本間龍氏:電通問題の本質
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マル激!メールマガジン 2022年9月21日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1119回)
電通問題の本質
ゲスト:本間龍氏(著述家)
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かねてより批判が集まっていた電通に、とうとう司直のメスが入った。東京地検特捜部は7月26日、東京都港区汐留にある電通本社に家宅捜索に入ったのだ。
今回の捜査は、東京五輪・パラリンピック組織委員会の高橋治之元理事が、大会スポンサーから賄賂を受け取っていたとされる問題で、高橋氏が電通の元専務であり、また組織委との間でマーケティング専任代理店契約を結んでいた電通からは多くの社員が組織委に出向していたことなどから、スポンサー選定に関わる証拠集めの一環と見られる。
電通については、2015年に高橋まつりさんの自殺などの不祥事が相次いだほか、持続化給付金やマイナポイント、キャッシュレス還元などの補助金の中抜きで多大な利益をあげてきたことが、社会的な批判を受けてきた。今回、東京五輪のスポンサー選定で電通の高橋氏が特定の企業を優遇する見返りに賄賂を受け取っていたことが事実だとすれば、広告業界における圧倒的なシェアを武器にこれまで一手にメディアを支配してきた電通にとって、致命的な打撃となる可能性がある。
それにしても電通という企業は、なぜここまで強大になれたのだろうか。博報堂出身で広告業界に詳しい本間龍氏は、電通鬼十則に代表される猛烈な営業姿勢や、政官財に加え、スポーツ界や芸能界に張り巡らされたコネクション、そして何と言ってもメディアに対する支配力が電通の強さの源泉だと指摘する。しかしその一方で、その強さが、労働組合などの内部チェックやメディアなどによる外部チェックを困難にし、労務管理やコンプライアンスの欠如につながってきた。電通ほどの大企業がこうまで続けて不祥事を起こすのは、明らかに企業として最低限のチェック機能が働いていないためと考えざるを得ない。
また、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌のマスコミ4媒体の広告市場を支配することでトップ企業にのし上がった電通だが、テレビに代わってメディア界の盟主になりつつあるインターネット市場では、まったく主導権を握ることができていない。実際、現在の広告業界の序列は、1位と2位は依然として電博(電通と博報堂)が占めているが、3位にはネット広告専業のサイバーエージェントがのし上がってきており、電博を猛追している。既にネット全体の広告費はテレビのそれを上回っており、電通のメディア支配の終焉はもはや時間の問題との見方もある。
なぜ電通はメディアを支配した上に、五輪を始めとする巨大イベントのスポンサー選定を握るまでの力を持ったのか。その一方で、電通で不祥事が後を絶たないのはなぜか。かつては博報堂で電通に辛酸を舐めさせられ、電通の怖さも強さも身を以て知っている本間氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・メディアが語りたがらない電通問題
・鬼十則に見られる電通の体育会系気質
・一業種複数社を許す特殊な日本の広告業界
・ネットの広がりと電通のゆくえ
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■メディアが語りたがらない電通問題
神保: 今週は木曜日の収録です。エリザベス女王が亡くなられ、国葬が9月19日に行われますが、それについては宮台さん、何かありますか。
宮台: 岸田あるいは自民党与党にとっては、泣きっ面に蜂のような案件ですね。みんなに愛されて5 kmもの弔問するための行列ができ、これが国葬なんだ、という、国葬の理想型・理念型を示していただきました。いかに安倍の「国葬儀」がかっこ悪いかということが、国民や諸外国に如実に示されました。
神保: まだ招待状が来ないことがわかっていなかった段階で、岸田さんがエリザベス女王の国葬に行くのかどうかという話になったときに、松野官房長官が「エリザベス女王の『国葬儀』におかれましては」と言ったんです。もう、訳がわかりません。
その波及効果が面白いことになっていて、政府は「国葬」と「国葬儀」は違うという言葉遊びをしますよね。それは、内閣府設置法に「儀式」が入っているから、「儀」がつかないと困るということなのですが、あくまで「内閣府」の設置法なんですよ。「内閣」ではないんです。
内閣府と内閣の区別がついておらず、内閣府の設置法を根拠に、内閣が閣議決定で国葬の実施を決められるとしたということで、法律的には問題だと行政法の専門家などが言っています。
宮台: 内閣府設置法を根拠に内閣が国葬実施を決定することはできないでしょう。
神保: そうですよね。さて、前置きが長くなりましたが、本編に移りたいと思います。今日は、ここのところ色々な問題が噴出している電通について、一体何がどうなっているのかをきちんと検証してみたいと思います。
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