マル激!メールマガジン 2017年3月8日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第830回(2017年3月4日)
東日本大震災6年後もなお山積する課題
ゲスト:室崎益輝氏(神戸大学名誉教授)
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マル激では震災から6年目を迎える3月4日、11日に、2週続けて東日本大震災と福島第一原発事故をテーマに番組をお送りする。
1回目は日本災害復興学会の初代会長を務めた室崎益輝・神戸大学名誉教授に、復興の現状課題を聞いた。マル激では東日本大震災からの復興の成否が、今の日本の民主主義国家としての実力のバロメーターになると指摘してきた。 そして震災から6年。政府は復興は順調に進んでいると主張するが、実際は多くの課題が残されたままだ。
いまだに10万人近い被災者が、仮設住宅やみなし仮設住宅で暮らすことを余儀なくされている。大規模な堤防の建設や高台への移転などに遅れが生じているからだ。原発事故の影響で強制的に避難させられた人々の帰還も進んでいない。去年、避難指示が解除された市町村でも、帰還した人の割合は葛尾村で8.0%、南相馬市小高区が13.6%と、帰還が順調に進んでいるとは言い難い状況だ。
阪神大震災の被災者でもあり、防災の専門家でもある室崎氏は、復興を考える際に大事な視点として、4つの「生」を指摘する。「生命」、「生活」、「生業」、「生態」の4つである。その観点から見た時に、復興は順調と言えるのだろうか。震災直後、一刻も早い復興を目指そうと、しきりとスピード感が強調されたが、逆にそれが復興の足をひっぱったかもしれないと室崎氏は話す。4つの「生」を実現するためには、移転や工事などを拙速に進めるだけでなく、どんな町作りを目指すべきかを行政と住民がじっくりと議論し、考える時間が必要だったのではないかというのだ。
その土地で暮らし、生業を営み、自然の恩恵を受けながら暮らしてきた人たちが、元の生活に戻れた時、初めて復興は成就する。4つの「生」のどれかが欠けたままでは、真の復興とはならない。無論、最初から理想的状況はそう簡単には実現しないだろう。しかし、順調か失敗の二項対立ではなく、復興を息の長いプロセスと捉え、理想に近づけていくために今からでもできることは何かを考え、少しずつでも状況を改善していく姿勢が、真の復興には不可欠となる。
これは東北だけの問題ではない。日本全体の問題であり、日本の民主主義の質が問われる問題でもある。月日が経つにつれ、われわれは被災地の惨状を見て見ぬふりをして、切り捨てるつもりなのだろうか。震災から6年、復興の現状と課題について、室崎氏とともに社会学者・宮台真司とジャーナリスト迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・被災地の現状――復興はまったく終わっていない
・「高台移転、イエスorノー」で切り捨てられる、あるべき選択肢
・物語をつくるように復興する、ということ
・「復興は失敗だった」として、溜飲を下げている場合ではない
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■被災地の現状――復興はまったく終わっていない
迫田: 3月になり、11日で東日本大震災から6年。今回は6年を迎えてもなぜ復興が進まないのか、というテーマでお話を伺いたいと思います。2週連続の企画となり、来週は神保(哲生)さんの司会で、原発技術者の田辺文也さんに福島第一原発の現状を伺います。宮台さん、あれから6年ということですが、最初に何かありますか。
宮台: 僕の同僚に山下祐介さんという社会学者がいて、まだお若いのですが、現地に何度も足を運んでいます。いくつか重要な文書も書いており、それによれば震災復興はほぼ完全に失敗。その失敗は途中から完全に予見でき、つまり山下さんはとんでもない図式に変わりつつあるんだということを何度も警告しておられた。被災した方とも山下さんに引き合わせていただいて、いろんなディスカッションをやってきたという経緯があります。
震災の2年前に、レベッカ・ソルニットという有名な社会学者が『災害ユートピア』という本を出しました。わかりやすく言うと、平時はいいが、何か重大な事件が起こったときに、システムに依存していると一巻の終わりになる。しかし、何らかの理由で共同体的なプラットフォームを少しでも残していれば、災害時にユートピアが実現するということです。つまり、それまではシステムに依存して、簡単に言うと、人間なのかロボットなのかわからないような感じだったのが、自分たちで想像力や感情を働かせながら、人間関係をつくり、維持し、実際いろんなことをみんなの知恵を集約して解決していく。そうして本当に理想的な社会が生まれるが、しかし残念なことに、復興が進みシステムが回復すると、人々はまた分断され、システムに依存した状態に戻っていくと。
震災において、僕等はそうした問題設定に気付かされていたので、3.11の後はそういう方向に向かえばいいなと思っていたら、1ミリも向かわなかったということです。
迫田: そのあたりも含めて、議論していきたいと思います。ゲストはご自身も阪神淡路大震災の被災者であり、被災地に足を運んで復興の問題をさまざまな形で見てこられた、神戸大学名誉教授の室崎益輝さんです。まず、宮台さんがおっしゃったような問題を室崎先生も感じていらっしゃいますか。
室崎: そうですね。災害というものは、その時代、その社会の持っているひずみや弱点のようなものを顕在化します。阪神大震災においては、少子高齢化社会の中で、高齢者が寂しく孤立をしたままに置かれているという問題、従来の家族のシステムが小さくなり、みんな一人暮らしをするような社会構造になっているという問題、また仕事が都市に集中し、郊外に人が住むという職住分離の問題など、さまざまな矛盾が表に出ました。
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