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香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。早くから新型コロナウイルスの脅威に直面した香港。感染を隠蔽しようとして拡大を招いた中国政府のみならず、日本政府が行った一連の対応についても、香港の人々の目には不合理なものに映っているようです。(翻訳:伯川星矢)

周庭 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第33回 新型コロナウイルスと政府の欺瞞

[編集部より]
周庭さんによる本稿の翻訳前の原稿は2020年3月1日の段階で提出されています。時々刻々と変化する現在進行形の事象を扱っている内容のため、判明している事実関係や著者の視点による見解は、あくまで当時の情報に基づくものであることをお断りいたします。

ここでみなさんとお会いするには久しぶりになります。みなさんは元気に過ごされていますでしょうか?

ここ数ヶ月、香港と日本はとても大きな変化を経験しました。特に新型コロナウイルス(香港では「武漢肺炎」と呼ばれています)は中国から香港・マカオ、それから日本・韓国・イタリアとさまざまな国に伝染し、それによって生活習慣、さらには各国の政府に対する見方を大きく変えました。

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▲香港衆志では街頭でマスクを配る活動をしました

「武漢肺炎はただのアンラッキーだ」と言う人が大勢いますが、私はこれを人災だと考えています。
去年の12月中旬、中国湖北省武漢市で初の感染者が出ましたが、中国政府と地方政府は真相の隠蔽を試みました。隠しきれなくなった後は、湖北省・武漢のみの数字を公開し、まるで中国国内の他の地域は、まったく影響を受けていないように見せかけました。
2020年1月に入ると、香港でも感染の疑いがある患者が現れましたが、香港政府はその数字を正直に公表しました(これは香港政府を讃えている訳ではありません。正直な公表は当然のことでしょう)。そのことで中国国内では武漢と香港にしか患者がいないように見えましたが、中国の大きさと人の往来の多さを考えると、他の地方政府が感染者数を隠蔽していることは誰の目にも明らかでした。
習近平が全国的な行政指示を出した後で、やっと他の地方政府が感染者数を公開し始めました。中国国内での隠蔽行為が横行しなければ、市民も他の国々もより早く警戒・対策ができたし、ここまで制御不可な局面にはならなかったでしょう。

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▲医療従事者のストライキを応援する街宣活動


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武漢肺炎が中国のみならず香港と日本で大流行したのは、人的要因が大半を占めているとわたしは思います。
香港人は2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)を経験していて、伝染病に関してはとても敏感です。中国で感染者が出始めた頃、多くの香港市民、学者、医者などがマスクをつけるように呼びかけました。そして、香港政府にも入境制限を設けるよう提案し、中国大陸からの観光客を止めようとしました。さらに、数万人の医療従事者がストライキという形で、即時の入境禁止を政府に要求しました。
しかし、多くの専門家や、政党、医療従事者の呼びかけに対して、香港政府は「入境禁止は中国人への差別」として、一切応じることはありませんでした。結局、大量の大陸人が観光客として香港へ避難し、感染源が不明な市中感染を発生させてしまいました。

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今回の新型コロナウイルスへの日本政府の対応にはとても失望しました。
少なくとも香港のネット上では、多くの人が日本政府の対応とその遅さに困惑していますし、具体的な対策案にも驚いたようです。日本は本来、効率性や社会秩序、医学技術などの分野でとても先進的な国だったはずです。しかし、今回のウイルス対策では、どうも中国側を忖度して、観光客の入国を禁止しなかったように見えます。
また、感染の疑いのある人々への対応も、とても軽率でした。例えば、厚生労働省の職員がダイヤモンド・プリンセス号から下船した後、自宅待機を命じずに通常出勤させたことは、日本政府の対応を本当に理解することができません。

もちろん、香港政府も滅茶苦茶なウイルス対策をしていて、その結果、政府の支持率は大幅に下がりました。しかし、香港人には2003年の経験があるので、政府に不信感を抱きながら、多くの香港人は自ら事前準備や予防を行ってきました。まさに「政府を頼るよりも自分を頼る」。
日本は近年、大きな伝染病を経験していないためか、政府や民間の反応は相対的にとても鈍く見えました。発症初期、多くの日本人が新型肺炎に対して警戒心が低く、この伝染病の威力を軽視していたように思えます。

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日本のみなさんはぜひ警戒心を持って、不要不急の外出は控えましょう。どうしても外出する場合はマスクをつけ、手洗いうがいを励行しましょう。
最後に、みなさんの健康を心より祈っています。

(了)

▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。

『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。
前回:第32回 なぜデモに暴力がともなうのか、その原因と意義

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