マル激!メールマガジン 2016年6月8日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第791回(2016年6月4日)
ビジネスに乗っ取られた五輪が破壊するスポーツの醍醐味
ゲスト:今福龍太氏(東京外国語大学大学院教授・文化人類学者)
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東京オリンピックの招致に少なくとも2億円の裏金がコンサルティング料の名目で使われていたことが、英・ガーディアン紙のスクープで明らかになった。ところが、当時の招致委員会の理事長だった竹田恒和現JOC会長は国会で、「極めて一般的なこと」と、裏金に対する批判を一蹴した。招致に億単位の裏金が飛び交うのが当たり前という五輪というのは、一体どういう世界なのだろうか。
IOC(国際オリンピック委員会)では、過去にも大会の招致をめぐり過剰な接待や裏金による不正が行われてきたことが批判を受けてきた。何億、何十億という裏金を使い、場合によっては贈収賄など法律に触れる危険を犯してでも招致する価値があるほど、五輪は一部の人たちにとっては旨味のあるビジネスになっているようだ。
東京外国語大学大学院教授で、文化人類学者の今福龍太氏は、オリンピックが商業主義に乗っ取られる原因の一つとして、オリンピックという存在やその仕組みが、もはや21世紀の社会構造に合わなくなってきていると指摘する。
20世紀、国家の代表が国際舞台で競い、世界中に興奮をもたらすことで国威発揚にフルに利用されたオリンピックは、冷戦や大国間のイデオロギー対立が消滅した今日、過剰なまでの商業化によって、巨大な利権が動く一大ビジネスの舞台となっている。
しかし、過剰な商業化の最大の弊害は、それがスポーツ本来の身体的な神秘性や競技の持つカオティック(無秩序)な一面を排除する方向に向かっていることだろうと、今福氏は言う。商業化が進むと、超人的な要素はビジネスが最も忌避する偶発性に依存しているが故に、その醍醐味がスポーツから排除される方向にあると今福氏は言う。
試合時間はテレビの放映時間内に収まる必要があり、個々の超人的なプレーよりも国旗を背負ったナショナルチームの勝利が何よりも優先される。単なる勝敗よりも美技や超人的な肉体性が見たいダイ・ハードなファンは存在するが、大衆の動員が不可欠となるビッグビジネスでは、そのような少数派マニアの要求に応えている暇はない。
東京オリンピックの招致活動をめぐる一連の不祥事が、われわれに突きつけたスポーツの裏の顔について、広告代理店やメディアの影響などを参照しながら、ゲストの今福龍太氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・近代オリンピックが抱えるパラドクス
・「中立・平等・アマチュアリズム」の崩壊と、勝利至上主義
・合理化と監視システムの導入で、スポーツから失われるもの
・カオスを受け入れられない、人々の劣化
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■近代オリンピックが抱えるパラドクス
神保: 今回は東京五輪招致にかかわる裏金問題から、議論を展開したいと思います。単なる疑惑ではなく、実際にフランスでは検察による捜査が行われています。日本でも当時の招致委員会の理事長だった竹田恒和現JOC会長が国会に呼ばれて、お金のやり取りがあったこと自体は認めました。ただ、それは正当なコンサルタント料である、という趣旨の説明だったようです。
どうも、スポーツは完全にお金に乗っ取られているように見えます。なぜそうなったのか、それによりわれわれは何を失っているのか、ということを考えていきましょう。
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