マル激!メールマガジン 2016年6月1日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第790回(2016年5月28日)
「核なき世界」の実現を阻むもの
ゲスト:高原孝生氏(明治学院大学国際学部教授)
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なぜ「核なき世界」の実現が、そんなにも難しいのだろうか。
アメリカのオバマ大統領が、現職の大統領として初めて被爆地の広島を訪問して、改めて「核なき世界」の実現を訴えた。人類史上初めて核兵器を使用した国の指導者による被爆地の訪問は、歴史的な出来事として、世界に向けて大きく報じられた。
しかし、「核なき世界」への歩みは遅々として進んでいない。今回のオバマの広島訪問について、明治学院大学国際学部教授で軍縮問題に詳しいゲストの高原孝生氏は、世界で唯一核兵器を使用したアメリカの大統領が公式に訪問した意義を評価しつつも、プラハ演説以降、オバマ政権は核廃絶に向けてほとんど何もしていないと、厳しい見方を示す。
世界には依然として1万5000発以上の核弾頭が存在し、その9割以上をアメリカとロシアが保有している。プラハ演説以来、アメリカが核なき世界に向けた具体的な行動を取る機会はいくらでもあったが、医療保険改革やイラク戦争の後処理を抱えたオバマ政権では、核廃絶が必ずしも優先順位の高い政策とは位置づけられていなかったと高原氏は残念がる。
アメリカは圧倒的な通常兵器を保有するため、保有する核兵器を一方的に削減しても、安全保障上の問題が生じない唯一の国と言っても過言ではない。そのアメリカが率先して核兵器の削減を行わない限り、他国に対して核の削減を訴えることは難しい。実際、アメリカは包括的核実験禁止条約(CTBT)すら、いまだに批准していないなど、世界における核兵器廃絶のリーダーとは到底言えない状態だ。
世界では核兵器禁止条約の制定に向けた地道な努力も続いているが、既に120カ国以上が同条約に賛成の立場を表明しているものの、核保有国は議論にも参加してないために、条約発効の目途は立っていない。そうした中にあって、唯一の被爆国である日本は、世界の核廃絶運動を牽引していると思いたいところだが、残念ながらアメリカの核の傘に依存しているため、まったく指導的な役割は果たせていない。
なぜ核兵器の廃止は一向に進まないのか。核廃絶が進まないことで、世界にはどのようなリスクが生じているのか。アメリカの責任や日本の対応など、「核なき世界」の実現の前に立ちはだかる諸課題について、ゲストの高原孝生氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・オバマの広島訪問をどう評価するか
・世界を“オーバーキル”する量の核兵器が溢れている理由
・核兵器廃絶のプロセスと、その課題とは
・核廃絶に向けて、日本にできること/すべきことは多い
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■オバマの広島訪問をどう評価するか
神保: マル激は金曜日の夜に収録しており、今回は直前にオバマ米大統領の広島訪問の様子をテレビで観ました。議論に入る前に、宮台さんは今回の歴史的な訪問をどうご覧になりましたか。
宮台: いろいろな面から語れますが、オバマ大統領自身のコミットメントがなければ実現しなかった、ということが非常に重要です。彼は演説で「自分の生きている間には核兵器がなくならないかもしれないが、核廃絶に向けて行動することが大事なのだ」と訴えた。抽象的に言えば、現実は現実として、その一方で理想や価値を手放さないことが大事だと言うことです。また、「恐怖」と「勇気」という言葉で「感情なのか理性に基づく意思なのか」という二項図式を示してもいる。僕はやはり、こういうスピーチを日本の首脳、政治家から聞きたいと思いました。比較して、安倍さんのスピーチは非常にみすぼらしいものだった。その意味では、もともと日本が持っている外交的なリソースは何だったのか、ということを考えさせる力すら、オバマさんのスピーチにはありましたね。
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