マル激!メールマガジン 2015年5月20日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第736回(2015年5月16日)
日本は何のために安保政策を変更するのか
ゲスト:青井未帆氏(学習院大学法科大学院教授)
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70年前、日本は不戦の誓いを立てた。だから、これからもアメリカに守ってもらわなければならない。しかし、アメリカに守ってもらえる国であり続けるためには、日本はアメリカと一緒に戦わなければならない。そんな論理矛盾を抱えた「安保法制」に関連した11の法案が安倍内閣によって5月14日、閣議決定された。
今回の安保法制の中身については、要するに自衛隊の活動範囲をこれまでの「周辺事態」から世界規模に拡大し、憲法上、自国が攻撃された時のみ許されると解されてきた武力行使を、日本と関係の深い国が攻撃を受けた場合にでも可能にするというものだ。
このことで日米同盟がより強固なものとなり、結果的に日本の抑止力は高まるという。また、自衛隊の活動範囲が世界規模に広がるため、日本の国際貢献の幅も広がり、日本は世界から感謝されるという。その通りになれば結構な話だが、いくつか重大な問題がある。
まず、これまで自国が攻撃された時のみ可能と解されてきた武力行使の幅が広がることで、事実上、自国が攻撃を受けていない戦争に参加することが可能となるという点だ。憲法の精神や理念を一旦横に置いたとしても、果たして今回の安保法制の制定によって、日本がより安全になり、世界がより平和になるという前提には根拠があるのだろうか。
一方で、日本の自衛隊が世界中でアメリカの戦争に協力することが法的に可能になった時、アメリカからの協力要請を日本は断ることができるのか。歴代政権は憲法を理由に断ることができたが、その縛りがなくなれば、日本はアメリカに対して政策判断として「今回はやめておきます」と言わなければならなくなる。しかし、それは考えにくい。
憲法を蔑ろにし、法の権威を地に貶めてまでどうしても実現したいという割には、今回の「安保法制」は実益の部分でもあまりに疑問が多いと言わねばならない。安倍首相自身はこれで日本の安全保障が強化されると心底信じているようにも見えるが、実際に今回の法整備を裏で主導する外務官僚や一部の防衛官僚も本当にそれを信じているのだろうか。それとも実はそこには別の動機付けが働いているのだろうか。
安倍首相自身の記者会見での発言とともに、阪田雅裕元内閣法制局長官、国際人道支援NGO「難民を助ける会」の長有紀枝理事長、安全保障や国際関係論が専門の植木千可子早稲田大学教授、元防衛官僚で官房長、防衛研究所長などを歴任した柳澤協二元内閣官房副長官補、憲法学者の小林節慶應義塾大学名誉教授、弁護士の伊藤真氏らのコメントを参照しつつ、ゲストの青井未帆学習院大学教授とともに、神保哲生と宮台真司が議論した。
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今週の論点
・合理性より欲望に動かされている安保法制
・「抑止効果」や「国際貢献」というメリットは、本当に存在するのか
・歯止めをかける光明は、地方公共団体にあり
・「常識」を忘れずに、国会の審議を見る
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青井未帆氏:日本は何のために安保政策を変更するのか
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