マル激!メールマガジン 2016年2月3日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第773回(2016年1月30日)
5金スペシャル 映画が描く人工知能と人間のこれからの関係
ゲスト:栗原聡氏(電気通信大学大学院教授)
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5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回は「人工知能」をテーマにした映画を取り上げながら、急速に進歩する人工知能(AI)がわれわれ人間の未来にどのような影響を与えるかを考えた。
今回取り上げた作品は、日本では今春公開される『オートマタ』、2014年公開の『トランセンデンス』、『her 世界でひとつの彼女』の3本。いずれも人工知能の進歩によって、人間の社会や日々の生活が大きく影響を受けている様子を描いている作品だ。
現在、人工知能の研究は第3のブームを迎えていると言われ、急速な進歩を見せている。今週も人工知能が囲碁のプロに初めて勝利したことが話題となった。チェスや将棋はすでに人工知能が人間を凌駕していたが、遥かに複雑な囲碁は人工知能では人間には勝てないとされてきたので、これでまた人工知能が一つ壁の超えた格好だ。
しかし、今回の人工知能ブームには過去のそれとは大きな違いがある。それは研究開発が、巨額の研究開発費と豊富な人材を抱える資本力を持ったグーグルやフェースブックなど米のIT企業がその担い手となっている点だ。今回プロの囲碁棋士に初めて勝利した人工知能も、グーグルが買収したベンチャー企業が開発したものだった。
電気通信大学大学院教授で人工知能の研究に携わる栗原聡氏は、今回の人工知能ブームのキーワードは「ビッグデータ」と「コンピュータのパワー」だという。人工知能に関する基本的な技術や理論は、第二のブームと言われた1990年代にほぼ出揃っていた。しかし、人工知能が知識を集積し、「ディープ・ラーニング」という手法を通じてよりスマートになっていくためには、ビッグデータへのアクセスが必要で、更にそれを支える強力な処理能力が不可欠となる。それを持っているのが、グーグルなどの米IT企業だというわけだ。
しかし、多くの映画に描かれているように、人類の未来に影響を及ぼす可能性の高い人工知能の技術が、一握りの私企業の手に握られることに問題はないのか。人工知能研究の世界は、倫理面での基準もまだ整備されているとは言い難い。
人工知能の進歩は人間の社会をどのように変えるのか。人間よりも優れたロボットの登場で、人間らしさの意味は変わるのか。人工知能をテーマに描かれた3作の他、『2001年宇宙の旅』、『Lucy』なども参照しつつ、ゲストの栗原聡氏とともに議論した。
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今週の論点
・囲碁で人間に勝利するに至った、AIの今
・『オートマタ』が描く、人間を超える知能の可能性
・コンピュータは「愛」を獲得できるのか
・AIを描いた作品を観る意味と、日本の課題
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■囲碁で人間に勝利するに至った、AIの今
神保: 今年は1月早々、5回目の金曜日が来まして無料放送の「5金」ということになります。今回は恒例の映画特集で、宮台さんが最近関心を持たれている人工知能がテーマです。
宮台: 僕は映画批評をやっているのですが、去年批評した作品の半分くらいは人工知能を扱った作品でした。実は今までもそうだったのだけれど、人工知能と人間や社会との関係をもっとも早く扱うのは、やはり映画作家たちです。それを通じて多くの人たちが「ああ、人工知能ってそういうものなのだ」というふうにイメージをして、それが後々の議論の土台となっていくということがありうる。ご存じのように、1960年末にはスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』が公開されました。
神保: あれは最後、怖かったです。
宮台: ええ。IBMをもじったHAL――文字を一つずつずらしている――が、人を裏切る。そういうモチーフを含んでいるので、ずいぶん話題になりました。
神保: 最初に一つお聞きしておきましょう。宮台さんが今、人工知能に関心を抱いている理由とは?
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