マル激!メールマガジン 2014年8月20日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第696回(2014年8月16日)
誰がために甲子園はある
ゲスト:中島大輔氏(スポーツライター)
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未曾有の記録を相次いで打ち破りメジャーリーグに渡った田中将大投手が、先月、肘の靱帯の部分断裂で戦列を離脱した。今週はダルビッシュ有投手までが肘痛で故障者リスト入りしており、ここ何年かでも、松坂大輔、和田毅、藤川球児といった日本を代表する大投手たちがメジャーリーグ入りしてほどなく、肘の故障で靱帯の移植手術を受けている。
一つだけ、彼らに共通することがある。それはいずれの投手も高校時代から尋常ではないほど肘を酷使し続けてきたということだ。現在、高校球児の祭典、夏の甲子園が真っ盛りだ。しかし、華やかな大会の陰で、大会の過密日程からくる投手への過重な負担が一部で懸念されている。「一部で」というのには理由がある。もはや甲子園があまりにも巨大なイベントとなっているため、スポーツジャーナリズムの世界でもそのあり方を大っぴらに批判することが難しくなっているからだと、スポーツライターの中島大輔氏は指摘する。
1日150球を超える球数を投げた上に、準決勝、決勝となると、2連投、3連投が当たり前という現在の甲子園のあり方は、選手の肉体への負担という意味もおいても、将来プロで活躍する可能性を持った有望な選手に高校生の段階で傷をつけてしまうという意味においても、大きな問題があると言わねばならない。
アメリカのメジャーリーグでは、投手に1試合あたり100球の制限を設けている球団がほとんどだ。日本でも小学生のリトルリーグや中学生のリーグでは1日に投げてよい球数の制限が一律に設けられるようになった。また、登板試合間の休みの日数や、1週間に投げてもよい球数なども細かく決められるようになっているという。
しかし、なぜか高校野球ではこれがなかなか進まない。甲子園があれだけ大きな国民的イベントになり、メディアが丸ごとそこに乗っかる形になった今、各校は勝つためにあらゆる努力を惜しまないのは当然だ。期待を一身に背負うなかで、そこに投球制限などが設けられて、次の試合でエースが使えないために敗退してしまうようなリスクは、誰も冒したくはない。また、常に甲子園をめぐる感動秘話を探しているメディアにとっては、腕が折れようとも投げ抜く高校球児の熱い心は、感動物語には不可欠な要素になっている。
しかし、これは詰まるところ、高野連や大会を協賛する新聞社、そして甲子園ネタで販売部数や視聴率をあげているメディアたちが、高校球児たちの野球にかける熱い心やその将来性を食い物にしている結果だとは言えないだろうか。
こうなると「夏の風物詩」と楽しんでばかりもいられない。いったい誰のための野球か、誰のための甲子園なのかを、ゲストの中島大輔氏と共に神保哲生と宮台真司が議論した。
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今週の論点
・メジャーで怪我に見舞われる日本人投手と、甲子園での酷使の関係
・「投げすぎる」選手を止めるのは、指導者の役割か
・感動物語をあおる、メディアの問題
・「甲子園を目指さない」芦屋学園の取り組みとは
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