マル激!メールマガジン 2014年5月28日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第684回(2014年05月24日)
これでは取り調べの可視化が進むわけがない
ゲスト:周防正行氏(映画監督)
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海外から「中世」とまで揶揄される日本の刑事司法制度の改革が、遅々として進みそうにない。検察の無理な捜査や人権を無視した長期の勾留が指摘された遠隔操作ウイルス事件は、被告の全面自供によって、事件そのものは全く新たな段階に入っている。しかし、今回のように警察や検察が白羽の矢を立てた被疑者が結果的に真犯人だったとしても、不当な刑事手続きが許されるわけではない。
この刑事制度を何とかしなければとの理由で組織された有識者会議『法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会』では、実質的な改革の議論が遅々として進んでいない。先月部会の事務局を務める法務省から出された「試案」によると、刑事事件全体の2%程度に過ぎない裁判員裁判事件のみを録音録画の対象とし、しかも検察官の判断でいつでも録画を中止できるなどという、常識外れの提案が真剣に議論されているという。その特別部会は、委員25人中17人が法曹・法務関係者からなり、いわば法曹ムラの住人が圧倒的多数を占めている。可視化や証拠開示によって実際に影響を受けることになる利害当事者自身が、新しいルールの決定に関与し、それを主導するという利益相反に陥っているのだ。
法曹界の部外者という圧倒的少数派の一人として特別部会の委員を務める映画監督の周防正行氏は、痴漢えん罪事件を描いた2007年の映画『それでもボクはやってない』で、日本の刑事司法制度の常軌を逸した後進性や閉鎖性を厳しくあぶり出している。その周防氏や同じく特別部会の委員を務める村木厚子氏ら5人が、取り調べの可視化などを求めて意見書を提出しているが、消極的な議論しか出てこないと周防氏は言う。
捜査当局が独占している関係証拠の全面開示に関しても、周防氏は「部会では『事前に被告人に証拠を全面開示すると、すべてに矛盾のない言い訳をするからダメだ』という信じがたい理由で却下された」という。周防氏は警察・検察がこれまでの捜査の方法を変えたくないがために、可視化や証拠開示に反対しているとの見方を示すが、逆の見方をすれば新しい捜査方法を取り入れようとしないために可視化が進まないということも言える。
民主主義制度のもとでは、刑事事件の捜査こそが統治権力における暴力的な権力が最も顕著に表れる場となる。そこで横暴を自在に許しているということは、われわれ日本人がいかに統治権力の暴走リスクに無頓着であるかの証左と言っても過言ではない。
これだけ問題が表面化していながら、なぜ日本の刑事制度改革は進まないのか。その結果、われわれの社会はどのような影響を受けているのかなどを、ゲストの周防正行氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・制限された「取り調べの可視化」
・「証拠の開示」に関する、法曹界からのデタラメな反論
・推定無罪の原則が、日本で共有されない理由
・遠隔操作事件の結末から、人質司法を正当化してはいけない
・映画『それでもボクはやってない』は何を描いたか
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