古賀茂明氏:末期症状を呈する自民党政治を日本の終わりにしないために
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マル激!メールマガジン 2023年11月22日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1180回)
末期症状を呈する自民党政治を日本の終わりにしないために
ゲスト:古賀茂明氏(元経産官僚、政治経済アナリスト)
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岸田政権の相次ぐ不祥事は単なる一政権の問題なのか。それとも自民党政治そのものが限界を迎えているのか。
岸田政権の迷走が止まらない。それが顕著に現れたのが、政務三役の辞任ドミノだ。税金滞納で4度の差し押さえを受けていた神田憲次財務副大臣を筆頭に、女性問題が露呈した山田太郎文部科学政務官、違法な選挙運動を主導したとされる柿沢未途法務副大臣など政務三役が、相次いで辞任に追い込まれている。いずれも不祥事が表面化した挙げ句の、事実上の更迭だった。
さらに、今週になって三宅伸吾防衛政務官にも性加害の疑惑が取り沙汰されている。本人は否定しているが、「人事の岸田」を自任してきた岸田政権でここまで不祥事が続く異常事態は単なる政権の体質を越えて、何かとてつもない機能崩壊が統治機構内部で起きていると思わずにはいられない。
更に問題なのは、単に政権中枢の不祥事が続いているだけではなく、岸田政権が推し進める政策がどれも的外れなことだ。停滞の30年を経て、今や日本が先進国の座から転落しかかっているというのに、岸田政権が打ち出す諸政策ではその傾向に歯止めがかからないばかりか、むしろ日本の凋落に拍車がかかることが目に見えている。人事もダメ、政策もダメでは政権の支持率が上がろうはずもない。
それにしてもなぜ岸田政権は、日本が非常事態に瀕しているといっても過言ではないこの時期に、何ら有効な手立てを打つことができないのだろうか。これは岸田政権だけの問題なのか、自民党政治がダメなのか、はたまた現在の日本の統治機構自体が立ち行かなくなっているということなのか。
過去30年間の日本の凋落は、明らかに政府の失政によって引き起こされたものだった。経済成長ができず、国民所得も一向に上がらない中で、日本はもっぱら貧乏になり、国民生活は圧迫され続けてきた。元経産官僚の古賀茂明氏は、突然賃金を上げるなどと言い出している岸田政権について、それがどれだけの痛みを伴うことかを分かっていないと指摘する。
欧米諸国も多くが1960年代から20~30年間、停滞を経験してきた。当時はイギリス病、オランダ病などと言われたが、労働条件を改善するとそれに生産性が追いつかないために経済が停滞するというジレンマの中で、多くの国が何とか賃金を上げる方法を模索してきた。
しかし、1990年代からの30年間、日本が同じような努力をしなければならなかったはずの時期に、経団連と自民党はいかに人を安く働かせるかで知恵を絞り、労働法制を緩和することによって派遣労働や外国人技能実習制度を拡大してきた。それは大企業の利益を底上げし、税収増にも寄与してきたかもしれないが、社会は傷み人心は荒廃し続けてきた。
古賀氏が1980年に通産省に入省した頃、日本はジャパン・アズ・ナンバーワンと言われていた。しかし、その時の日本には、そこから先の日本をどのような国にしていきたいかについてのビジョンがなかった。そのため日本では、民主主義や資本主義を支える社会資本である労働運動や消費者運動、環境NGOやボランティアなど、他の先進国では普通に備わっているはずの社会的共通資本がことごとく育たず、政府と企業だけが力を持ち、肥え太っていった。
普通であれば豊かになった国は環境問題や人権、差別など社会の諸問題に取り組むようになるものだが、社会的共通資本を育て損ねた日本だけはそうならなかった。そこに日本が先進国になりきれなかった根本的な原因があるのではないかと古賀氏は語る。環境問題や消費者問題をおざなりにした結果、市民社会が真に助けを必要とする事態が生じたとき、日本には市民社会の側に立って戦う勢力が育たず、結果的に行政と一握りの大企業だけが我が世の春を享受し続ける歪な国になってしまった。
この状況を打破するためにはまず、国民が日本の衰退の現実を理解した上で、有効な手立てを講じる能力と気概を持った勢力に力を与えることが必要だ。日本ではマスメディアが既得権益の守護神の役割を果たしているため、現実を知ることは決して容易ではないが、まずはその壁を打ち破らなければ、仮に実効性のある政策を訴える政党や政治家が出てきても、そこに国民の支持が集まるようにはならない。しかしそれでは、有効な手立てを打つ気のない、あるいはその能力のない勢力が日本の操縦桿を握りつつける過去30年の失政が続くことになる。
今、日本では政治も行政も経済も司法も、そしてメディアも、国の統治を支えるあらゆる機能が機能不全に陥り、崩壊状態にあるのはなぜなのか。われわれはどこで道を誤ったのか。現在の閉塞状態から脱するためには何から手をつければいいのかなどについて、元経産官僚の古賀茂明氏と、政治ジャーナリストの角谷浩一、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・岸田政権の不祥事のオンパレード
・先進国になりきれなかった日本
・半導体の敗北を認めた経産省
・賃金を上げると突然言い出す岸田政権―それに伴う痛みを分かっていない
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■ 岸田政権の不祥事のオンパレード
角谷: 今日は2023年11月17日、1180回のマル激トーク・オン・ディマンドです。諸事情により神保さんが出られなくなったので、久しぶりに僕が宮台さんと番組をやっていきます。
宮台: 神保さんから言ってもいいと言われていますが、身内にご不幸があり、アメリカに行っているということです。
角谷: 今日のゲストは元経産官僚で政治経済アナリストの古賀茂明さんです。古賀さんの近著に『分断と凋落の日本』がありますが、このテーマについてはこれまでマル激でも色々な形で考察してきました。しかしなかなか世の中に理解されていないので、今日は徹底的に話していきたいということで古賀さんに来ていただきました。
今は岸田政権の不祥事オンパレードですが、辞任の理由自体が変になってしまったと思います。例えば文部科学政務官の山田太郎さんはみんなの党から来た人ですが、元々彼は自民党よりもIT問題やネット問題に精通している人で、子ども庁を作る時にもこの人のプランがかなり活用されました。ただ10月25日に20代女性との不倫を理由に辞任しました。
また、柿沢未途法務副大臣も公職選挙法違反事件への関与があり10月31日に辞任しました。いまだにこんな昭和のようなお金の配り方をしている国会議員がいたのかと思いました。
神田憲次財務副大臣にいたっては、税金滞納で資産差し押さえがあったことで11月13日に辞任になりました。
内閣に入る人間の行動として考えられないことですし、いまだにこんなレベルのことが起きているということをいちいち立ち止まって説明することも腹立たしいくらいです。
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