マル激!メールマガジン 2014年5月21日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第683回(2014年05月17日)
攻撃されなくても武力を使える国に日本を変えるのか
ゲスト:青井未帆氏(学習院大学法科大学院教授)
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安倍首相は5月15日の記者会見で、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更の検討に入る意思を表明した。これは首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の同日付の提言を受けたものだった。
首相のお友達集団を揶揄されるなど、首相に近く、もとより集団的自衛権行使に積極的な学者や元官僚らからなる安保法制懇は、従来、日本国憲法の枠内とされてきた自衛のための「必要最小限度」の実力行使の中に集団的自衛権の行使も含まれるという新たな解釈を示し、その行使も認めるべきなどと提言していた。
自国が攻撃を受けた場合にのみ武力行使を認める個別的自衛権に対して、集団的自衛権とは「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義される。これは日本が戦後一貫して守ってきた専守防衛の考え方とは根本的に異なる。日本における自衛権の発動には(1)我が国に対する急迫不正の侵害があること(2)これを排除するために他の適当な手段がないこと(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、という3要件が課せられてきた。
ところが今回、自衛のための「必要最小限度」に集団的自衛権の行使も含まれるという斬新な解釈が有識者から出され、首相がそれを受け入れる意思を発表。これにより武力行使の条件も変わり、事実上日本の武力行使には歯止めがなくなってしまったことになる。
学習院大学教授で憲法学者の青井未帆氏は、首相会見における解釈改憲の意思表明によって、日本には安全保障政策の枠を大きく超えた新たな危機的局面が生まれつつあるのではないかと警鐘を鳴らす。これまで日本の立憲主義を支えてきた、政府内部における内閣法制局の法解釈とその権威性が地に墜ち、法解釈の多元性や複数の解釈を認めようという動態的(ダイナミック)な法秩序が出現する兆候が感じられると青井氏はいう。その善し悪しは議論のあるところだが、そのような変化が避けられないのであれば、われわれは国会や裁判所の機能強化を含む、これまでとは異なる法秩序安定化のメカニズムを急いで構築する必要があるのではないかと青井氏は指摘する。
憲法解釈の変更に並々ならぬ強い意思表示をして見せる安倍首相の真意は誰にもわからない。しかし、その真意が何であろうが、その影響は安全保障分野にとどまらず、われわれの生活全般に及ぶ可能性がある。個別的自衛権か集団的自衛権かの矮小化された議論を超え、これから日本はどうするべきなのか、安倍首相の考える方向性で日本は本当にいいのかなどを、神保哲生と宮台真司がゲストの青井未帆氏とともに議論した。
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今週の論点
・安倍会見の「情緒性」
・安倍首相の“お友だち”懇談会
・「必要最小限度の集団的自衛権」とは何か
・なぜ今、あえて集団的自衛権なのか
・自衛隊法改正の動きに注意せよ
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青井未帆氏:攻撃されなくても武力を使える国に日本を変えるのか
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