会社員としての自分自身の人生の充実のため、10年以上前から自発的に「働き方改革」の実践と普及活動を開始した「働き方改革アドバイザー」こと坂本崇博さん。今回は世に蔓延するお上任せの「コレジャナイ働き方改革」への違和感から、坂本さんがいかにして労働者個々人にとっての「私の働き方改革」を見出していったのかの思考プロセスの核心が語られます。
「私の働き方改革」とは
日本を挙げた「コレジャナイ働き方改革」がどんどん広がる様子を、私はただ傍観しているわけにはいきませんでした。「私の働き方改革」を掲げるものとして、このヘンなブームに正面からぶち当たることは必然でした。そしてぶち当たってみて、改めて「私の働き方改革」について考える機会が得られたことは、私にとっては良い機会であり、幸いでした。
私にとっての働き方改革とは、無理やり早く帰らされたり、制度が変わったり、オフィス環境が変わることではありません。ひょっとするとこれらは「働かせ方改革」と呼べるものかもしれません。
そう言えば2017年ごろ、「働き方改革より先に、働かせ方改革をすべきだ。」という論調もありました。しかしこの論調は私から言わせれば「何を今さら」なのです。
前述の通り、日本企業はこれまでは「働かせ方改革」一辺倒でした。OA、ICT、制度改革などなど、会社側は色々な環境改革を行い、従業員の仕事内容、仕事方法を変えてきました。その流れに浸かった多くの働き手は、「働き方というのは、自分で変えるものではなく、上が変えるべきもの。」という固定概念を抱くようになったのかもしれません。
以前は環境が変われば仕事が変わりました。もしくはそれら環境を使わないと仕事が進まないので、変わることは必然でした。
労働者は自らの働き方を自分で変えられるという意識は薄れ、次第にマニュアル化・標準化された仕事をこなすようになり、上司も、決められたプロセスで決まった仕事をすることを管理する「現状維持管理人」になっていきました。
しかし、今の時代、「自分たちで自分たちの働き方を変える」ことに着目することが必要だと感じています。
つまり、私にとっての働き方改革とは、1人1人が、「〇〇のため、自分の働き方をもっと良くしたい」というパッションのもと、自らが改革者となって自身や周囲「やる事・やり方・やる力」を変えていく(生産性を高めていく)活動です。
言うなれば「私の働き方改革」です。会社の働き方改革ではなくて。
これは「働き方改革は自己責任。文句言っていないで1人1人がんばれ!」という精神論的な話や、経営責任放棄の話ではありません。私はそうした「社畜的な考え」は大嫌いです。
「自分で自分の働き方を変える」というのは、部下への押し付けではありません。経営も管理職も従業員も、それぞれが自分自身でできる改革をして生産性を高める活動をするべきだし、自分自身でどうしようもないことについては、上の階層など然るべき部署・担当・経営層に働きかけるべきだと考えます。
つまり、「自分や組織がより充実することに時間を振り向けられるようになるために、各自が自分の職制に沿って自分や周囲へ働きかけ、生産性を高めていく活動」が働き方改革なのです。
【新刊】宇野常寛の新著『遅いインターネット』2月20日発売!インターネットは世の中の「速度」を決定的に上げた一方、その弊害がさまざまな場面で現出しています。
世界の分断、排外主義の台頭、そしてポピュリズムによる民主主義の暴走は、「速すぎるインターネット」がもたらすそれの典型例といえます。
インターネットによって本来辿り着くべきだった未来を取り戻すには今何が必要なのか、提言します。宇野常寛 遅いインターネット(NewsPicks Book) 幻冬舎 1760円
コメント
コメントを書く