 解除できるように頑張ります。
得能 楽しみです。
牧野 よろしくお願いします。
得能 よろしくお願いします。さて、本日のテーマは「広告がなくなる日は訪れるのか」です。SNSでのターゲティング広告が常態化されつつある現代、かつて時代を牽引したマスメディア型の遺産から、現代の表現は何を継承すべきなのか、というようなテーマになります。本日は牧野さんとじっくりと考えていきたいと思います。
宇野 インターネットが生まれてから、広告業界は激変すると言われていて、広告業界の人って、挨拶代わりに「広告ってそもそもどうなのか」ってことを絶対に言うんですが、そこに対して本当にちゃんと考えている人は少ないと思うんです。牧野さんはその数少ない中の一人だと思うので、今日は21世紀の時代を生きている僕ら人類と、広告的なものとの関係がどう変わっていくのかというところまで、お話できたらなと思っています。
牧野 めちゃくちゃ楽しみです。では、僕も1つだけ。今、お話にあった、ターゲティング広告って、システム的なところで語られたことはあっても、クリエイティブ側の人間が語ることがものすごく少ない。僕は博報堂でコピーライターをやっていたんですけど、やっぱり、広告の文化的な要素はクリエイティブの方が担っていることは間違いないと思うんです。けれど、そちら側から語っている人間がほとんどいないんです。
宇野 そうなんですよ。僕はそこが大事だと思っていて。形式が変わることによって、響く中身や、受け入れられる中身は変わっているはずなんですよ。革袋と酒の話を今日は一緒にしたいと思っています。
「広告がなくなる日」はいつ訪れるのか
得能 それでは、議論に入っていきたいと思います。今日は大きく分けて2部構成でお届けします。前半では「文鳥文庫」や「旬八青果店」など、既存の広告の枠に捉われないユニークな活動をされている牧野さんのこれまでの活動についてご紹介いただきたいと思っています。後半は、広告とSNSの関係など3つの観点から、広告のこれからについて、さらに議論を進めていきます。では早速、牧野さんの現在の活動に至るまでの経緯をご説明いただきたいと思います。
牧野 よろしくお願いします。ではスライドを出していただいて、「広告がなくなる日」というタイトルで話させていただければと思います。
この後にも入れているんですが、2年くらい前、今ほどnoteが普及してないタイミングだと思うんですけど、noteで「広告がなくなる日」というブログを書いたら思いのほか拡がって、次の日の朝起きたら、自分のスマホに「広告がなくなる日」っていうタイトルのプッシュ通知が飛んできていたんです。NewsPicksが拾ってくれて、「NewsPicksで人気です」って飛んできていて、そこで初めてnoteに書いたものがNewsPicksに行くんだって知ったんです。
宇野 それはNewsPicksの伝家の宝刀、言葉の最良の意味でのPV泥棒ですよ(笑)
牧野 けっこう話題になって、3000picksされたんです。当時は3000picksされる記事ってあんまりないよな、と思っていたんですが、すごくシェアされて。そんなつもりで書いてなかったんですけど、みんな関心のあるテーマなんだなと、その時に気づきました。ずっとこのテーマを言い続けたり、書き続けたりしている中で、今日こういった場に呼んでいただいているのかなと思っています。
今までの仕事としては、こんなことをやっています。
僕は、2009年に博報堂に入社してコピーライターという職種に就いたんですけど、もともとクリエイティブ志望ではなく、営業職志望で広告業界に入ったんです。ここが僕の特徴的な流れかなと思っています。広告ビジネスってどうなってるんだろうなとか、どちらかというとビジネス側に興味があったんです。その頃は何も考えていない学生だったので、なんとなくビジネス的なお金儲けの要素とアートや音楽といったものを紐づけられるようなところに興味を持って博報堂に入りました。最初は全体像を知れた方がいいかなと思って、営業職を志望していたんですが、なぜかクリエイティブ職で採用されたんです。偉そうな言い方になってしまうんですけど、やっぱりクリエイティブ志望が一番多くて、例えば100人中50人ぐらいが第一希望にクリエイティブ職を書くんですが、そのうち5人ぐらいしか行かない。なぜかそこにぶち込まれて、そこから広告クリエイティブやコピーライターの仕事を学んでいきました。すごくよかったのは、最初からコピーが好きとかではなかったので、業界を客観的に見れる存在になれたなと思っています。例えば、学生時代からコピーが好きだったような人って、その世界に入ったら染まりがちな気がするんです。でもそうではなかったから、入ったときからずっと、コピーの賞とかあるけどおかしいな、めちゃくちゃ内輪的な世界だな、と疑問視することができたなと思っています。
ここには今までの仕事を載せているんですけど、去年一番話題が作れたかなと思っているのは、左上の「かあちゃんの夏休みいつなんだろう」っていう、Oisixとクレヨンしんちゃんのコラボレーションの仕事です。後でまた出てくるんですけど、これはすごくSNSで話題になったりしました。他には、あんまり外で言っちゃいけないって言われているんですが、2年ほど前から、ローソンのおにぎり屋さんのリブランディングという形で、パッケージなどを手掛けていました。その中では「悪魔のおにぎり」のデザインなども弊社で担当をしていました。
得能 けっこうハイカロリーなイメージがありますよね。
牧野 カロリーの高い悪魔的なイメージなのに、めちゃくちゃ売れたんです。それで、博報堂を辞めて今やっていることは、大きく言うと、やっぱりマスに依存しない広告クリエイティブを追究することを、会社でも、自分自身でもやっていきたいなと思ってやっております。その中で「旬八青果店」といったブランドづくりとか、「文鳥文庫」っていう16ページ以内の文学だけを集めた1枚150円で買える文庫本などを作ったり、というようなことをやっています。今日、「文鳥文庫」を持ってこようと思っていたのに忘れてしまいました。
得能 緊張しすぎたのかもしれないですね。
牧野 すみません、緊張しすぎましたね。今度改めて持っていきます。すでに長くなってしまっているんですけど、ガシガシ行ければなと思います。では、次のスライドをお願いします。
「広告がなくなる日」っていう偉そうなタイトルを書きましたが、広告はなくなるのか、なくなるとしたら、それはどんな世界で、一体いつなくなるんだろうか、とか僕なりにずっと考えています。
それで、自分でいきなりオチみたいなことを言うんですけど、結論として、広告というものはなくならないと思っています。なくならないけれど形とか見た目がすごく変わって、いま広告だと思っているものが、徐々にというか一気になくなるかもしれない。例えば、マスで広告といったらテレビCMや新聞広告や雑誌広告が思い浮かぶと思うんですけど、大きな流れとして、そういったメディアに何かを載せるという概念ではなくなっていくんじゃないかと思っています。ただ広告という、企業や作り手が伝えたいことを伝える技術は未来永劫なくならない行為なので、概念としての広告というものは残っていくはずです。
ここは、今日こんな話をするのも馬鹿らしいなと思いつつ持ってきているところです(笑)。インターネットとSNSというインフラの確立によって仕組みが変わって、広告業界の構造や可能性が変わっていくだろう、ということです。実際に今までも変わってきたし、これからさらに変わっていくだろうなと思っていて、先ほど宇野さんもおっしゃっていたように、この数年でその潮目が変わってきたんじゃないかなというのが個人的なイメージです。では、ここで改めてこの名著を出したいと思います。次のページをお願いします。
宇野 ありがとうございます。僕もそう思ってます(笑)
牧野 (笑) この中からちょっとだけ引用してるところがあるんですけれど、大きくはここらへんに全部書かれていることなので、僕が今日わざわざ言うことではないのかなと思いつつ、この構造が広告にもすごく当てはまっているように感じています。
やっぱり昔はCMも一方的で、他人の物語だったと思うんですよ。タレントが出てきて、フィクションとして作られていたものだった。そこから、みんながSNSでダイレクトにつながって、フィクションではないリアルな情報を得るようになった。当然、そちらの方が楽しいから、僕、勝手にここに「自分(たち)」って入れさせてもらったんですけど、自分たちの物語を共有するようになってしまったのだと思います。
この「映像の世紀」から「ネットワークの世紀」へ、ということも本当にそのまま当てはまります。一方的にテレビCMの枠で映像を見せていた時代から、ネットワークの中で何をするか、何が起きるかっていう構造へ、頭の中を変えていかなきゃいけないんですが、意外と広告業界ってまだまだ追いついていないと思っています。
ここはそのまま引用させてもらっているところなんですけど、インターネット上において動画や画像で常にシェアされる構造を前提に広告は作られていくべきなんです。今はそこの技術と行動が追いついていない状態です。ただ、どんどんいろんなものが出てきているので、一気にシフトしていくんじゃないかと思います。
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