編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は株式会社文鳥社代表で、「文鳥文庫」や「旬八青果店」など、事業開発とクリエイティブを掛け合わせる業態を目指す牧野圭太さんにお話を伺います。ブランドデザインや組織づくりの手法、旧態依然とした広告業界の構造などを幅広く辿りつつ、あえて中断する“肉体的思考”の可能性に迫っていきます。
パッケージではなく、プロジェクト、そしてブランドをデザインする
長谷川 牧野さんは早稲田の理工から博報堂でコピーライター、そして現在はデザイン会社の経営をされています。いい意味でキャリアに一貫性がないのが興味深いですよね。まずはじめに、現在の手がけられている仕事の全体像について伺えますか?
牧野 全体像がややこしいのですが、当初は博報堂を辞めて作った「文鳥社」だけでした。この会社では全て16ページ以内の作品からなる「文鳥文庫」という、蛇腹形式の文庫シリーズを展開しています。ただ、事業を継続するなかで、もともと継続してやりたいと思っていた「デザイン」や「ブランド作り」と「文鳥文庫の販売」は分けた方がいいのではと考えたんです。そこで、文鳥社は出版社に、デザイン・ブランディングをやる会社として「カラス」を立ち上げました。
このカラスはエードットという会社の100%子会社として作っているので、僕はエードットの役員として会社の経営もみながら、カラスと文鳥社それぞれの社長、つまり三足のわらじを履いている状態ですね。
長谷川 たとえば、カラスではどんな企業のブランディングを手掛けられているんですか?
牧野 ローソンさんのデザイン仕事などを行っています。「おにぎり屋」のパッケージなどは弊社で担当しています。こうした大企業の仕事に加えて、旬八青果店のブランドデザインも当初から手掛けているので、クライアントは大小さまざまです。
長谷川 デザイン系の会社は数多くあるなかで、カラスならではの強みや特徴はどの辺りにあるのでしょうか?
牧野 カラスは単に広告やパッケージを作ることのみならず、「BRAND STUDIO」を掲げています。プロジェクト全体をしっかりみながら、デザインをして世の中に出していく。先ほど例に挙げた旬八青果店なんかもゼロから始めて、これまで5年間継続して仕事をしてきました。店舗設計から、出店地選び、コンセプトやコミュニケーション設計まで、プロジェクト全体の作り込みをお手伝いしています。
プロジェクト全体をデザインできる会社は意外と少ないんです。本来のデザイナーの役割はそこにあると思うんですけどね。そして今後に関しては、プロジェクトというよりも「ブランド」を育てていくデザイン会社として標榜し、仕事に取り組んでいこうと考えています。
長谷川 アプローチや内実は違うかもしれませんが、近年経営コンサルティングの会社がデザイン系の買収を盛んに行なっています。やはりそういった潮流もマクロには連動しているのですか?
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