佐藤彰一氏:現行の成年後見制度では認知症になった人の権利を守れない
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マル激!メールマガジン 2024年4月10日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1200回)
現行の成年後見制度では認知症になった人の権利を守れない
ゲスト:佐藤彰一氏(弁護士、全国権利擁護支援ネットワーク顧問)
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成年後見制度ができて四半世紀。数々の問題が指摘されてきたこの制度に、やっと見直しの動きが出てきた。
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などが理由で判断能力が低下した人の財産管理などを代理人が行う仕組みで、2000年にスタートした。成年後見人になるためには特別な資格は必要なく、家族のほか、弁護士や司法書士、社会福祉士などがなる場合が多い。また、その報酬は基本的には被後見人となる本人が負担する。
認知症によって判断能力が衰える人が増加し、後見制度の必要性が高まる一方で、現行の制度は課題が多く利用しにくいことが指摘されてきた。今年2月に法務大臣が見直しを法制審に諮問したのを受けて、今月から審議が始まる。
成年後見制度は、明治時代から続いてきた民法の禁治産制度を改正して2000年に始まった。禁治産は、判断能力がないとされた人に対して様々な行為を制限するもので、裁判所から禁治産者の宣告を受けると財産の管理能力がないとされ選挙権も与えられなかった。同年にスタートした介護保険が、サービスの利用を行政が措置する制度から、利用者が契約する制度と変わるのに合わせて、同様の考え方で現行の成年後見制度が作られたという経緯がある。
しかし、例えば遺産分割などで認知症の当事者に一度後見人をつけると、亡くなるまで利用をやめることができないほか、その後の介護サービスの利用などについても後見人の判断が求められるなど、非常に煩雑で使い勝手が悪い制度となっていた。
さらに、成年後見人には包括的な取消権、代理権が与えられ、被後見人の意思がまったく考慮されなくなる問題も指摘されていた。一昨年、国連は、障害者権利委員会の総括所見として「意思決定を代行する制度を廃止する」観点から民法の改正を日本政府に勧告している。
弁護士で2月まで全国権利擁護支援ネットワークの代表を務めていた佐藤彰一氏は、判断能力の有無を他者が決めることができないという理由から、判断能力がないことを前提とするのではなく、「能力存在推定」を前提に被後見人の意思決定を支援する制度を考えるべきだと主張する。
そのためには、被後見人の意思決定をどう支援するかが重要となる。しかし、本人の意思をどう引き出すかや、状況や環境によって変化する本人の意思をどう捉えるべきかは簡単な問題ではない。そのためには被後見人の生活歴や暮らしぶりなどがある程度わかっていることが重要で、地域や暮らしの視点が求められる。佐藤氏は司法書士や弁護士といった第三者の成年後見人にその役割まで求めるのは困難だと語る。
今回の見直しの議論のなかで、後見人が本人に代わって意思決定をする現行制度から被後見人の意思決定を支援するという形に180度転換することができるのか、法改正も必要だが生活支援や地域づくりこそが重要だと主張する佐藤彰一氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・成年後見制度の見直しへ
・国連が廃止を勧告する成年後見制度
・意思決定支援とは何か
・判断能力が低下しても本人の権利を守るために
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■ 成年後見制度の見直しへ
迫田: 今日は2024年4月5日です。認知症などにより判断能力がなくなった時に使われる成年後見制度というものがあるのですが、今月から見直しの議論が始まるということで、これについて話していきたいと思います。自分の意思決定をどのようにしたら良いのか、責任能力とはどういうものなのかという基本的な話にも関わります。
今日のゲストは弁護士で全国権利擁護支援ネットワーク顧問の佐藤彰一さんです。2000年までは禁治産という制度が民法で続いていたんですよね。それが2000年に介護保険がスタートしたと同時に成年後見制度になり、それから四半世紀も経っているのですが、状況は当時とあまり変わっていません。佐藤さんには以前マル激プラスにご出演いただいたのですが、あまり成年後見制度を使わない方が良いとおっしゃっていました。
なぜ使わない方が良いのかということが今回の見直しにも関わってくるのですが、一度後見人を付けてしまうと亡くなるまでそのままでなければならないんですよね。
佐藤: 基本的には死ぬまで続くという仕組みになっています。
迫田: 認知症だから遺産相続のためにたまたま後見人を付けたらその後はずっと後見人の判断で色々なことが決まります。したがって家族が親のお金を動かそうと思っても動かせないということが起こります。
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