マル激!メールマガジン 2023年12月13日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1183回)
機能不全に陥った日本の政治をどう立て直すか
ゲスト:石破茂氏(衆院議員)
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政治も経済も、そして社会も、日本のすべてが機能不全に陥っているように見える。ここまで政権の支持率が下がれば、普通は野党が国民の支持の新たな受け皿にならなければならないはずだ。しかし、その野党も四分五裂を繰り返し、直ちに政権をもぎ取れる体制ができているとは残念ながら言い難い。
そこでここは一つ、与党内野党の立場を貫いてきた石破茂氏に、現在の政治状況をどう見ているのか、今政治は何をしなければならないのかなどについて聞いてみた。
政治は物価高や少子化に対して一向に有効な手立てを打てないまま、不祥事の連鎖が止まらない。結果、経済は30年も停滞したまま、今や日本は先進国の地位から滑り落ちる寸前まで貧しくなってしまった。当然、政権の支持率は2012年の政権交代以来最低の20%台に低迷しているが、政権与党もマスメディアも既得権益の側にあるためか、現在の危機的な状況に抜本的な変革を求める声が社会から一向に上がってこない。
しかし、市民の間で常に次の首相候補に名前があがる石破茂氏は現在の日本の状況をどう考えているのか。
内閣支持率の低迷について石破氏は、これ自体は驚くべきことではないと言う。自民党は国会で過半数の議席を得ているが、衆参ともに選挙の投票率が50%程度のため、実際に自民党に投票している人は元々有権者全体の25%前後しかいないというのがその理由だ。
しかし、逆の見方をすれば、今の自民党は有権者の4分の1に過ぎない伝統的な自民党支持者からの支持しか得られなくなっていることになる。次の選挙でわずかでも投票率が上がれば、自民党は壊滅的な敗北を喫する可能性が現実味を増してきているということだ。
特に深刻なのは、日本経済が30年も低迷を続けているのに、岸田政権が有効な経済政策を打ち出せていないことだ。岸田政権の経済政策について石破氏は、「成長と分配の好循環」はそもそも今の構造のままでは無理だとの見方を示す。確かに人口ボーナスに後押しされていた高度経済成長期には、成長と分配の好循環は可能だった。しかし日本は人口減少期に突入しており、その状況は少なくとも向こう40年は変わらない。しかも、実際に今、モノを作っているのは海外だ。
日本経済を低迷から救うためには産業構造の改革が不可欠だと訴える石破氏は、これまで日本が円安と低金利で企業を甘やかしてきたことを問題視する。人口減少に太刀打ちするには個々の生産性を上げるしかないが、これまでは生産性が低いままでも企業は生き残れた。そのために魅力的な商品やサービスを提供できる企業が育たなくなってしまったと石破氏は言う。理論的にはその通りだが、仮に石破政権が実現した時に、どこまで企業に対して厳しい施策を打ち出せるかは現時点では未知数だ。
その一方で、日本のポテンシャルを伸ばす方法はたくさんあり、特に地方にそのカギがあると石破氏は言う。そもそも東京への一極集中は限界を超えており、災害のリスクなどを考えると、地方への富の分散は待ったなしというのが石破氏の考えだ。
現在永田町を震撼させているパーティ券問題と裏金疑惑について石破氏は、パーティそのものが悪いのではなく、それが適正に報告されなかったり、裏金になっているところが問題であることを指摘する。アメリカ法をモデルに戦後作られた日本の政治資金規正法は元来、政治資金の金額を制限することを目的としたものではなく、カネの出入りをガラス張りにすることで、利益相反や癒着の政治を防ぐことにあった。
その意味で今回、パーティ券収入が適正に報告されていなかったり、その一部が裏金として政治家にキックバックされていた問題は、政治資金規正法の精神の根幹に触れる重大な問題であることは間違いない。
しかし、その一方で、ここに来て記者クラブメディアが毎日のように囃し立てているパーティ券疑惑は、ほぼ全面的に東京地検特捜部によるリーク情報だ。特捜検察が政治の権力闘争に敏感であることは、今さら論を俟たない。今回のパーティ券疑惑が主に安倍派を標的としたものであり、特捜の捜査が官邸のお墨付きを得たものであると考えられる点には注意が必要だ。
自民党への国民の支持がどん底まで落ちた時、石破氏は政権を引き受ける覚悟はあるのか。その時日本を立て直すには何をしなければならないと考えているのかなどについて、自民党元幹事長の石破茂氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・急降下する日本-小選挙区制導入がもたらしたものとは
・今の自民党は産業構造改革を主導できるのか
・カネのための政治と政治のためのカネ
・石破茂はこの状況で日本を引き受ける覚悟があるか
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■ 急降下する日本-小選挙区制導入がもたらしたものとは
神保: 今日は2023年12月6日の水曜日、第1183回目のマル激です。今回の番組のポイントをあえて最初に言うとすればどこですか。
宮台: この番組で繰り返しやっているように日本は社会も経済も急降下しつつあり、また人口減少により、少ない現役世代が多数の高齢者を助けなければならなくなっています。したがって生産性が微増するくらいでは可処分所得や購買力はどんどん減ります。しかも既得権益が変えられないのでGAFAMのようなユニコーン企業が出てくる可能性が一切ありません。これが日本の未来だと話してきましたし、これが変わる兆しも今のところありません。
その状態でどう未来を考えるのかということですが、気休めのやってる感的な希望はどうでもよく、実際に数字を動かさなければなりません。しかし事実上は数字をしっかり見ていないので危機感がありません。ある経済指標では購買力が1970年代水準になっていることが分かっていますが、都市インフラやインターネットなどはあるので、購買力が減っているにもかかわらず貧乏を自覚しないで済んでいます。客観的な状況認識に至らず、正常性バイアスの中でまだ大丈夫だと思っているということが終わりを加速させています。
神保: そこまで論理的に理解していないかもしれませんが国民もだんだん分かってきていて、政府が弥縫策を出してももう見透かしているところがあります。しかし本来与党がそういった状態であれば野党が控えていなければならないのですが、残念ながら日本の場合は色々な経緯があり野党が今すぐに政権を担当できる状況にはありません。今回のゲストは私の理解として自民党の党内野党である、衆院議員の石破茂さんです。石破さん的には党内野党と呼ばれることをどうお考えですか。
石破: 何と言われようと構わないのですが、批判がない社会はだめだと思います。しかし批判をすれば後ろから何だのかんだの言われてしまい皆控えてしまうので、議論が起こりません。
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